第六十一の話 事件発生
急展開!長編第二部です。
〜アルス視点〜
「・・・・・・・・。」
【シュー・・・】
「アルス・・・大丈夫?」
「・・・魔王・・・。」
襖が開いて魔王が和室に入ってきた。
・・・いつの間にか日が暮れてたんだ・・・魔王が来るまで全然気が付かなかった。
「大丈夫?ずっと塞ぎ込んでるみたいだけど・・・。」
「・・・うん、大丈夫。心配しないで。」
ただ、今だけは一人になりたい・・・。
「そう・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・あのね、アルス。」
「・・・・・?」
「えっと・・・あのね・・・。」
「・・・何?」
若干イライラがこもった声で言った。
「・・・あのね、アルスってフィフィと仲直り・・・したいの?」
「・・・・・・・どうしてそんなこと聞くんですか?」
「え、いやその・・・ただね・・・
ただずっとケンカしたまんまだとお互い辛くないかな〜って・・・。」
・・・・・・・・・・・・。
「ご、ごめんね。余計なお節介だったよね。」
「・・・・・・。」
ちょっとだけ首を横に振った。
「・・・じゃあ、私リビングにいるから・・・。」
「・・・。」
【シュー・・・パタン】
・・・。
仲直り・・・。
『ちょっとアルス!それ私のおかず!』
『え!?先言ってよ。』
『言ってたでしょう!?あぁもうホントアルスってばいっつもポケ〜っとしてるから。』
『なっ!?そ、それは関係ないでしょう!?』
『大有りよ大有り!だからモンスターに背後取られても気付かないのよ!』
『おかずとモンスター一緒にしてどうすんの!?』
『似たようなもんでしょ!?』
『全っ然違う!!』
『あ〜も〜いいわよ!アルスのバカ!』
『こっちこそ!フィフィのバカ!』
・・・。
『・・・・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・フィフィ?』
『・・・何よ?』
『えっと・・・その、さっきはごめん。』
『・・・・・・・。』
『だからその・・・ちょっと言い過ぎた・・・。』
『・・・それ逆でしょ?』
『え?』
『私の方が言い過ぎたわ・・・アンタっていざって時にやる人だからね。』
『フィフィ・・・。』
『ま、ポケ〜っとしてるとこは否定しないけど。』
『・・・そこは否定して欲しかった。』
『事実でしょ♪』
『楽しそうに言わないでよ。』
『あはは・・・うん、ホントさっきはごめんね。』
『・・・うん。こっちこそごめん。』
『・・・。』
『・・・。』
『・・・えへへ♪』
『・・・ふふっ♪』
『じゃ、これでお互い仲直りっと。』
『・・・そうだね。』
『あ、そうだ。一つ提案があるんだけど。』
『?』
『これから先、ケンカしてもお互い絶対に許しあえるようにしよ。』
『え・・・それはまた急な・・・。』
『いいじゃん♪どっちかが謝ってきたりしてきたら許すってだけだから。』
『・・・大丈夫かなぁ?』
『大丈夫だって!私ら仲間でしょ?ずっとケンカしたまんまだとお互い辛いじゃない。』
『まぁ、そう・・・だよね・・・。』
『そ!だからさ、どんな事でもまずお互い謝罪、納得できなかったら話し合いしていこ!』
『・・・うん。』
『ほらぁ、もっと元気よく!』
『・・・うん!』
・・・。
『ずっとケンカしたまんまだとお互い辛くないかな〜って・・・。』
・・・。
「お互い絶対許しあえるようにしよう・・・仲間だから・・・か。」
〜クルル視点〜
「・・・。」
「どうだ?アルスの様子。」
【カチャカチャ】
「ダメ。さっきからずっと塞ぎ込んじゃってる。」
「やっぱな〜・・・。」
【カチャカチャ】
もうすぐ真っ暗になる時間・・・フィフィも帰ってこないし・・・。
「何でケンカしちゃったんだろ?」
「ん・・・まぁ大体察しはついてるんだがな。」
【カチャカチャ】
「?そうなの?」
「おう。理由は推して知れ。」
【カチャカチャ】
「え〜?」
「え〜じゃない。」
【カチャカチャ】
・・・・・・・・・・・・。
「・・・リュウくん、さっきから何してるの?」
「ん・・・ジグソーパズルみたいなもん。」
ぱ、パズルって・・・こんな時に。
「これと・・・これを・・・・・・・よっしゃ。」
「・・・・・・すんごい集中してるね。」
「まぁな。こういうの結構好きだし。」
・・・マイペースだなぁリュウくん。
「ま、とにかくアルスのことは今はそっとしておこうぜ。仲直りするにはちと時間がかかりそうだし、後は時間が何とかしてくれるさ。」
「うん・・・。」
まぁ・・・下手なこと言うと余計塞ぎ込む可能性もあるしね。
【ピシャン!】
「!?」
び、びっくりした!!
