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第百五十七の話 雅のツッコミ日和

最近雅の出番が多いと思いつつ、今回は雅視点。サブタイからわかるとおり、雅がいろいろとあって疲れます。ついでに俺はFFディシディアにハマっていろいろと大変。

〜雅視点〜



「んっふっふ〜♪」

「……ふぅ。」

「はぁ……。」


あー、どもです。雅です。只今疲労中です。


「一杯買ったね、雅♪」

「ああ、買ったな姉さん。」

「ええ、買いましたねリョウコさん。」


疲労の原因は今手元に山のように持たされた紙袋やらの数々。そう、俺とスティルは姉さんの買い物に付き合わされていた。


いや、今日給料日だっていうからさ、久しぶりに買い物したいって言い出して。そりゃ久しぶりに姉さんと出かけるんだから、たまにはいいなって思って三人で町に出た………



わけなんだけど、失敗だった。家で英語の宿題の続きやっときゃよかった。女の買い物ってのはホント恐ろしいな。渋谷の件含めて。



「? 二人ともフラフラよ? 大丈夫?」

「……ああ、大丈夫。」

「そう?」


ホントはしんどいです。この自分の身長を超えるかのような紙袋の山を持つのはしんどいです。手伝わせようと電話したけど用事ならまだしもメンドくせぇの一言で断った龍二の野郎が憎たらしいですチキショウ。


おまけにさっきは俺とスティルに向かってケバい女とかがナンパしてくるし、姉さんだってチャラチャラした男が言い寄ってくるし……いや、俺はいいとしてテメェら姉さんに近寄んなぶっ殺すぞ。


まぁ、それも合わせてすんげぇしんどい疲れたダリィ。


「……リョウコさん、そろそろ帰りませんか?」

「う〜ん、そうね。二人ともしんどそうだし。」


スティルのナイスな提案に姉さんが頷いて、俺の心は喜びに満ち溢れた。


「あ、じゃついでに最後、映画観て行こうか?」


一気に絶望に変わった。


「え、エイガって何ですか?」

「でっかい画面に壮大な物語が映し出されるの。おもしろいわよー?」


姉さん、それあながち間違っちゃいないけどその説明はねぇんじゃねえか?


…………まぁ、映画なら途中で寝れるし、休憩にもなるし……それにスティルは映画初めてらしいし、別に反対しなくてもいいな。


「じゃあ、映画館行くか。」

「そうね。」


つーわけで、俺らはこの町で数少ない映画館に入ることにした。


映画館の名前は、『明日あしたのシアター』。明らかこれ駄洒落入ってるだろ。しかも何もおもしろくねぇし。


でもまぁ、結構でかい映画館だから客足は途絶えず、おまけに綺麗だから人気がある。


「で? 姉さん何観たいんだ?」

「これ。前々から観たかったの。」


そう言って掲示板に貼られた、今話題のハリウッドスター男女二人が神妙な面持ちで寄り添っている映画のポスターを指差す。



『風と共にさる



ポスターとは裏腹にシリアスのクソもねえ。


「これ、三枚お願いします。」

「ってもう購入してるし……。」

「ほら雅、学生証出して。学割なんだから有効に活用しないと。」

「……ああ。」


渋々学生証を出して、姉さんが金を払ってチケットをもらう。そこにはでかく『風と共に猿』と書かれてあった。タイトル見ただけで憂鬱になる映画なんて初めてだ。


つーか、どっかで聞いたぞこのタイトル。まずくね?


