第五十の話 〜おまけ〜 過去のバレンタイン
今回は龍二達が高校二年生の頃のお話。主題はバレンタインです。
・・・ってバレンタインすでに終わってるんですけどね。
まぁ五十話までいった記念及びバレンタインを主題としたものも書きたいな〜って思ってたとこですし。
それではどうぞ。
〜去年、龍二達が二年生の頃〜
〜龍二視点〜
「メシ〜メシ〜。」
やっと昼飯食えるぜ。
「雅、一緒にメシ食おうや。」
「おう。」
俺らは学食でラーメン食うことのほうが多いが、今回は弁当だ。たまには教室でっていうのもいい。
「おぅお前ら〜。」
「?何だ恭田。」
そういやこいつ忘れてた。
「今俺のこと忘れてたって思っただろ!?」
「よくお分かりで。」
「ひでぇ!!」
ひどいも何も忘れてたんだからしゃあねえだろ。
「それより!今日が何の日か知ってるか!?」
「いや知らん。」
「あ〜・・・あ、そうか。」
雅にはわかったか。俺にはわからん。
「そう!今日はバレンタインデー!!女子が男子に思いのこもったチョコレートをプレゼンツする聖なる日だ!!」
「・・・バレンタインデー?」
「お前いっつも忘れてるだろ。」
意味すら知らん。
「おいおい、普通バレンタインを忘れる奴がいるか?」
「ここに。」
「自分を指差すな。」
だぁって知らんもんは知らん。
「・・・お前は一般常識を覚えようとする気力があるのか無いのか。」
「無い。」
「即答すな。」
「で?そのバレンタインデーとやらが何だ。」
「決まっている!俺は、今日こそは愛しいあの子からチョコをもらう!!」
「どの子?」
「え、いや、その・・・だ、誰でもいい!!」
「おいおい。」
ふむ・・・どうやらバレンタインというのは女子が男子にチョコやるっていう日か。何でそんなヘンチクリンな日が出来たのやら。
「お前さ、バレンタインデーっていう意味を何度教えたらわかるんだ。どう考えてもわざとしか思われねえぞ。」
「んなこと言われてもね〜。」
どうも興味がない知識とかは頭に入らないようだな俺の脳味噌。
「にしてもバレンタインデーかぁ・・・確かに男子にとっては楽しみではあるな。」
「そうだな。タダチョコ食えるしな。」
「うん、お前の場合負け惜しみとかじゃなくて純粋な気持ちを言ってるんだろうな。」
はにゃ?
「あ、あの〜・・・。」
「「「?」」」
急に呼ばれたんで振り返ってみれば、何か見慣れない女子が教室前に。
「あの、荒木先輩っています?」
「俺だが?」
「な、何ぃ!?龍二だとぉ!?」
うっせぇぞ恭田。呼ばれたぐらいで何驚く。
「わり、ちと行ってくらぁ。」
「おう。」
雅に言っておいて呼んだ女子の下へ。まったく食事中に・・・。
「何だ。」
「あ、あの・・・。」
妙にもじもじしとんな〜。
「・・・こ、これを!」
「?」
?何か紙包み渡された。
「何これ?」
「え、えっとその〜・・・。」
・・・あ、チョコか。バレンタインだもんな。
じゃせめて時間考えろ。昼休み始まったばっかの時間に来られてもな〜。
「・・・こ、これを・・・。」
「あ?」
「これ、楠田先輩に渡してくれませんか!?」
「却下。」
「えぇ!?」
0.2秒で断ってやった。
「んなもん本人に直接渡せ。いるじゃんあそこに。」
「で、でも・・・。」
「チョコ渡すぐれぇで何言うとる。こっちはメシ中だっつーの。」
まったく俺の憩いの時間をそんなしょーもねーことで・・・中途半端に邪魔されるの大嫌いなんだよ俺。
「う、うぅ・・・。」
「・・・しゃあねえな。めんどっちいけど渡しといてやるよ。」
泣き出したんでとりあえずチョコの箱を受け取った。ま、渡せば済む話だしな。
「あ、ありがとうございます!」
「ん、じゃもう帰れ。」
早くメシ食いたいんだよ俺は。
お礼言われてすぐに背を向けて雅達のとこへ帰る俺。
「・・・何かあんま穏やかな雰囲気じゃなかったような気がするんだけど・・・?」
「ああ、お前にだって。」
「?俺か?」
ヒョイとチョコの箱を渡す。
「え、じゃお前渡してくれって頼まれただけ?」
「そ。」
「あ〜・・・ドンマイ♪」
ポンと俺の肩に嬉しそうな顔しながら手を置く恭田・・・何がドンマイ?
「ま〜ったくしょーもねー時間くったぜ。」
ドッカとイスに腰を下ろす俺。すぐさま弁当にありつく。うまうま。
「そういや雅ってよ〜・・・去年もめちゃくちゃ女子からチョコもらってたよな〜。」
「ま、まぁ・・・な。」
「?そだっけ?」
「それすら覚えてねえのかよ。」
ん〜、どーでもいいからな。
「で?今日でいくつもらったんだよオメェはよ。」
おい恭田。不機嫌丸出し。
「えっと・・・・・・143個。」
「もらいすぎだろ!?」
「お、いいね。そんだけありゃメシの後のおやつ困らねえな。」
「うぉい!?
