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第百七十七の話 落ち込んだって気ニシナーイ

お久しぶりです皆様、コロコロです。


今回はあとがきも見てください。



~ライター視点~



「はぁぁぁぁ…」


 天分町にあるタイヤキを専門に扱っている珍しい喫茶店、『CAFÉ・TAIYAKI』の店内にある窓際のカウンターテーブルの席に座る水色のパーカーを着た黒髪ポニーテールの少女、高橋花鈴は、片肘をついて深いため息を吐いた。少し高めの椅子に座っているため、左右の足を交互に力なくプラプラと揺らす。

 今の彼女は誰の目から見ても、明らかに落ち込んでいることがはっきりとわかるくらい彼女は沈んでいた。現に彼女の周りだけなんか暗いオーラが漂ってきてるため、彼女の近くの席やテーブルには客が寄ってこない。普段は珍しさと味のよさから、隣町だけでなく、東京の都心部から来る客などで平日の昼間は大繁盛でごった返しているが、今日は休日にも関わらずお客の入りが少ない。夕方だからというのもあるのだろうか。何にせよ、この店は花鈴にとって一番お気に入りの店であるため、ゆったりとした空間を満喫できるのは幸いというべきだろう。


 最も、満喫なんてできるような気分ではないのは誰の目から見ても明白だ。


「どうしましたか高橋さん? ずいぶんと落ち込んでいますけど…」


 そんな花鈴を見かねて、ダンディズム溢れる喫茶店のマスターは、特製のハーブティーを花鈴の前に置く。常連である彼女がここまで落ち込んでいるのを黙って見ているのは忍びないという、紳士的なマスターは既婚者にして二児のパパ。家でも家族サービスはちゃんとする。


「あぁ、ありがとマスター…うん、ちょっと色々あってね…」


 気遣いできるパパなマスターの淹れたハーブティーを受け取り、一口すする。芳醇な香りが、花鈴の沈み込んだ心に沁み渡るかのように広がる。それだけで幾分かは気が楽になった。

 ふぅ、とため息をつく花鈴。それを見守るマスター。先ほど、花鈴を除くお客さんは店を出て行ったため、今喫茶店にいるのは花鈴とマスターのみである。

 こう書くとなんかいい雰囲気になりかねないが、マスターは嫁さん一筋、花鈴は龍二一すz


「だまれ」


 サーセン。


「…今誰に向かって言いました?」

「いえ、お気になさらず…」


 右斜め45度を睨みつけた後、何事もなかったかのように、再び花鈴は暗く沈み込む。因みにさっきのドスの効いた声を発した時は目がものっそい吊り上ってました。


「………」

「………」

「………」

「………」

「…実は…」

「…?」


 長い沈黙を破り、花鈴は意を決したかのように口を開いた。


「実はさっき…バイト、やめてきたんです」

「え…」

「あ、やめてきたっていうより………クビにされました」


 そこで一拍置いて、花鈴はハーブティーをもう一口啜る。マスターは黙って話を聞いていた。


「…アタシのバイト先は、ここから近いファミレスだったんだけど。時給もいいし近場だし、職場環境もよかったし、働き甲斐もあってよかったんだけど…」


 花鈴は一つため息をつく。


「今日、ファミレスを経営してる会社の社長が視察もかねて社長の息子と食事しに来て…そこでウェイトレスとして食事を運んでったんだけど、その社長の息子っていうのがすごい馬鹿で、いわゆるドラ息子って奴でね。いきなり「俺の彼女になれよ」って脈略なく軟派してきたのよ」

