第三十四の話 真“箸”勝負!
〜アルス視点〜
『ニュースをお伝えします。今日未明、母親と口論した挙句に暴力を振るうなどで散々暴れ周った十七歳の少年が、近所の人に取り押さえられ逮捕されました。口論の原因について警察は詳しく調べて行くつもりです。』
「家で口論の上に暴力か〜。」
「恐いね〜。」
【バシッバシッバシッ】
「「・・・。」」
「最近キレやすい連中が増えてきてっからな〜。」
「だね〜。もう少し我慢すればいいのに。」
【バシバシィンチャキチャキッ】
「「・・・・・。」」
「まぁ我慢できない理由があったとしても同情はしねぇな。」
「そうだね〜。」
【ビシィ!バシィン!ズビシ!】
「「・・・・・・・・。」」
「まぁ我が家ではそういうことないよう、気を付けていかないとな。」
「だね!」
【ズバァン!バシュウン!シュピィン!】
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
【バシバシバシバシバシバシ!!ピシィ!!】
「・・・あの〜?」
「「?」」
「とりあえずそう思うんならお互いおかずの取り合いやめません?」
「「無理♪」」←即答
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
・・・大分お箸の使い方が慣れたから、今ではお箸を使って今夕食をとってるんだけど・・・
今、最後の一個のカラアゲを取ろうと魔王とリュウジさんがお互いお箸で攻防戦を繰り広げいている・・・まるで切り結んでいるかのよう・・・。
【シュピィンシュピィン!!】
「やるじゃねえか・・・クルル。」
【バシィンバシィン!!】
「リュウくんこそ・・・。」
【ガキィィィィィィン!!】
「ふん!」
「んみみみみ!」
【ギリギリギリギリ・・・】←“鍔”迫り合いならぬ“箸”迫り合い
「「・・・。」」
当然、ボクとフィフィは傍観してます。とっくに夕食も食べ終えています。
でもリュウジさん・・・こないだ箸で遊ぶなって魔王に注意したんじゃなかったっけ?あ、でも言ったら言ったで『この際そのルール無視!』て言われそうだな〜・・・。
【シャリン!】←離れた音
「はっ!」
「てい!」
【バシビシピシィ!バシン!】
お箸で激しい切り合い。受けては攻撃、攻撃しては受け。
「そうりゃ!」
「なんの!」
【ズビシィ!】
リュウジさんの強そうな斬撃。それを魔王は防ぐ。
「お返し!」
「無駄だ!」
【ビシシシシ!!】
目にも止まらない百列突きを魔王が放つ。それさえも素早く受けていくリュウジさん。
「もらったぁ!」
「あ!」
【パシィッ!】
あ、リュウジさんがカラアゲ奪った。
「させない!『風よ、我の元に!』
【ビュウ!】
「チィ!」
【バシッ!】
魔王が魔法を放ってカラアゲを自分の方へと飛ばす。それを捉える魔王。
「魔法か・・・だが!」
【ヒュッ!】
「あ!」
「GETs!!」
いつの間にかカラアゲが龍二さんのお箸に・・・今のは見えなかった・・・。
「何のぉ!!」
【ズバシ!】
すかさずカラアゲをお皿の上に落とす魔王。
「はぁ、はぁ、やるな、クルル。」
「ふぅ、ふぅ、リュウくん、こそ。」
軽く笑って肩で息を整える両者。ボクには二人が勇猛な戦士に見えた。
・・・。
ごめんなさい、もう何がなんだかわかりません。
「さぁ、いくぞクルル!」
「覚悟してよリュウくん!」
あぁ・・・また始まった・・・。
「これ・・・どう収容つけるの?」
「ごめん、ボクに聞かないで・・・。」
ボクとフィフィはもう完全に目に入ってないでしょう。二人には。
【ガチャ】
「やっほ〜。」
「あ、カリンさん。」
リビングにいきなりカリンさんが・・・あれ?
「どうやって入ってきたんですか?」
「えへへ。合鍵♪」
そう言ってチャリンと鍵を出すカリンさん。用意周到で何よりです。
「ってあれ?何してんの二人とも?」
「すみません、ボクの方が聞きたいです。」
こんな会話をしてる間にも二人は激しくお箸で切り結んでいる・・・剣じゃないだけマシだけどさ。
「ふ〜ん・・・あ、カラアゲ。」
「今日の夕飯ですよ。」
一応教えておく。
「へぇ〜、じゃ悪いけど一個“もらう”わね。」
「・・・・・・へ?」
もらう?
【ヒョイ、パク♪】
「「「「あ。」」」」
・・・。
「?何?」
・・・・・・・あっちゃ〜・・・・・・・。
【・・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ】
「・・・へ?あれ?」
カリンさんが戸惑う中、静かな殺気×2が辺りに立ち込め始めた・・・。
「・・・Heyクルル・・・。」
【*訳*おいクルル。】
「What?リュウくん・・・。」
【*訳*なぁに?リュウくん。】
「ヤルゾ。」
「ラジャ。」
その後、カリンさんがどうなったかご想像にお任せします・・・。
お箸で切り合いは行儀悪いからよい子は真似しちゃダメだぞ!悪い子は超オッケー!(ぉぃ