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第百五十五の話 モチろん餅つき(駄洒落)

サブタイトルにツッコミ入れないでくださいませませ。


〜雅視点〜



作者の世間では正月の雰囲気が大分薄れていっている中、俺らの世間ではまだ一月二日。そんな昼の出来事。





「とゆーわけで、餅つきやんぞ。」

「待てや。」


我が家に集まったのは、ご存知いつものメンバーとプラスアルファ達。そしてどっから持ってきたのか杵と臼を引っさげて龍二がまた突拍子もないこと口走りやがった。


「何がとゆーわけかどうしてそうなったのか、五百字以内で述べてみろ。」

「昨日餅つきするって言ったろ?」

「聞いてない。」

「あれだ、お前がウーロン茶飲んで酔って裸踊りした後に頭に赤い配管工のオッサンの敵の人食い植物に頭を齧られてそのままコサックダンスしている時に言ったんよ。」

「ウーロン茶で酔ったっていう時点ですでにそれ大嘘だろ。」

「バレたか。」

「テメェなめてんのかこの野郎。」


今年もこんなこと繰り返さなきゃいけねぇと思うと、先が思いやられる。


「ほらほら、遊んでないで餅つきするわよ?」

「おう。」

「……遊んでなんかないやい。」

「ま、マサさん……キャラが。」


いいんだい。もう何だっていいんだい。子役にだって何だってなってやるんだい。


「ねね、リュウくん。モチっておいしいの?」

「ああ。醤油付けたらもうめちゃんこウメェぞ。」


今時めちゃんこって言う奴いるか?


「わはー! 楽しみー!」


……はぁ。もうどうにでもなれ。




「よし、もち米炊けたぞ。」


龍二が未だ蒸気が立ち昇っている蒸篭せいろを釜戸(龍二自作)から降ろし、臼に入れる。


因みに、最初につくのは龍二で、出来上がった餅に粉をまぶしたり、雑煮などにする役割は花鈴、エリザさん(この日は仕事休み)、香苗の三人。残った俺らは身の回りの手伝いや見学。


……つーか、何だろう。この何とも言い難い不安は。


「ふん、ふん。」


まず、臼に入った餅を杵でコネていき、米粒を潰して形を整える。


「うし、じゃ始めるか。」


コネ終わり、杵を片手で高速回転させて気合を入れる龍二。危ないからやめろ。


「……おい龍二。先言っておくけどな。」

「?」


まぁ、大丈夫だろうけど念押しに。


「楽しようとして気功術とかそんなん使うなよ?」

「アホか。そんなんで餅がつけるか。」


そりゃそうだけど、言われると何かムカつく。


「リュウくーん、頑張ってー!」

「ファイトです、リュウジさん。」

「リュウジ、ファイトー。」


遠くからはアルス達が龍二の応援。いや応援いらねえだろ。


「そんじゃ、トップバッター龍二、いきます。」


野球かよ。



「…………。」


杵を両手に持ち、正眼の構えを取りながら餅をしっかりと睨みつける。龍二の体からは、餅の蒸気と同じように蒼い闘氣が立ち昇り、場を緊張で満たしていく……



何で俺は餅つきでこんなバトルアクションの解説みたいなことしてんだ?



「はぁぁぁぁ……。」


そして精神統一し、杵をゆっくりと振り上げ、




「おらあああああああああああああ!!!!」


思いっきり杵を振り下ろす!






【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!】

『!!!!!!!!????????』




明らか餅つきではあり得ない盛大な爆音が町中、つーか東京中に響き渡り、衝撃波が周囲に伝わる。そして臼を中心に地面に亀裂が入っていき、それはやがて家の塀を越え、遥か向こうにまで伸びていく。その亀裂の上に建っていた家々は崩れ、やがて姿を消した。




『……………。』



明らかな異常現象を目の当たりにし、俺らは揃って硬直。そしてその災厄の原因となった本人はというと、




【ヒュゥゥゥゥゥゥ……】



「…おーい…。」




自らが作り出した亀裂、もとい崖の底へと餅もろとも落ちていった。









「よーし仕切り直すぞー。」


五分後、何事もなかったかのように龍二が新しい杵と臼と餅を用意し、気合を入れなおす。



……いや、正直言いたくないんだけどな……あの亀裂の壁を駆け上がってきて、その後亀裂を閉じ、被害の合った家を全て戻した。五分で。


省略し過ぎ? どうやって事態を収めたのか描写しろ? しろってのか? あれを?