「それはまた…」

「で、当然断ったのよ? なのにしつこく迫ってくるばかりか、付き合わないと店で働けなくなるとか脅されてね…挙句の果てには、お尻触られそうになって…」

「…まさか」


 その先の展開が予想できたマスターの呟きに、花鈴は小さく頷いた。


「うん………殴り飛ばしちゃった」


 ガクーっと項垂れる花鈴に、マスターは掛ける言葉も見つからなかった。


「馬鹿息子の鼻を折ったんだから、慰謝料要求されるかもと思ったんだけど、店長と他の店の人たちが必死に社長に謝ってくれて………クビだけで済んだのよ」


 クビだけで済んだ、と被害は最小限に抑えられたかのように思える言葉だが、花鈴の心は全く晴れない。


「…法的処置を求められたなかったのだから、よかったんじゃぁ?」

「そうなんだけど………なんだか、すっごく申し訳なくって」

「申し訳ない?」

「うん…」


 マスターが問いに、花鈴は答える。


「アタシの不始末なのに、必死になって社長に謝り倒してくれた店長と、他のウェイトレス仲間の子達に、先輩達。皆、アタシのために社長にお願いしてくれた………それをアタシは、ただ茫然と見つめるしかなかったのに………」


 両腕をテーブルの上に乗せ、その間に蹲るように顔を入れる花鈴。落ち込んでいる理由は、皆は悪くないのに、自分のために自らのプライドなんて全て投げ捨ててまで謝ってくれた人たちに対する申し訳なさ。そして、クビだけで済ましてくれたのに、自分は彼らに感謝の意を述べて頭を深く深く下げることしかできなかった自分に対する怒り………それらが混ざり合い、花鈴はこれまでにないほど意気消沈してしまっていた。

 そんな花鈴を見て、マスターは思う。普通の人ならば、仕事を一方的に辞めさせられたことに対する怒りや不満によって塞ぎ込むというのが一番多いというのに、彼女はお世話になった人達に何もしてやれないことを悔やんでいる…自分のことは二の次で。


 心優しい彼女に対する、あまりに厳しい現実………マスターには、どうすることもできなかった。


「………元気出してください高橋さん。きっといいことありますよ」


 だからこそ、マスターにはそんなありきたりな慰めの言葉しかかけてやることしかできなかった。


「そうそう、気を落としてたってますます塞ぎ込んじまうだけだぜ?」

「…うん…そう、だけど、ね」


肩を軽く叩きながら励まされるも、今もなお胸の内に渦巻くモヤモヤした嫌な気分は、花鈴は顔を上げる気力すら起こすことを許さなかった。




「……………ん?」

「……………え?」

「お?」




 ふと違和感を感じた花鈴は、嫌な気分を無視して顔を上げる。左後ろに立っているのはこの店のマスター。ありきたりながらも心遣いが伝わってくる言葉で慰めてくれた。


 で、先ほど右肩から感じた軽い衝撃の元を探し、首を横に向けた。すぐ見つかった。




「………龍二?」

「イエスアイアム」




 正体の名前を口にする花鈴に、バイリンガルな返答をする龍二。いつもの眠そうな顔のまま左手親指を立ててサムズアップ。『キラーン☆』となんか光ったような気がした。無駄に爽やかだった。


