第四十の話 和解 その1
ちょっと長編。前々から書きたいと思っていたお話です。
〜龍二視点〜
「さて、買う物買ったし、帰るか。」
「うん!」
あ〜ただいま商店街。俺はクルル連れて買い物中。で、今終わったとこだ。本来ならアルス達も連れて来ればよかったんだが、どうもアルスが腹が痛いとのことで。フィフィは付き添い。
「にしてもアルスの奴、何か変なもんにでも当ったかぁ?普段健康体なのに。」
「う〜ん・・・何でだろうね?」
そう言う俺だが、何か心当たりが無いわけじゃないんよ。
昨日の晩飯、賞味期限切れた食い物を三人の内ランダムに入れてやったからな〜遊び半分で。
え、俺?あえてトラ五匹いる穴まで丸腰で入っていくか?
あ、俺が行けるなら他の奴らも行けるか。←無理ですby作者
?最低?・・・サンキュ。それ一応俺にとっての褒め言葉。
「とりあえず腹いたの薬買ったから大丈夫だろ。」
「そだね〜。」
効くかどうかは知らん。
「で?今日の晩飯どうする?・・・・・・・?どした?」
「・・・。」
?何だ急に立ち止まった上に押し黙って。
「ん〜?・・・・・・お。」
あそこにおわすのは・・・。
「お〜い久美よ〜。」
「あ、龍二。」
「・・・。」
俺のと色違いの買い物袋を引っさげた久美とその隣にいるリリアンがスーパーから出てきたとこだった。リリアン相変わらず無表情。
お、今日はクマのプ○さんの顔がプリントされたTシャツかいリリアンよ。
「龍二も買い物か?」
「オゥイエ〜・・・っておいこらクルル。」
「・・・。」
何俺の後ろに隠れてんだ。何俺の服引っつかんで震えてんだ。小動物かテメェ。小動物かわいいよなぁ特にハムスターとかウサギとかもう最高って何考えてんだ俺。
とりあえずクルルの視線を辿ってみた。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ、リリアンか。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・【クスッ】。」
「!」
リリアンがちょっと笑っただけで掴む力強くなった。コラコラ服伸びるからやめなさい。
「おいクルル。隠れてないで出て来い。」
「だ、だって・・・。」
?・・・・ああ、なるへそ。最初の頃敵対心剥き出しにされてたからか。
「でもよクルル。こないだ俺言ってなかったか?リリアンの伝言。」
「で、でも・・・。」
お忘れになった方々は第二十五の話を読んでみよ〜。
「・・・魔王。」
「!」
「ほら、話しかけられてんだからちゃんと出る。」
背中に隠れたクルルをズイッとリリアンの前に押し出す。
「・・・。」
「え、えっと・・・。」
何話せばいいか分からん状態のクルルに対して、相も変わらず無表情リリアン。
「・・・。」
「あ、あうぅ・・・。」
お〜いせめて何か話してやれリリアンよ。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
・・・。
「いつまで黙っとるんじゃあああああい!!!」
【スッパアアアアアアァァァァァァン!!】
「はぐあっ!?」
イライラしてきたんで久美の後頭部にハリセンスイング!!
「な、何で!?何であたしなんだ!?」
「手近な奴がお前しかいなかったから。」
「そんな理由かい!ってそのハリセンどこから出した!?」
「気ニシナ〜イ。」
「いや気にする気にする!」
むぅ、うるせえ奴だ。
「まぁお前のことはどうでもいい。」
「ヒド!?」
イライラ消えたし。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・あのなぁ、そろそろ何か話せよ。」
「だ、だって・・・何話せばいいか・・・。」
「・・・。」
答えるクルルに対して、リリアンまだ無表情。
「おいリリアン。とりあえず黙ってねえで何か話せ。」
「・・・。」
「?何か話せない理由があるのか?」
あ、久美復活した。
「・・・それが・・・。」
「「うん。」」
「・・・恥ずかしい。」
「「マテや。」」
まぁ俺は大体予想はしてたさそんなこったろぉとな。
「恥ずかしかったから黙ってただけだったのか・・・。」
「・・・何から話せばいいかわからなくなった・・・。」
ダメじゃん。
「とりあえずお前がこないだ言ったことそのまま伝えればいいんじゃね?」
「・・・【コクリ】」
少し間を置いてから頷いた。
「・・・魔王・・・。」
「は、はい・・・?」
「私は・・・別にあなたのこと恨んでいるわけじゃないから・・・。」
お、言えたね。
「・・・確かにリュウくんからそれは聞いたけど・・・。」
「・・・それに私は・・・。」
「?」
「私は、一族の掟にただ従っていただけだから・・・。」
「え?」
一族だぁ?