「雅、早く行こう?」

「……はいはい。」


姉さんとスティルの後を追い、俺らは上映されるシアター目指してエレベーターに乗った。








「へぇ、結構話題作なだけあって混んでるね。」

「話題作か。話題作なのかコレ。」


そんなの全く知らないぞ俺。テレビでも見たことねぇし、学校でもそんな噂聞いたこともねえ。なのに何だこの人数。ほとんど満席じゃねぇかよ。


……もしかして俺、世間の情報とかに疎いのか? テレビ見る時間少ないとか。


「……エイガって、すごいんですね。」

「そうだな。」


……スティルの初めて観る映画がこんな人気があるっていうのはいいことなんだろうが、いかんせん、俺は正直な話タイトルから期待できないから複雑だ。


「さ、ポップコーン食べよ。」

「ああ……。」


……ポップコーンをパクつく姉さんを見ててつくづく思う。時々この人の感性が龍二並に訳わからん。


因みに俺らの席は、劇場の若干後ろで画面のど真ん中に位置する場所に座っている。配置的には、右から姉さん、俺、スティル……まあどうだっていいんだけどなそんなこと。


「ところでリョウコさん。このエイガはどういう話なんですか?」


俺を挟んでスティルが姉さんに聞いた。


「えっとね、この映画は中世ヨーロッパが舞台で、貧しい男性と貴族の女性が互いに恋に落ちるんだけど身分の違いで一緒になりたくてもなれない二人の純愛ラブストーリーなの。」


いきなりベタな内容だな。


「二人を邪魔するのは、ヒロインの親だけじゃなくて、主人公に恋焦がれる酒場の主人、マフィア、自衛隊で、二人はそんな困難を乗り越えていくの。」


はいおかしいとこ早速発見。何で中世ヨーロッパなのに自衛隊が出てきてんのかな? んでマフィアとか物騒すぎんだろ。どこがどうして純愛なんだそれが。


「へぇ………おもしろそうですね。」


スティル、おかしいと思え。自衛隊はおかしいと思ってくれ。


「でもやっぱ一番の見せ場は、予告でやってたマフィアのボスが怪獣に変身してヒロインを攫って、それを主人公が変身して助け出そうとするとこよね。」


それを聞いた途端、俺の中で純愛ラブストーリーが百万光年離れていく錯覚を覚えた。ジャンル変えろ。すぐ変えろ。ウル○ラマンみたいなそっち系に今すぐ変えろ。


「………ジャンルが違うのでは?」

「気ニシナーイよ♪」


スティルのごもっともな意見を姉さんは龍二の名ゼリフと共にスルーしやがった。




【ブーーーー】

「あ、始まる。」


ブザーが鳴り響き、騒がしかった映画館が静寂に包まれる。俺らも大人しく座りなおし、暗くなっていく館内で始まるのを待った。



『映画予告。』


あ、まずは映画予告か。







『ジョンソン監督、最新作!!』



……。



『全ての力を注ぎ込んだ、まさに力作!!』



……。



『アカデミー賞、候補外!!』



……?



『全米、第六十四位!!』



……。



『全世界が鼻で笑った!!』



…………。




『タイトル未定!!』



………………。



『乞おうご期待!!』




「できるか!!」


そんな宣伝だと見る気一気に失せるわ! 何が狙いなんだこいつ!?


「コラ雅、立っちゃダメよ。座って。」

「あ、ああ…ごめん。」


咄嗟のこととはいえ、さすがに迷惑だな……。








『その世界に、一人の男がいた。』



予告で、イケメンの日系の俳優が荒れた大地を歩いていた。



『その男には、秘密があった。


誰にも言えない、秘密が。


その秘密を知った者は、誰一人として無事ではすまない。


その秘密が知られたら、彼も命を狙われて無事ではすまない。


ゆえに、彼はバレないように孤独を選んだ。


ゆえに、いつでも一人だった。』



……。



『しかし、彼が一人の女性を愛した時、その秘密のベールは徐々に脱がされていく。』



……。



『彼は、彼女を信じれるか。


彼は、世界を敵に回せるか。


それとも彼は……


秘密がばれ……


破滅するのか……。』



……。



明石万太郎あかしまんたろう監督最新作。



<この男、実は世界破壊するほどすんげぇ力もった超能力者>



あなたは、秘密を解き明かすことができるか。』




「もうバレバレじゃ!!!!」


すでにタイトルでネタバレんなっとるっちゅーねん!! 俺の期待返せコラ!!