「………いつの間にそこにいたの?」

「いや、今さっき。ちょうどお前がハーブティー受け取って『ちょっと色々あって』ってところからだな」

「へぇ………ってちょい待ち。それいっちゃん最初じゃない? 最初から今までここにいたってこと?」

「気ニシナーイ」

「いや気になるわ。忍者かアンタ」

「忍者リュットリくん、只今参上っつってな。ヤベェ、次はハリウッド進出だな」

「宇宙の果てに進出してきなさいよ」


 今日はローテンションな花鈴は、どこかツッコミが雅っぽくなっていた。そんな花鈴を見て、龍二はやれやれと肩を竦めた。


「全く、お前もなんだかんだでそういうの気にするタイプなんだよなぁ。昔と全く変わっちゃいねぇや」


 そんな呆れるように言う龍二に、さすがに花鈴も少しカチンときたのか、非難じみた目で龍二を睨む。


「…アンタはいいわよね。そういうの、無頓着でさ…こっちは真剣に悩むことを、アンタは『そんなこと』で済ませれるんだし」


 刺々しい口調を隠そうともしない花鈴に対し、龍二はケロっとした顔をする。


「当たり前だろ。俺はそんなことでいちいち悩まん…まぁ、そこは人それぞれだ。悩みの度合いなんて皆違うしな」


 肯定する龍二に、花鈴は少し目を瞬いた。さすがに少し言い過ぎたか、とも思ったが、まさか肯定されるとは思わなかった。


「お前の悩みは、ようは店長やバイト仲間に対して何にもしてやれんってことだろ?」

「………ま、まぁ間違っちゃいないけど…」


 色々ハショっているが、概ねそんな感じである。それを聞いてうんうんと頷いた龍二は、左拳を右の掌に叩きつけた。


「よっしゃ、じゃここは景気よく!」


そして立ち上がり、左拳を勢いよく天に向かって突き上げる!




「その社長のドラ息子を血祭りに上げにいこー」

「ストップ・ザ・バカ龍二!!??」




 相変わらず話に脈略ない暴走宣言。花鈴は当たり前のようにというか当たり前に止めた。


「どうしてそうなんの!? アタシが気に病んでるのは店長やバイト仲間達に何もしてあげれないってことなんだから、もうドラ息子関係ないわよ!!」

「大丈夫だ、俺が殺りたいだけだから」

「主旨変わっちゃった!? 主旨アタシのためとかじゃなくて自分のために変わっちゃった!?」


 ゴーイングマイウェイを形にした男、龍二の暴走を必死に押し留めつつツッコむ花鈴。器用である。

そんなこんなことをしてる時、ドアベルが激しい音をたてながら店の扉が勢いよく開いた。


「話は全て聞かせてもら」


 勢い良すぎて扉が跳ね返ってきて入ってきた人物を再び外へ吹き飛ばした。

 勢いあまってブレーキかけれず壁に突っ込んでいく車のような雰囲気をまき散らした展開に、その場にしばしの静寂が下りる。やがて再びドアが開いた。因みに普通に開けていた。


「え、えっと、お邪魔します」

「やっほーカリン」

「キュゥ…」

『まったく、私を置いていくとは何事だリュウジ』

「あ…アルス、フィフィ、クルル、それにエル。アンタ達も来てたんだ」


 翡翠色の髪をしたアルスと小さな妖精フィフィ、そして目を回しながらアルスに肩を借りるように引きずられている金髪のクルルが店に入ってきた。エルはクルルの背中にあるスポーツバッグの中にある。

 どうやら扉を勢いよく開けて勢いよく飛ばされて勢いよく気絶したエースオブバカはクルルだったらしい。


「えっと、お話は大体お店の外で聞いてたんですけど…ごめんなさい」

「アンタも大変ね。まぁ、確かに難しい問題ではあるけどさ」

「ウキュゥ…」

『人間の悩みか…私はもう剣になってからそういうのを失くしたな…代わりに剣の悩みが増えたがな。包丁とか』


 申し訳なさそうに頭を下げるアルスに対し、フィフィは悪びれはしなくとも花鈴を慰めるように彼女の前まで飛んでポンポンと頭を叩く。エルは何気に寂しい話をしているっぽいが、最後らへんは愚痴である。馬鹿は気絶している。


