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第六十の話   存在意義

クルルに続いて第二弾!アルスが主題の長編です!


前々からあっためてました。とりあえずご覧ください。

〜アルス視点〜



「・・・・・・・・・・・。」

「・・・フィフィ・・・ごめん・・・。」


本当に・・・迂闊だった・・・。






〜ちょっと時間は二分前に遡る〜



【パキン】


「・・・・・・え?」


和室から出ようと襖を開けた途端、何かを踏んだ感触が・・・。


・・・しかも何か今割れたような・・・。


「・・・?」


足をどけてみたら、ホントに小さい木製の腕輪が粉々になっていた。


?小さな腕輪?


「・・・あ。」




もしかして、これってフィフィの・・・?




「アルス〜。」

「!?」


ま、まず・・・!


「?どしたのよ慌てて?」

「う、ううん?何も?」

「?ま、いいか。それより私の腕輪知らない?」

「う、腕輪?」

「うん。木製の奴。ここに落としたかも。」


・・・・・・・・・・・・・・・(汗)


「?アルスさっきからどうしたの?」

「え、えっと・・・・・・・・。」


どうしよう・・・。


「・・・アンタ、私に何か隠してない?」

「・・・。」


・・・フィフィって仲間の中では一番鋭いんだよな〜・・・


どうしよう・・・嘘つくのも嫌だし・・・


・・・・・・・・・・。



うん、もう正直に話そう。



「・・・フィ、フィフィ?」

「?」

「その・・・ゴメン。」

「?・・・・・!!!」


掌に乗せた腕輪の残骸を見せると、フィフィの表情は一変した・・・。





〜そして話は冒頭へ〜





「・・・・・・・・・・。」

「・・・フィフィ?」


正直に話したのはいいんだけど・・・腕輪の破片を見つめながら呆然としてるフィフィを見てたら、今まで以上に罪悪感が湧いてきた。


「・・・・・・・・・・カ。」

「?」


え?


「ア・・・のバ・・・。」


???








「アルスのバカぁあああ!!!!」

「!?」


えぇ!?


「え、フィフィ・・・。」

「バカ!バカ!こんなんなったらもう元に戻せなくなるじゃないのぉ!!」


泣きはらした顔で怒鳴り散らすフィフィに、ボクはただただ圧倒されるだけだった。


「え・・・そ、そんな大事な・・・。」

「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカああああああ!!アルスのバカああああああああ!!!」






むっ!






「・・・そんな言わなくたっていいでしょう!?第一床に置いておくのが悪いんじゃないですか!?」

「!!」


!・・・しまった、キツく言い過ぎた。


「う・・・く・・・!」

「フィ・・・。」

「アルスなんか・・・。」


・・・・・・?










「アルスなんか勇者やめちゃえええええええええ!!!!」






「・・・え。」

「うああああああああああああああ!!!!」


「ただいまっておっと。」

「やっほーってひゃ!?」


買い物から帰ってきたリュウジさんと魔王の脇を抜けて、フィフィはそのまま窓から外へと飛び去っていった。


「へ?今のフィフィ?」

「?おいフィフィの奴どうしたんだ?」

「・・・。」

「アルス?」

「・・・いえ、ちょっとケンカしただけですから。」


リュウジさんの言葉が、今のボクの耳には入ってこなかった。





ボクはただ、フィフィに言われた言葉に正直戸惑っていた。





“アルスなんか勇者やめちゃえ!!”