「雅!」

「……ごめん。」


姉さんに窘められ、再び着席。







『今夜……。』

【リン、ロン、ラン、ロン、リン、ロン、ラン、ロン】



薄暗い部屋の中、一人の男が部屋の隅で携帯の液晶画面を見つめる。


……つか、このどことなく不安にさせる着信音って……。



『あなたに最大の恐怖が、

【リン、ロン、ラン、ロン、リン、ロン、ラン、ロン…】



訪れる。』



【ピッ】



<着信ナシ>




「ナシかい!!!!」


孤独でかわいそ過ぎて確かに恐いけどさ!? んだよコレあの映画のパクリかコラ!?


「雅!」

「……ごめん。」


また着席した。







『遂に!!』



お?



『皆様のご要望にお応えして!!』



……。



『あの作品の、待望の続編!!』



……。



『全世界の子供達に送る、最高傑作!!』



……。



『時は近未来、ある平和な都市に起こった、惨劇……




≪グオオオオオオオオ!!!≫

≪うわああ!? 来るなあああああ!!!≫

≪きゃあああああ!!!≫

≪た、助けてくれ!! 助けて!!≫

【グジュ! グチャ!!】

≪ぐあああああ!!!≫

≪あああああああああああ!!!!≫

≪だ、だずげで……誰が……。≫

≪ぎゃあああああああああ!!!!≫

【ブヂュバヂュ!!】

≪いやあああああああああああ!!!!≫




世界は、終焉の時を迎える……。



ゾンビ.バイオレンス.パニック2>



Coming Soon!!』




「エグいわ!!!」


『注:当作品は十八歳以上の方のみご覧いただけます。』


「じゃ何で子供達に捧げる!?」


これ観てんのか!? 子供達よこんな血なまぐさいの観てんのかああああああ!!??


「雅。」

「……悪い。」


着席した。







『この映画は、実話を元にして描かれた物語です。』



あ、ドキュメンタリーとかか?



『それは、肌寒い冬の出来事でした。




≪!? な、何だアレは!?≫

≪鳥だ!≫

≪飛行機だ!!≫

≪いや違う! あれは……!≫



≪翼が生えたツチノコだ!!!!≫



<ツチノコが空を飛んだよ>



Coming Soon!!』




「超ありえねえ!!!」


そいつ明らかうそつきだろ!! ほら監督の名前だって『宇祖うそ 月音つきね』ってなってるってかそのまんまかよ本名!? 名は体を現すってこういうことかオイ!?


「雅。」

「…………。」


着席。







『あの感動作、再び……。』



…………。



『彼は全てを失った。


自分のプライドも打ち砕かれ、


大切な妻をも奪われた。』



…………。



『しかし、彼は諦めなかった。


愛する者を取り返すため、


粉々になったプライドを取り戻すため、


そして、復讐するため。



彼は、リングという名の戦場に、再び立ち上がる。』



……これはボクシング映画か?



『果たして、彼は再びボスになれるのか。』



……は?




<モンキー ザ ファイナル>』




「猿かよ!!!!」


パクリだろ!? これ明らかパクリだろおおおおお!!!???


「雅。」

「……。」


着席。







『世界は二つに分けられていた。』



もう絶対期待しねえ。



『一つは、人間が住む世界。もう一つは、妖精が住む世界。互いに交じり合うことなく、そして互いに知ることなく、世界は存在していた。


しかし、一人の人間の男が世界を知った時、破滅の時は訪れる。』



…………。



『少年は、男の野望を食い止めることができるのか!? 結末は……破滅か、それとも………。



<ダブルワールド 〜世界の意思〜>』



あれ、何だまとも



『Not Coming Soon!!』




「じゃねえ!!!」


何で否定してんだよ!? じゃ予告すんなコラ!!


「雅。」

「……。」


座った。







『今度の主役は、何と彼ら!?』





『疾風迅雷、駿足のSYUN!!


守るべき者のために、ヒーローのISSEI!!


キレたら恐い、鬼のKOBASI!!