「…ううん、いいの。ありがと、気遣ってくれて」

「まぁな」

「いやアンタじゃないわ」


 エッヘンと胸を張る龍二にスパーンとツッコむフィフィ。手に持っているのは人が持つ物と同じ大きさのハリセン。というか抱えている。


「よっしゃ、とりあえずまぁせっかく来たんだしマスター、いっちょタイヤキ頼むわ。いつもの小倉餡と期間限定桜餡、それと緑茶」

「あ、ボクも。ココアでお願いします」

「アタシはサクランボ餡ねー」

「チョコレートぎっしりタイヤキーーーーー!!!」

「やかましわい」


 突然復活して大声出すクルルをしばき倒しつつ、花鈴を囲うように座る龍二達は注文を取る。


「はい、畏まりました」

「………ブレないわね、アンタら」

「モチのろんだ」


 呆れる花鈴に再び龍二サムズアップ。アルスもぎこちないながらもサムズアップ。

 その直後、再びドアベルが鳴って扉が開いたことを告げる。


「よう、龍二。来たぞ」

「全く、相変わらずだな君は」

「りゅううううううううううううううううちゃあああああああああああ」

「ぐぶるえお!?」

「おお、待ってたぞお前ら。こっちだこっち」


入店してきたのは毎度お馴染みいつものメンバー、雅、久美、香苗(久々に龍二に特攻かまして座りながらのヤクザキック炸裂)、恭田(砲弾香苗をモロに食らった)。吹っ飛んだ二人は毎度のことと放置し、雅と久美も龍二達の下に集まった。


「み、皆も来たんだ…」

「まぁ、龍二に呼ばれて仕方なく、な」

「と嫌々っぽく言いながら絶対に来てくれる雅マジツッコミ」

「ツッコミ関係ねぇだろこのバカ」

「来て早々漫才繰り広げるのも相変わらずだな…」


 龍二と雅によるアホらしい会話に苦笑する久美。飛んでいった恭田と香苗も戻ってきた。


「み、鳩尾が…ぐおぉ…」

「脳天が~…くぅ…」

「お、なんだお前らトドメさしてくれってか? 上等だそこに直れ」

「「いや違う違う違う違う違う違う違う違う!!」」

「ちぇ~、つまんねぇの」

「トドメさしたかったんかい」


手と首を猛烈に振り回して否定する二人に、龍二は行き場を失くした拳をブンブン振りながら不満をあらわにするのを見て雅がツッコむ。和気藹々とした殺伐な雰囲気の中、またも扉が開く。


「…ハロー」

「こんばんは、遅くなりました」

「魔王様やっほい!!」

「死ね」

「こんばんはー!」

「………ばんばん」


 抑揚のない声で挨拶する女性リリアンに、礼儀正しい爽やかイケメンのスティル、アホ発言して口ん中に裏拳叩き込まれたのはケルマ、叩き込んだのはカルマ。そして香苗の双子の妹の美紀と美香。紛らわしいが、元気なのは美紀でリリアンみたいなのは美香。覚えておいたら損はしない。


「おお、お前ら遅かったな」

「ごめんなさい…買い物に手間取った」

「気ニシナーイだリリアン。おかげでおもしろいのが見れた」

「はれ? なんれぼふ見へるんれふか?」

「お前の顔が愉快に決まってるだろうが間抜け…いや、歯抜け」

「ふぁ!?」

「ケルマ兄ちゃん変な顔ー!」

「………歯抜け顔」


美紀と美香のトドメの援護射撃に、ケルマは効果音が聞こえそうなくらい固まった。音は『ゴーン!』みたいな感じである。スティルはそれを無言で慰めていた。


「な………なんか、すっごい大所帯になっちゃったんだけど………」


 いつものメンバーと居候組が勢ぞろいして、店の一角はすでに龍二達に占領されている状態になり、さすがの花鈴もついていけずに戸惑うしかない。だがそんな本人の意思などお構いなしに、龍二達は騒ぎまくる。