んなもん龍二だからってことでいいじゃないの。



とりあえず先ほどのことは無かったことにしようということで全員意見が一致、とゆーわけで改めて餅をつくことにした。だから読者の皆さん、こっから下が今回の話のスタートというわけにしといて。な? 頼むから。


「んじゃ今度は手加減しないとな。」


言うな。


「あ、そーれ。」

【ドッスン】


抑揚のない声で餅をつき始めた龍二。餅をついた時の音が何かどっかのゲームの敵キャラに聞こえる。


「うら。」

【ドッスン】

「そら。」

【ドッスン】

「えいよ。」

【ドッスン】


………これ、ただただ続いてたらそのうち飽きてくんじゃね?


「そんじゃあとどめに!!」


は?



「うららららららららららららああああああああああ!!!!」

【ドドドドドドドドドドドドド!!!】


おおおおおお!? は、速い!?


「らああああああ!!!」

【ズドオオン!!!】


うは……物凄い高速でついた後にとどめに力一杯(限りなく力量抑えて)振り下ろしやがったよこいつ。


「にょえぇ、しゅごい…。」

「……。」


見学していた俺らは全員呆然と、杵を下ろして一息入れてる龍二を見つめていた。


「出来たぞ。」

「あ、あぁ……。」


……とりあえず、龍二がついた餅を取るために臼の中を覗き込んだ。


臼の中は、未だホカホカと温かい湯気を立ち昇らせて、同時にうまそうな香りが鼻をくすぐる。見た目も美しく、透き通った黒いスープにこんがり焼けたチャーシュー、そして金の如く輝く麺………って、



「何で餅がラーメンになってんだよ!?」

「知らん。」


ちょっと待て、これはあれか? 龍二だから成せる技なのか? それともただすり替えたのか? すり替えただけなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?


「まぁまぁ、そう錯乱するな。」

「するわ!!」

「ジョークだっての。ほら、ここにちゃーんと餅があっから。」


そう言って草むらからズイっと出したのは、出来たての餅が入った臼。


「……お前、すり替えたのか?」

「イエス。」

「…………。」


誰かこいつ殺してください。


「おーし、餅出来たぞー。つーわけで、そっち頼んだ。」

「了解!」

「任せなさい!」


出来上がった餅を持ち上げ、龍二はエリザさん達がいるテーブルの上へと運んだ。


「じゃいただきます。」

「やっぱ食うんかい。」


臼ラーメンはものの見事に龍二の腹の中に入っていった。二分で。早すぎるっつーの。




「では、続きましてー。」


で、食べ終わったら即あらかじめ炊いておいたもち米を蒸篭から臼へと移す。


「お前らもやってみっか?」

「え、いいんですか?」

「何事も経験だ。」


見学していたアルス達を呼び、もっともらしいこと言った。お前ますます保護者に見えてきたぞ。


「じゃまず誰からする?」

「私したーい!」

「…私…。」

「えっと、じゃボク後からでいいです。」


一番やる気満々なのは、クルルとリリアン。アルスとか他の連中は控え目。


「僕は魔王様のあt」


言いかけたケルマの口にカルマの拳が突入、何かいろいろ折れた音をたててケルマは吹っ飛んだ。


「ん〜…じゃジャンケンして勝った方な。」


龍二が無難な提案をした。いつの時代もジャンケンか。


「うーし、負けないよ!」

「……それは、こっちのセリフ。」


……意外とリリアンて熱いんだな。


「最初」

「っからー!!」

「待てコラ。」


思わず俺止めた。クルルの奴、典型的な反則しやがったよ。


「………私の勝ち。」

「ノオオオオオオオオオオ!!??」


しかも何故か知らないけどパーではなくチョキ出して結局リリアンの勝ち。お前頭パーだろ。


「…バカですね。」

「ああ、バカだな。」


……龍二はともかく、アルス、お前って思ったこと口にしてしまうタイプか?


