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第百五十一の話 仲良くクリスマスツリー

今日はクリスマス・イヴ。なので、クリスマスのお話で。

〜龍二視点〜



「リュウくーん。」

「あ?」


お昼後、テレビを見ていたクルルが皿洗いをしている俺を呼んだ。


「あのね、さっきテレビでやってたんだけど。」

「そうか。」

「………………まだ何も言ってないよ?」

「今忙しいから後で。」

「むー、今お話できてるんだから忙しくな」

「ん?」

「ごめんなさい。」


キラリーンと包丁を向けると即謝罪。素直素直。


………………うし。


「終わった。」


キュっと水を止め、掛けてあるタオルで手を拭く。


「でねでねリュウくん!」

「あーはいはい何だ。」


キッチンから出て早速質問攻め。俺、やれやれって言った感じ。


「あのね、さっきテレビで言ってたんだけど。」

「おう。」



「“くるすみす”ってなぁに?」



……………………。


「……ん?」

「だからぁ、“くるすみす”。人?」


外国人っぽいね。


「…………ふむ。」


…………。



「アルス?」

「はい?」


ふとテレビを座って見ているアルスを呼んでみた。


「今テレビで何の話題してんだ?」

「え? えっと……。」


テレビを見て、画面に映っている文字を読むアルス。


「……“クリスマス”です。」

「あーそれ! それについて聞きたか」

「えーい。」

「ぴゆ!!」


かるーくチョップ。一瞬だけどいい感じにクルルの頭が凹んだ。


「いったーい!!」

「うん痛くした。で? クリスマスが何だ。」


クルルの訴えは華麗にスルーした。


「むぅ……でね、クリスマスってなぁに?」

「んあ? ……………あぁ、なるほどな。もうちょいでクリスマスか。」


カレンダーを見てしみじみ思う。そういやこいつら、クリスマス初めてか。うん、疑問に持つことはよいことだし、ここは正直に答えてやろうか。


「クリスマスってのはな、十二月二十五日に生まれたイエス・キリストの誕生日で、皆でそれ祝うんよ。」

「? 知らない人の誕生日なのに?」

「いろいろ偉いんだよキリストは。」


何か信者に怒られそうだが、別にいいや。


「んで、聖夜ってことでクリスマスツリーっつーのを飾ってとりあえずメシ食って寝る。これがクリスマス。因みにその前日二十四日はクリスマス・イヴって呼ばれてる。」

「ふ〜ん。」


リアクション薄。まぁ説明が説明だからな。


「そんで、クリスマスにはサンタクロースってのがいてな。」

「サタンクロース? 誰それ悪魔?」

「聖なる夜に悪魔来てどうすんよ。サンタだサンタ。サンタは真夜中に子供達のプレゼントをツリーの下に置いたり靴下の中に突っ込んだりする人。」


いや人かどうか知らんがな。


「へー……いい人だねサタンさん!」

「そうだな。」


あえてツッコまない。


「……サンタって、今テレビに出てる人のこと?」


フィフィがテレビを指差す。そこには何かやたらミニスカで露出度高い赤い服きた姉ちゃんがいた。アホかと思った。


「いやあれ論外。一般的に知られてるのは大きな体に白い髭をたくわえて赤い服を着込んだじいさんのこと。」

「え、そうなんですか?」


アルスがマジで驚いた。そりゃ初めて見たサンタが防寒面積少ない服着た姉ちゃんだったら引くわな。


「私もプレゼント貰えるかなー?」


何かクルルがワクワクといった感じに呟いた。


「……多分無理じゃね?」

「!? な、何で!?」


マジメにショック受けた。


「サンタはな、いい子にしかプレゼントあげねぇんだよ。」


……そういや、そういうので比較するサンタって結構ひどいな。


「……いい子?」


何かクルルがキョトンとした。


「あー、つまりあれだ。優しい奴とか家の手伝いとかしてくれる奴はいい子なんじゃねぇの? 手伝いもろくにしない奴にはサンタなんて来ねえよ。」


適当なことを何気なーく言ってみた。



「……優しい子……手伝い……。」

「いい子……。」



…………クルルアルスが小声で何かブツブツ言うとる。


「……まぁいいや。そんじゃ俺らもそろそろクリスマスツリー出すとするか。」