「うっしゃ、全員揃ったところでタイヤキ食うぞタイヤキ。皆食え食え遠慮すんな」

「やったー! チョコタイヤキ食べまくるよー!!」

「…一つ聞きたいんだけど、誰持ちだこれ?」

「まさかと思うけど、あたしと雅じゃないだろうな?」

「オフコースなり」

「「やっぱりかい!!!」」

「まぁまぁ、今日ぐらいはいいじゃない二人とも?」

「よし、俺だって出すぞ!」

「「「いやアンタはいい雑草」」」

「うわっほいお前ら容赦ねぇ泣いていいか!?」

「き、キョウタさん………」

「アルス、同情は時として人を殺すわよ」

『そもそもこの世界に来てから最初の頃はいざ知らず最近の扱いは殆ど包丁になっているというのは甚だ不満でしかないわけで』

「まだ愚痴ってるんですかエル…まぁかくいう私も最近は魔導師という職業を活かせてないですけどね、そもそも」

「スティル………愚痴うつってる」

「………………」

「まだ固まってんのかこのケルマ」

「ケルマ兄ちゃん石みたーい」

「…石ころ」


ワイワイガヤガヤガサガサ、さっきまでの落ち着いた空間が一気に騒がしくなり、花鈴は置いてけぼりをくらった。


「………なんなのよ、もう」


 皆がはしゃぐ中、呆れるように呟く花鈴。そんな花鈴に、ポンと肩に軽い重圧がかかった。


「…? マスター?」

「ははは」


 見上げれば、マスターが右手に大量のタイヤキが乗ったお盆を持ったまま笑っているのが見えた。山盛りのタイヤキを片手で持ち上げる男、マスター。二児のお父さんマジパネェっす。


「どうやら、元気出たみたいですね?」

「へ? ………………あ」


 マスターに言われ、ふと気付く。さっきまで暗く沈んだ気持ちでいたのに、いつの間にかそんな物は消えていて、代わりにあるのはいつも通りの光景が目の前に広がっていることによる心地よさ。

 龍二がはしゃいだり暴れたり、雅達がツッコんだり吹っ飛ばされたり………見慣れた光景。

 だが、見慣れているからこそ感じる心地よさ。友人達と一緒に騒ぐことで感じる充足感………花鈴が感じているのは、それだった。


(…もしかして…)


 騒ぎの中心にいる龍二に、花鈴は目を向ける。当の本人は、いくつものタイヤキを長い串に刺して大道芸人のごとく口の中に突っ込んでいくという荒業を披露していた。


(龍二………アタシに気を遣ってくれた…?)


 何となく、確信した。ひょっこり現れた龍二は、いつも通りはしゃぎまくり、自身が抱えていた悩みを吹き飛ばしてくれた。雅達の様子からして龍二から連絡をもらったから来たらしく、入店した時間を見る限り、恐らく花鈴が落ち込んでいることをどこかで知り、前もって連絡を入れておいたのかもしれない。

 本人は否定するだろう。けど、花鈴はそうとしか思えない。



 だったら、それでいい。本人が否定しようとも、



「花りーん。リリアン達が買ってきたジェンガすんぞー」

「ははは、今日は貸し切りってことにしときますよ」

「さっすがマスター、太っ腹!」



 こうして、自分は元気を取り戻したんだから。



「…うん、やろ!」


 席を立った花鈴は、皆の下へ向かう。


 そうだ、落ち込んでいられない。今度店長とバイト先の人たちに、もう一度ありがとうを言いに行こう。それから、自分ができる最大限の感謝を皆に示そう。



 店長と、バイト仲間達と………龍二達に。


























『綺麗には終わらせない!! ライタァァァァァ参・上!!』

「「だぁお!!??」」


 どっから湧いてきたのか、いつかの黒装束の男がテーブルの上にポーズ付で降り立った。弾みでジェンガ崩れた。


『フッフッフ、驚いた? ねぇ、驚いグボァッ』


 ジェンガをぶっ壊して笑ってるライターに、龍二が蹴りを入れる。キリモミ回転して吹っ飛んだライターは壁をバウンドして天井をバウンド。元のテーブルの位置まで戻って立った。