「おうアルス。どったぁ?」
うわ〜相変わらずリュウくん驚いた様子もなく普通に話してる〜・・・。
「・・・あの、リュウジさん。」
「ん?」
「ちょっと出かけたいんですけど・・・いいですか?」
!アルス・・・。
「ん〜・・・ま、とりあえず七時の晩飯までには帰ってこいや。」
「は、はい!」
「あ〜それと。」
「?」
すぐさまリビングから出ようとしたアルスをリュウくんが呼び止めた。
「ちゃ〜んと話つけてこいよ。」
「はい!」
【ガチャ!バタン!】
今度こそ、アルスは出て行った。
「・・・やれやれ、仲直りまで時間がかかると思ってたが、こりゃ想像以上に早く元どおりになりそうだな。」
「だね♪」
うん、何かこっちまで嬉しくなっちゃった♪
「さぁて、そんじゃ休憩がてらメシの支度すっか。」
さっきまでずっと作業していたパズル(?)をしまって、リュウくんはキッチンへと入ったいった。
〜アルス視点〜
「は、は、は、は、は・・・。」
辺りはもうすっかり暗くなったけど、今のボクには関係ない。
ただフィフィに謝りたい、仲直りしたい・・・これだけだった。
「えっと・・・こっち。」
次の十字路を右だね・・・妖精族はつねに独特の魔力を発しているから、魔法の熟練者ならこれを探知することができる。
スティルほどじゃないけど、これくらいならボクだって。
「はぁ、はぁ、次は・・・左。」
この道を真っ直ぐ行けば・・・
「は、はぁ、はぁ・・・んく。」
全力疾走したから息が荒くなったけど、まだ大丈夫。
「・・・ここは・・・。」
確か・・・前に来たことがある川原。
ここにフィフィが・・・・・・・・・・・・
【ゾワッ】
!?
「・・・・・。」
・・・今何だか変な違和感が・・・。
「・・・・・魔力が乱れてる?」
さっきまでずっと探知していた魔力が、変に歪んでいた。
おかしい・・・この魔力は、滅多なことじゃ変化するはずがないのに・・・。
「・・・。」
何だろう・・・胸騒ぎがする・・・。
・・・調べてみよう。
『時よ、我に見せよ!』
時空魔法の初級版・・・そこで起こった数時間前の過去の出来事を脳に映し出す魔法。
これで・・・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『・・・・・・・・・・。』
フィフィ・・・やっぱりここにいたんだ。
『・・・・・・・・・・。』
・・・何を考えてるのかな?
【ザッ・・・ザッ・・・】
?誰か来た・・・・・・・。
『・・・帰ろ。』
フィフィが葉っぱの上から立ち上がって・・・
いきなり誰かが袋をフィフィの真上に
・・・え?
『?』
【ズボッ!】
『!!??』
!フィフィ!?
『へへへ、珍しいもんゲ〜ッツ。』
『も、もが!もが!』
『お〜いどうした〜?』
『おぉ!見てくれよこれ。』
『あん?・・・おいおいおい、何だこれ。』
『どう見ても妖精じゃねえか。』
『だろ?』
『もが!もがもが!!』
『元気いいな〜。しっかしまさかリアルにファンタジー目撃しちまうとはな。』
『・・・なぁ、これ希少動物として高く売れるんじゃねえか?』
『お!それ俺も考えたんだよね〜。』
『そりゃこんだけ珍しいの、世界のどこにもいねぇぜ?マニアもビックリだ。』
『もがーー!!!』
『うわ!この、暴れるなってテメ!』
【ガッ!】
フィ・・・!!
『!?・・・・・・・・・。』
『ふぅ、やぁっと大人しくなったぜぇ。』
『おいおい、もっと丁寧に扱えよ。売るんだろ?』
『大丈夫だっての。これくらいで死ぬんじゃ単なる虫だろ?』
『じゃさっさとシマに帰ろうぜ。これからのこと、リーダーに報告しねぇとな。』
『そうだな。』
『へへへ、大金ガッポリだぜ。』
『違いねぇ。ギャッハッハッハッハ!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・・・・・。」
そんな・・・フィフィ!!!
「ど、どっちに・・・。」
・・・・・・・・・・・・・。
よかった、まだ魔力は探知できる!
「・・・追わなきゃ。」
じゃないとフィフィが・・・。
『ちゃ〜んと話つけてこいよ。』
・・・・・・・・・・・・。
リュウジさんに・・・助けを・・・
・・・・・・・・・・・・。
「・・・大丈夫・・・ボクだってやれる。」
いつだって・・・リュウジさんに頼ったりできない。
ボクは・・・勇者だから。大切な人を守らないとならないから。
「フィフィ・・・待ってて。」
今行く。
次回に続きます。