「…では、私が…。」


とりあえずショック受けてるクルルは横に置いといて、リリアンは渡された杵を持つ。


「まずこねる。」

「【コクリ】」


龍二の指導の下、丁寧に杵の先を使って米を潰していく。


「一通りこねたら、後はつく。」

「【コクリ】」


そして、龍二は臼の隣に膝をつく。


「? ……何してるの?」

「ん? ああ、餅が臼に付かないように時々ひっくり返さないといけねえんだよ。」


傍らには、水が入ったボウルがあった。手水だな。


つか龍二、お前手水無しでやってたろうが。あ、もしかして左手で音速を超える速さでひっくり返してた? いや予想だよ? 予想。でも何かこいつならやりかねん。


「……でも、危ない……。」

「心配せんでも大丈夫だっての。ほら、早くつかんと餅冷めるぞ。」

「……。」


まぁ、正直よほどのことがない限り龍二に杵が当たることはないだろうな。つか杵当たってくらいであいつは死なん。


「…じゃあ、いきます。」

「あいよ。」

「……ん。」

【ダン!】


龍二ほどじゃないけど、かなり強い力が餅に打ち付けられる。


「よ。」


で、振り上げた瞬間龍二が手に水を付けて餅をひっくり返し、パンと叩く。


「ん。」

【ダン!】

「よ。」

【パン!】

「ん。」

【ダン!】

「よ。」

【パン!】

「ん。」

【ダン!】

「よ。」

【パン!】



…………こいつら、意気ピッタシな上に速ぇ………リリアンも初心者とは思えないくらい寸分違わずついてるし、龍二もリリアンのタイミングをうまいこと計って餅をひっくり返して叩いてるし。


「…ところで、龍二。」

【ダン!】

「ん?」

【パン!】

「今度暇?」

【ダン!】

「何で?」

【パン!】

「……何でもない。」

【ダン!】

「あ、そ。」

【パン!】


ゆとりがあるからか何か会話しちゃってるし。


「うし、出来た。」


出来上がったらしく、龍二が餅をパンと叩いて終了。


「リリアン、初めてのわりには手際よかったぞ。」

「…………ありがとう………。」


思っきし顔逸らしてるからわかりにくいけど、あれ絶対真っ赤だな。


「うし、じゃ次。」


で、さっさとテーブル持ってって次のもち米を臼に入れた龍二。もち米どんだけあんの?


「はーい! 私私ー!」

「はいはいクルルな。はしゃぐな。」


元気一杯に返事したのはクルル。


「はい杵。」

「うん!」


で、龍二は杵をクルルに渡s


「! うわ、うあわわわわああああああ……!?」


……ヤバイ、何か持った瞬間重みでフラつき始めたぞ。


「わひゃああああ!?」


で、耐え切れず思いっきり杵を振り下ろした。



「うごう!?」



恭田の頭に。



「ぎゃああああああああ!!!! 血が! 出血がああああああ!!??」

「はわわわわ……ど、どうしようリュウくん!?」

「ホント、どうすんだコレ…。」


…珍しく龍二が恭田の心配してる。


「杵に血が付いちまった。」


ってんなわきゃねえよな。


「涼子さん、代わりの杵ある?」

「ええ、倉庫に。」

「ちょっと持ってくるわ。」


…………これはツッコむなってことだな。そういうことにしておこう。





「ん〜……重いよ〜……。」

「お前普段剣振り回してんだからそんくらい軽いだろ。」

「だって、私の剣は魔力を媒介として」

「んな豆知識いらんわい。」


新しい杵をフラつきながら持つクルルを見て、俺は魔王ってひょっとしたら誰でもなれんじゃねえの? って思い始めてきた。


「しゃあねぇ……おい、誰か一緒に持ってやれ。」

「あ、じゃあボクが……。」

「よし任せた。」


おずおずと手を挙げたアルスを即任命。お前正直誰でもいいって思ってるだろ龍二。


「二人一緒に杵持てよ。」

「は、はい。」

「よいしょっと。」


左右挟む形で杵を持つ二人。ほら、幼稚園の餅つき大会でよく見る共同作業みたいなもん。いやあいつら幼稚園児じゃないけどな。


「いくよアルス?」

「あ、うん…。」

「……せーの!!」


クルルの掛け声を合図に二人一緒に杵を持ち上げて、



「「うううあああああああああ!?」」



勢い強すぎて倒れた。




【ガッシャーーーン!】




「あ、割れた。」


って、ノオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!??? 窓があああああああああ!!!???