『フッフフフ、き、効かん、効かんぞ…おぼふ』

「いや、無理すんな。頭巾の隙間から血流れ出てるぞ」


 雅に指摘されるも、血を止めずにライターはテーブルの上から飛び降りた。


「…で、何の用だよライター。オメェが出てくるとモニターの向こうから批判飛ぶぞ」


 龍二が呆れながら言い、ライターを窘める。だがライターは気にも留めず、懐を漁る。


『フフフ、今日は私から次回の話をしようと思ってな。こうして出てきたのですよ』


 そう言って取り出したのは、ライターの身の丈ほどある三脚のスタンドに備え付けられた黒板。


「いやどうやって出したそんなでかいの」

『ライター権限だ!』

「ああそうっすか」


 雅は脱力しながらツッコんだ。


『フフフ、次の話を私自らがここに書き込んでやる。よーく見ときなさいコノヤロー!』

「何でキレ気味なんだよ」

「とゆーかそれあとがきでやんなさいよ。本編でしなくてもいいじゃない」


 雅とフィフィによるツッコミを無視し、ライターは黒板に白チョークで書き込んでいく。そらもう高速で。カカカカカカッ! みたいな感じに。


『そぉい!』


 カッ! と書き終えたライターはポーズを取りつつチョークを振った。




【次回! 文化祭編!】




 おぉ、と一同から声が上がる。


「確かに文化祭って今までなかったな」

「やろうと思ってやらなかったんだよな確か」

「何でオメェがそんな裏情報知ってんだ」



『ではなく』 

「「嘘かよッ!?」」



 サササっと黒板消しで文字を消すライターに龍二を除く全員がズッコける。


『本当はこれだぁ!!」 


 カカカカカッ! と書き直したライターはまたもポーズ付で勢いよくチョークを振り上げた。




【次回、バカンスへGO!】




「ば、バカンスですか?」

「私はバカじゃない!!」

「バカだろ」

「うにゃああああああ!!!」


『でもない』

「「おい!?」」


 またもササっとライターが文字を消して全員(龍二除く)がズッコけた。


『本当はこいつだぁぁぁ!!』


 なんなもうウンザリしてきた雅達をほっぽって、ライターは新たにカカカカカカカカッ!と書き直して勢いよく(ry





【次回、最終回!!】





「「それこそ嘘つけええええええええええええ!!!!」」


 当たり前のように全員(龍二以外)から大ブーイングであった。


「おいおいライター、いい加減何すんのかはっきりさせろよ」

「そうよ。どんだけ引っ張んのよ」


 雅と花鈴がダルそうにライターに文句を言った。




『…………………』



「…? ライター?」


 無言のライターに雅はもう一度声をかけた。



『…………………』



「おーい、無視すんなー」

「聞いているのか?」


 龍二と久美からも呼び掛けられるも、ライターはずっと無言のまま。その視線はまっすぐ微塵も動かない。



『…………………』



「「…………………」」


 なんとなく、ライターの視線の先を全員で追ってみる。そこにあるのは、ライターが持ってきた黒板。そこには堂々と書かれていた。





【次回、最終回!!】





『…………………』



「………え?」

「ちょ、ライター? なんかリアクションしてくれよ?」


 嫌な予感に襲われた一同は、ライターにもう一度声をかける。が、それでもライターは無言。




『…………………』




「…あの、ライターさん? ちょっと?」

「ら、らいたーさん?」


 アルスとクルルも呼びかけるが、それでも無反応。




『…………………』




 が、ようやくライターが動き、チョークを持った手を動かして黒板にチョークを走らせる。固い音が嫌に静かな空間に響く。




カッカッカッ




『………ふぅ』


 そして一歩離れ、その文字を満足気に見上げた。








【次回、最終回!! マジ】







「「……………………………………………」」











『では、次回最終回!! 皆さん、見てくださいね!!!』
























「「待たんかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!」」




 日が沈む空に、いつものメンバーの叫びツッコミが木霊した………。

はい、本当にします最終回。次更新する時に掲示板でもお知らせしますので、その時はよろしくお願いします。


ん? 伏線? 他ほったらかしにしてるのあるじゃないか?


それも次に話します。


では皆様、また次回!

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