そしてリーダー、不死身のKYOUTA!!』



…………………。



『今ここに! 正義の影薄達が世界のために立ち上が


【ここで映画の注意事項をお知らせします。映画をご鑑賞の際、喋ったり、タバコを吸ったり、前の席を蹴ったりしないでください。ケータイの電源もOFFにしておくようお願いします。また、上映中にカメラで撮影をしている不審な人物を見かけたら、係員の者にお知らせください。皆様が快適な空間で映画を楽しめるよう、スタッフ一同はお客様のために尽くします。では、引き続き予告をどうぞ。】


近日後悔こうかい!!!』




「……………………。」


予告中に何か注意事項が流れたけど……。


「……まぁいいか。」


俺の呟きの答えるように、劇場の人達全員が頷いたような気がした。







『最新作!!』



監督誰だよ。



『あの名作が夢の共演!!』





『それは、些細な爆発事故から始まった。』



些細な爆発事故なんてこの世にはない。



『彼らは次元の狭間に落ち、そして異世界に迷い込んだ。


そこで出会ったのは、不思議な外見を持つ少年達。


そんな彼らを巻き込み、青年は少年達の学校でいろいろ壊したりいろいろしでかしたりいろいろハチャメチャ暴れだす!』



……何か龍二みてぇだな。



『監督:コロコロ。協力:めろん先生。』



!?



『<勇魔以上日和ゆうまいじょうびより



本気と書いてマジでComing Soon!!』




「マジな宣伝すなぁあああああ!!!!」


今までで一番盛大であろうツッコミが映画館内で炸裂し、



「お客様、静かにお願いします。」

「アイスイマセン。」



係りの人に怒られた。









「おもしろかったね、映画!」

「え、ええ……そうですね。」

「…………。」


で、映画が終わって外が夕焼けで赤く染まった頃、映画館の前で未だ興奮冷めやらぬ感じでテンションアップアップな姉さんと、げんなりしている俺とスティル。


げんなりしてる理由は、バカ丸出しな予告でのツッコミによって無駄に疲労感がMAXに到達、よって映画の始まりから終わりまで頭の中が夢の世界へレッツラ・ゴーしたために内容なんざわかるはずもなかった。スティルも買い物の疲れがあったために俺が寝たすぐ後に熟睡してしまったんだそうだ。


で、最初っから寝る気だったにも関わらずツッコミのせいでまだ疲れが全然取れていない俺らはこんなローテンションなわけなんだけど……はしゃぐ姉さんを見てると、何か腹立つわぁぁぁぁ……。


「いやぁもぉホントすごかったよ〜…。」


ああそうですかいすごかったんですかい。


「エリザベスがボビーを助けようとビルから飛び降りたのはホントビックリしたね。」


え、ヒロインが助けるの?


「やっぱりエリザベス役のジョナサンは顔もいいし、何してもかっこよかったなぁ。」


エリザベス男かよ!?


「ねね、雅達はどう思った?」


…………。


「そうだな、やっぱりジョナサンはかっちょいいとおもうよおれは。」

「そうですね、わたしははじめてでしたがこれほどしょうげきをうけたことはありません。」

「でしょでしょ!? やっぱり見に来てよかったね♪」


ハイテンションな姉さんは俺ら二人の超棒読みにまったく気付いていなかった。


「…なぁ、姉さんもう帰ろうぜ。疲れた。」

「私もです…。」

「そう? じゃあ帰ろっか。」


超ご機嫌な姉さんは先を歩き、俺ら二人はよっこらせっと大量の荷物を持ち上げた。


「……スティル。」

「……何でしょうか?」


俺はものっそ小さい声でスティルを呼んだ。


「……俺、今だけ龍二のあのマイペースさがものすごい羨ましくなってきたぞ。」

「……奇遇ですね、私もです。」

「「…………。」」


俺らは心の中で静かに涙を流した。


「…帰って寝る。」

「寝ましょう。」


今夜の晩飯はカップラーメンにしよう、と決意を固めて、俺らは帰路についた。









〜その頃〜



「くしょん!」


和室で寝そべりながら龍二はクシャミをした。


どうもコロコロです。今回はこんなんなりました。


で、ですね。まぁ本編でもやってたように、マジでやります。勇魔以上日和。明日にでも第一話だけ載せますので。言っておきますが、文句は受け付けません。


では、これにて。FFディシディアサイコー! ジェクトサイコー! と叫ぶコロコロでした。

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