うむ、節約節約。
「あのな龍二。バレンタインチョコってのはな、もらった奴しか食えねえんだよわかる?」
「知らん。チョコはチョコだろ?」
「・・・お前が言うと何か説得力あるのは何でだ?」
「はにゃ?」
?何を言ってる恭田?
「ああ、いいよ別に。こんだけの量一人じゃ食いきれないし。」
「サンキュ。」
「遠慮知らねえよなお前って。」
もらえるもんはもらえってのが我が家の家訓の一つだ。
あ〜にしても弁当うめぇなぁ。我ながらナイスな味付けだ。
「すいませ〜ん。」
「?」
今度は何よ?
「あ、いたいた♪リュウちゃ〜ん!」
「・・・ふぅ。」
こんな時に香苗かよ。
「リュウちゃんリュウちゃんリュウちゃ〜ん!」
「うっさい黙れバ香苗今の状況考えろ。」
メシの間はうっさい話禁止。
「え〜つれないな〜。せっかく持ってきたのに〜。」
「?何を?」
「決まってるでしょ?フフ〜ン♪」
?何かカバンあさり始めた。
「ジャーン!」
【バッ!】
変な効果音付で現れたのは・・・。
「・・・あ〜チョコね。」
「ピンポーン!」
何かえらい可愛らしい紙で包んだなぁチョコ。
『な、なにいいいいいいい!!!???』
?男子うるせえな。
「はいリュウちゃんに本命プレゼント!」
「?本命?」
何じゃそりゃ?
『ほ、ほ、ほ、本命だとおおおおおおおおお!!???』
だぁらうるせえっつーの男子ども。
【バガアアアアン!!】
「龍二いいいい!!!」
『!!!????』
ありゃりゃ、ドアが。
「テンションたけ〜な久美。」
「い、いつも通りだろう!?」
「じゃ訂正してやる。鬱陶しいな久美。」
「ひ、ひどい!?」
正直なこと言ったのに何を言うか。
「で?俺に何か用か?今日は手合わせの日じゃねえぞ?」
こいつとの手合わせの日程決めてるんだよなあらかじめ。知らない奴に言っておく。
「い、いや今日はその・・・。」
「?」
何か顔赤いぞ?
「熱でもあんのか?」
「ち、違う!」
「じゃ何だよ。」
まぁ弁当今食い終わったとこだし急いでないから何だっていいけんな。
「・・き、今日が何の日か知ってるだろう・・・。」
「?バレンタイン?」
「そ、そう・・・だ。」
さっきより顔真っ赤。
「で、何?オメェもチョコ持ってんの?」
「!?も、ももももももも!!??」
“も”て何だ“も”て。
「・・・そ、そうだけど・・・わ、悪いか?」
「別に?」
チョコ持ってくるだけでそんな恥ずかしいことなのかね?
『ななななな、なああああああああにいいいいいいい!!!???』
・・・今度は女子も混ざってねえか?
「い、言っておくけどお前が憐れだから情けでやるんだ、ありがたく思え!」
「ん、サンキュ。」
何が憐れなのかは聞かない。知らんしどうでもいい。
「あれ〜?久美ちゃんそれこないだ私の家で四苦八苦して作った奴j」
「ああああああちちちち違う違う違うこれは駅前のスーパーで買った奴だ!」
?なぁにを慌てる必要がある?
「り・・・・・・・龍二〜・・・。」
「んにゃ?」
何か恭田がすんごい声発してるな。
『テメェ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・。』
「おぉ?」
見ればクラスの男子女子関わらず全員目が血走っとるな。
・・・。
ここで暴れるのはさすがにまずいか。
「じゃ、俺ちょっと野暮用片付けてくるわ。」
「あ、リュウちゃ」
香苗が言い終える前に走り出した。
『むああああああてええええええええええ!!!!!!』
案の定、追いかけてきました恭田率いるケダモノみたいな集団。
じゃこのまま広いステージに行こっかね。
〜雅視点〜
「やれやれあいつは・・・。」
ガランとした教室の中、俺はボソリと呟いた。今教室にいるのは俺と香苗、久美の三人だけだ。
「リュウちゃん、大丈夫かな?」
「大丈夫だろう、あいつなら生きて帰ってくる。」
何だその戦場へ見送った後に呟くようなセリフは。
「あ、そうそう。」
「?」
香苗がまたカバンをゴソゴソと・・・。
「はいこれ。」
差し出されたのは・・・“見覚え”のある紙でラッピングされた箱。
「これは・・・。」
「あ、これは義理だからね。市販の奴だから。」
なるほど、駅前で売ってた奴だから見覚えがあったのか。
・・・まぁ文句は言えないな。
「あぁ、ならあたしからも。」
「お前も?」
「これ“も”義理だ。」
「も〜、“は”でしょ久美ちゃん♪」
「ち、違う!龍二のは本命じゃなくて・・・!」
言い争う二人を尻目に、俺は久美からの義理チョコを眺めつつ思った。
・・・バレンタイン如きではこいつらの気持ちに気付かないだろうな龍二の奴、と。
三分後、龍二が清々しい顔して戻ってきたのは言うまでもない・・・。
ついでに放課後、学校から十分ほど離れたグラウンドに龍二を追いかけてたケダモノ集団もというちのクラス全員が死屍累々のごとく倒れていたのはまた別のお話・・・。
龍二はバレンタインデーという名前はおろか内容さえ知りません。本人にとってはどうでもいい知識だそうです。
ただ一つわかったことと言えば・・・“タダチョコ食える日”ということ。うん、合ってるようで間違えてるね確実に。