「え? あるんですか?」

「ああ、古いけどな。」


ガキの頃から家にあったツリーだが、めっさ綺麗なのは確かだ。


「とりあえず、手伝ってくれ。」

「はい!!」

「は、はい!」

「オッケー。」


アルスとクルルが一番元気よく返事した。





「えーっと……あった。」


物置の中を漁り、中から長いダンボールを引っ張り出した。こん中にツリーと飾りが入っている。


「リュウくん、手伝うよ!」

「いらねえ。これくらいは一人で運べる。」

「え〜!?」

「何故ゆえそこで不満顔になる。」


ヒョイと箱を担ぎ上げて膨れっ面になったクルルを放置し、リビングへ戻った。


「よいせ。」


ドンと箱をテレビの横に置いた。ここが毎年の定位置になっとる。


「んじゃクルルかアルスどっちでもいいから箱の方持っててくれ。俺ツリー引っ張り出すから。」

「「はい!」」


……何かやけに元気がいいな。


「うし……………………なぁお前ら。」

「「?」」

「箱持つのは一人でいいんだが。」


確かに二人一緒に箱持ったら引っ張り出し易いが、正直な話そこまで力入れなくてもいいしこれ。


「……。」

「……。」


…しばし無言。


「……じゃアルス。私が引っ張るからどいてて。」

「いいえ、ボクがやります。」

「何で?」

「あなただと不安だからです。」

「それどういう意味?」

「そのまんまの意味です。」

「大体何が不安なの!?」

「何かいろいろ壊しそうなんですあなたは!!」

「そんなことないもん!!」

「今までのことから考えてみたらそんなことあります!!」

「何さ!?」

「やりますかぁ!?」

るぞ?」

「「すいません。」」


キンキラキンに鋭く光る鉈向けたら即謝罪。


「つーかジャンケンして決めろ。これくらいのことで時間潰すな。」

「それが妥当でしょ?」

「「…はーい。」」


ったく。


「じゃ、最初は」

「パー!!」

「いきなりズル!? ちょ、それないでしょう!?」

「勝ちは勝ちだもーん♪」

「勝ちじゃない! ズルい!! もっかい!!」

「え〜?」

「もっかい!!!」

「………ちぇー。んじゃ、最初はグー。」

「じゃんけん、ポン!!!!」


「……(パー)。」

「……(チョキ)。」


「…ぇぅ。」

「よっし、ボクの勝ち。」

「……も、もっかい!!」

「だ、ダメですよ! 勝ちは勝ちです!」

「勝ちじゃない! ズルい!! もっかい!!」

「それボクがさっき言ってたじゃないですか!? 第一ズルじゃないです!!」

「ズルい!! ズルいったらズルいーーー!!!」

「ズルくなーーーい!!!」

「ねぇリュウくん! アルスズルいよね!?」

「ズルくないですよねリュウジさん!?」

「テメェらがバカやってる間にセッティング終わったわボケ。」

「「………………。」」


役立たずどもが言い争ってる間に一人ツリーのセッティングを終えてた俺。手伝ってもらおうと思ってた俺が愚かだったと気付いた。今さら。


「「………………。」」

「んな捨てられた子犬みたいな顔すんなダブルで。」


ったっくしょーがねぇ奴らだなこいつら。いやいつものことだけど。


「……ほら、飾りつけしてろ。今度は喧嘩すんなよ。」

「「……は〜い。」」


ツリーの飾りが入った箱を差し出し、拗ねた顔のまま受け取る二人。飾りつけで喧嘩することはない……こともないかもしれない。


……何やかんやで俺、結構甘いかもな。


「じゃ勝手にしといてくれ。俺ちょいと部屋行ってくらぁ。」


とりあえず後は二人に任せて二階へ。何だか不安だが。




「やれやれ。何があいつらを動かしてんだか。」


部屋の回転イスにどっかと座ってそう一人ごちた。


『いいではないか。その分貴様の負担も減る。』

「逆に増えてるぞ。」


壁に立てかけたエルが若干愉快そうに言う。へし折ったろかこのクソ剣。


「大体アンタの場合あんなのどうってことないでしょ?」

「そりゃそうだがメンドイんだよ。」


ちゃっかり付いてきて俺の肩に座っているフィフィ。



「……まぁ、さっきのリュウジの説明聞いたらねぇ。」

「? どゆこった?」


俺の説明って……クリスマスのことか?