「うわわわわ!? ど、どうしましょう!?」

「り、リュウくんどうしよう!?」

「どうもしねえ。続きしよう続き。」

「どうもしろおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「まぁまぁ雅。落ち着きなさい。」

「姉さんも何か言えよ!? 何で落ち着いてんだよ!?」


我が家の窓だっつーのに!? 修理代バカになんねぇぞ!?


「形ある物はいつか壊れる物よ?」

「…………。」


んな慈愛溢れる笑顔で言われたら何も言えないだろうが。


「ほら、今度は気をつけろよ。」

「「はーい。」」


…とりあえず杵を持ち直して、今度は慎重に持ち上げていく二人。


「……いっせーのー、」

「で!!」


そして勢いよく振り下ろす!



【スッポーン】



あ、杵の先抜けた。



「アッパラパーーーーーーー!!??」



あ、今度は当たるまいと離れて傍観していた恭田の股間に杵の先がっていったそぉぉぉぉぉ……。



「えええ!? な、何でですか!?」

「あら、ごめんなさい。それ修理中だったわ。」

「早く言えよな涼子さん。相変わらずドジだな。」

「テヘ♪ ゴメーン♪」

「オゥ、ノォォォォォォォ…………。」


……何かもういろいろとヤバイ恭田が地面をのたうちまわってる中、何か和やか〜な雰囲気が……なんで?


「しょうがない。杵修理してから続きだ続き。」


………もうほっておこう。





「うし、これで全部だな。」


大方つき終わり、龍二は最後の餅をテーブルに置く。


「ほい皆ご苦労さん。」

「け、結構しんどかったです…。」

「楽しかったー!」

「……よかった……。」


一番満喫してたのは、龍二と異世界女性組だった。いや俺らもそれなりに楽しんでたんだけどな? 一名除いて。


「皆ー。お雑煮できたわよー。」

「焼餅もあるわよー。」

「おお、待ってましたってか。」


テーブルの上の鍋と餅が乗っている七輪の前で、エプロン姿が映えるエリザさんと花鈴と香苗が呼んだんで全員集合。


「はい龍二くん。」

「サンキュ。いただくわ。」


餅とカツオの香りが漂う出汁を注ぎ入れた我が家の黒いお椀と、香ばしい香り漂う焼餅が乗った皿を順番に配っていくエリザさん。俺ももらってテーブルに座ってさて、いただきますか。


「……おぉ、うまい。」

「おいしー!」

「…おいしいですね、これ。」

「ふむ、さすがは和風大好き主婦のエリザさんだ。ちょうどいい味付け。」

「やだもう、龍二くんったら。おかわりまだあるわよ?」

「あ、私もらいます。」

「スティルはえぇな。」

「和食気に入ったんでしょアンタ。」

「……おいし……。」

「うまい! カルマも食べてみてよ!」

「食ってるっつーの。それよりお前、さっき口殴ったけどどうなんだよ?」

「え、治ったよ?」

「……もうちょい強く殴っておくべきだったか。」


……ホント、寒い冬にこの暖かい雑煮はありがてぇ……餅を口に咥えて伸ばしながら、しみじみそう思った。



こうして、皆で雑煮と焼餅を楽しんでから餅つき大会は幕を閉じた。








その晩、我が家の晩ごはんは餅だった(龍二の野郎が作り過ぎたんだよチクショー)。


餅つき……そう、餅つき!! 小さい頃、爺ちゃんの家の前で、近所の人たちを集めて餅つき大会をしたものです。臼に入った餅を父と一緒に杵を持ってペッタンペッタンとついたあの感覚……そして出来たての餅に醤油をつけたり雑煮にしたり、硬くなってからオーブントースターで焼餅にしたり……懐かしいなぁ。


とゆーわけで、餅つきの話でした。チャンチャン。

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