「・・・私の一族は・・・昔から魔族に対する敵対心が強くて・・・“魔族は我々人間の肉を食らう、最も忌むべき種族”と呼ばれるくらい、深い憎悪を持っている・・・。」
あ、ようは偏見ね・・・ちょっと違うか?
「私の家族も・・・例外じゃ無かった・・・その上、全ての魔族はこの世から抹消するべきと一番主張していた・・・。」
暗いね〜。
「相手が魔王だったらなおさら・・・一族の、そして家族の人間達に後押しされて私はあなたに刃を向けた・・・でも。」
?
「・・・私は・・・全ての魔族が邪悪とは思わない・・・それにそんな憎悪に囚われた者達の操り人形にはなりたくない・・・だから・・・私を信じて欲しい。」
「・・・・・・・。」
「それに・・・一族の人間達の言うことがホントなら・・・すでにあなたは人間である龍二を殺しているはず・・・。」
まぁもしそうなる前に塵に返すけどな。
「あなたは・・・龍二のこと、殺したいと思う・・・?」
「そ、そんなの思ってない!」
「なら・・・大丈夫・・・。」
・・・つーかクルルがそんなことするとは到底思えねえしな。
「まぁリリアンがこう言うなら信じてやってもいいんじゃねえの?」
「・・・うん・・・。」
イマイチ腑に落ちない・・・って表情だな。
ま、これからのんびり仲良くやってけばいいさ。
「じゃあリリアンはクルルのこと認めてやるんだな?」
「【コクリ】」
「にしてもまぁよくいろいろ喋ったなぁオメェ。」
「・・・・・・・・・・・////////////」
急に顔真っ赤に染めながら逸らすな。さっきまでカッチョいいと思ったのによ。
「おーしとりあえずリリアンとは和解したな・・・・・・後は。」
「「「?」」」
そ。リリアンは元からクルルのこと悪く思ってなかったからこう簡単に和解できたが・・・。
「問題は・・・あの頑固野郎。」
「・・・スティル?」
「しぇいかい(正解)。」
前見た時のクルルに対する憎しみのこもった目線はホント尋常じゃなかったからな〜。
「・・・あの人が何故魔王を憎んでいるのかは、私も知らない・・・。」
「聞かなかったのか?」
「聞いてみても・・・悲しい顔しながらはぐらかせてたから・・・。」
やっぱ一筋縄じゃいきそうにねえな。
「・・・。」
「クルル・・・。」
あん時のこと思い出して泣きそうな顔をするクルルを慰める久美。こいつはこういう所がいいんだよな。
「ま、それはまた家帰って考えるべ。」
リリアンにはわかってもらえただけでもよしとしよう。今んとこはな。
「そうだな。ここで考えてたってどうにもならない。」
「【コクリ】」
「じゃ今日んとこはもう帰るか。クルルも腹減っただろ。」
「・・・う、うん・・・。」
・・・元気ねぇな・・・しゃあねえか。
「じゃあ、俺ら行くから。」
「ああ、また。」
「バイバイ・・・二人とも。」
「うん、バイバイ。」
リリアンに手を振り返すクルル。顔は笑ってるが、無理してんな。
久美達とは逆方向の道を二人並んで歩く俺達・・・あ〜・・・何つーかね〜・・・。
「なぁ、とりあえず元気出ねぇか?」
「え?私元気だよ?」
だから無理して笑うなって・・・まぁしゃあねえかとは思ったが・・・
いつものテンションじゃねえと何か気が抜けるっつーかね〜。
「あんま思い悩むなよ?」
「だ、大丈夫だよ!・・・・・・大丈夫・・・だから。」
いやだから大丈夫に見えねっつの。
・・・そう言いたいが、今のクルルの状態を見て言う気が失せた。
はぁ〜あ、マジメにどうすっかねぇ・・・。
続きますよ〜。