・・・。







『お前はいっつも役立たずだな・・・そんなだから村の連中にバカにされるのだ。』

『弱虫ー!弱虫アリスー!ギャハハハハ!』

『まったく相変わらず薄汚いガキだ・・・ほら、あっち行け。』

『こらそっちじゃないって何回言わせるんだい!?全く役立たずだねぇホント。』

『立たんか!そんなことではベビーウルフでさえ倒せんぞ!』

『お前なんかが戦士になんてなれるはずないだろ?調子に乗ってんじゃねえよ。』







・・・・・・・・・・・・・・・。








『勇者様、村をお救いください!』

『どうかあなた様の手で、魔王を討ち取ってください!』

『神の申し子であるあなた様さえいれば・・・。』

『ありがとうございました、勇者様!』








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「アルス、おいって。」

「・・・へ?」


いつの間にかリュウジさんがボクの顔を覗き込んでいた。


「何ボ〜っとしてんだ?」

「・・・な、何でもないです・・・何でも・・・。」

「?」





・・・。



ボクは・・・




昔は・・・子供の頃から、村の人達から役立たずとか、弱虫とか言われて軽蔑されてきて、父さんからは村の恥さらしと罵られた・・・


村に安住できる場所なんて無かった。


誰にも頼ることができなかった。




なのに・・・王都から使いの人達が来て、ボクが神の申し子であり、魔王を討ち取るべき存在の勇者だということを宣言されてから、村の人達からの扱いはガラリと変わった。


ボクのことを弱虫と呼んでいた子供達は、ボクに深く頭を下げて、


役立たずと罵った大人達からは、恭しく礼をされて、


父さんからは、自慢の子だと村中の人達に自慢していた。




ただ、唯一納得できなかったのはボク自身だった。


皆してボクを見ていない、見ているのは勇者であるボク・・・つねにそうだった。


現に、昼間は頭を下げていた子供達が、夜にはボクのことについて悪態をついていたのを耳にした。


結局、誰も認めてくれなかった。




だったら・・・


だったら皆が認めてくれるよう、努力するしかないと思った。


そうしなければ、ボク自身が変わらないと思ったから・・・。




魔王討伐の旅に出ると同時に、ボクは本名アリス・フィートから、男の名前を取ってアルス・フィートと呼ぶことになった。ついでに、一人称も“ボク”になった。


決意の表れのつもりで改名した。



ただ、昔から見た目は男の子だって言われてきたのがコンプレックスになっていて、少年と言われると思わず反論してしまう癖は直らなかった。



それから・・・スティル、リリアン、フィフィといった仲間達に出会って、魔王城までの道のりの途中で立ち寄った村や街で人々を悩ませている元凶、魔物を退治していって、気が付けばボクらの名前は世界中に知らしめた。


ボクは慢心は無かった。ただ人々のために役に立てるならと思った。





大切な仲間を守れる力さえあれば、それでいいと思った。





それでも・・・仲間達以外の人達は、やっぱりボク自身のことを見てくれなかった。





だから、もうボクは半分自暴自棄となっていた。


結局、勇者という立場がボクにとっての唯一の誇りになっていた。


ただ、この誇りさえあれば・・・守れる力さえあれば、何でもよかった。





けれど・・・。







「リュウくん、フィフィどうしちゃったんだろうね〜?」

「さぁな。ま、そのうち帰ってくっだろ。」

「・・・だといいけど・・・。」







今、魔王は目の前にいる。


その魔王と、ボクは一緒に暮らしている。


勇者の存在意義は、ただ魔王を倒し、世界に平和をもたらすこと。ただそれだけ。




・・・なら今のボクはどうすればいいの?魔王は残虐で、人に苦痛を与えることしか考えていないと教えられてきたのに、本物の魔王は無邪気で、人の為に尽くそうと努力している、ボクと同い年ぐらいの女の子で・・・。


殺せるはずがない・・・それに例え殺したとしても、それで勇者の役目は終わり、後はお払い箱。結局ボクは元の役立たずのまま人生を終えることになる。


フィフィの言う通りに勇者をやめてしまったら・・・ボクは、












誰にも必要とされないまま生きていくことになるの・・・?










〜フィフィ視点〜



「・・・・・・・・・。」


気が付いたら、いつの間にか近くの川原まで来ていた。鬱蒼と葉っぱが生い茂っていて、その中で一番背が高い葉っぱの上に私は座っている。


ここまで来てずっと泣いてて、その後ボ〜っとしてたから辺りは薄暗くなってきていた。


「・・・・・・・・・。」



“アルスなんか勇者やめちゃえ!!”



・・・自分でも何であんなこと言っちゃったんだろーなーって後悔し始めた。


でも・・・・・。











『フィアラ、これやるよ。』

『わぁ・・・可愛い!』

『へへっ、作るの結構苦労したんだぜ?大切にしろよ?』

『うん!ありがとう、兄さん!』











・・・・・・・・・・・・・・。


「・・・壊れた物は、元には戻らないしね・・・。」


・・・そう考えたら・・・でも、アルスだって悪気があってやったわけじゃないし・・・。


「・・・・・・・・・。」


ホント、咄嗟のこととは言ってもひどいこと言っちゃったなぁ・・・私。


アルスにとって、あの言葉がどれだけ傷つくか・・・今になって考えてみれば・・・。


「・・・・・・・・・・。」




・・・よし。




「・・・帰ろ。」




そんでアルスに謝ろう・・・“ひどいこと言ってごめん”って。


やっぱり、アルスと私って仲間だし・・・パートナーだし。


いつまでも引きずってちゃダメだしね。











【スッ】

「?」


あれ?何かいきなり暗く・・・


【ズボッ!】


「!!??」


それでは続きます。

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