「ほら、何だっけ……え〜っと、サンマ?」

「魚の方かお笑い芸人の方かどっちだ?」

『どっちでもないだろう。』


エル、ナイスツッコミ。


「つかサンマじゃなくてサンタな。」

「あ、そうそうそれ。さっきの説明ん時アンタが言った言葉。」

「? ……………………あ。」


該当するワードを一件発見。



「…いい子じゃないとプレゼント貰えないって話か?」

「そ。」



……あだからか。だからあんな手伝いたいと……なるほどねえ。


「……だからって取り合いすることねぇんじゃね?」

「……同感ね。」

『仕方ないだろう。あの二人はいろんなところで無知だからな。』

「エル、今何気に毒吐いたわね。」


クリスマス初心者だからなぁあいつら。


「……ま、まぁその分手伝ってくれるからいいじゃないの。」

「だぁら逆効果だっつーの……ふぅ。」


……全然信用してないわけじゃないが、あの二人、何かあったら口喧嘩おっ始めるからな。


「……そろそろ飾りつけ終わったかもな。下りてみっか。」


よっこらせっと立ち上がり、様子を見に部屋を出る。仲良く飾りつけしてっかな?










「ここはやっぱりアルスからどうぞ?」

「いえいえ、魔王からどうぞ。」

「いやいや、最後はアルスでしょ。」

「ううん、魔王でしょ。」

「いやいやいや、アルスが。」

「いえいえいえ、魔王が。」

「いやいやいやいやアルスが。」

「いえいえいえいえ魔王が。」



……………………。


「……何してんのあれ?」

『うむ、おそらく優しくていい子というのを演じたいがために譲り合い、また譲り合って譲り合って結局何の進展もしないままと見える。』

「ナイス憶測だエル。それ多分っつーか百パー正解。」


ツリーの飾りつけ(我が家のはプラスチックのリンゴとリボン付の小さなベル、そして周りには金色の小さな球がつながった紐と小さな電球が散りばめられたコードが巻きつけられたシンプルなデザイン)の最後、天辺に付ける大きな星を付けるのはどっちかって話だろうな。ツリーの前で手にした星をアルスに押し付けたり、クルルに押し付けたり。



「いやいやいやいやいやアルスが。」

「いえいえいえいえいえ魔王が。」

「アルスが。」

「魔王が。」

「アルス。」

「魔王。」

「アルス!」

「魔王!」

「アルス!!」

「魔王!!」

「ア・ル・ス!!!」

「ま・お・う!!!」

「むむむむぅぅぅ!」

「ううううぅぅぅ!」



……飾りつけ、途中まではうまくいってたのに最後の最後に喧嘩かい。



「こうなったら決着つけてやるにゃーーー!!!」

「望むところです!!!」


そう言って互いに魔剣、聖剣を召喚して構え、今まさに部屋をしっちゃかめっちゃかにしようとしたのですかさず接近、一瞬で二人の剣を取り上げて気付く間もなく柄頭で二人の脳天を殴った。


「「うきゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………。」」

「手加減しただけありがたく思えバカ娘コンビが。」


頭を抑えてうずくまってる二人に向かってポイと剣を投げ捨てた。ちょっとでも大丈夫だろうと思ってた俺のバカ。


「……はぁ、しょうがねぇ奴ら。」


呆れた思わずため息出た。








「よし、点けるぞー。」

「早く早くー!」

「…緊張します。」

「……何この緊張感?」

『さぁな。』


星も取り付け(俺の提案で二人で星持って一緒に付けた)、三人と一本を少し離れた場所に立たせ、俺はツリーの電球のスイッチを手に持った。


「……ほいスタート。」



カチっとONにすると、電球がチカチカと輝き始め、まるでツリーが光ってるように幻想的な光景を作り出した。



「ほわぁ〜…きれい。」

「わぁ…。」

「へ〜。」

『ほぉ。』


生まれて初めてクリスマスツリーを見た三人と一本はその光景に目を奪われてしばし見惚れていた。特にアルスとクルルがやけに目がキラキラと輝いていた。


「どだ。クリスマスツリー。」

「すごーい! 何かあれだね! 魔法みたいだね!」

「普段魔法使ってるお前が言うのも変だが、まぁそうだな。」


ツリーから離れて、俺もその出来栄えを眺める。



若干飾りに偏りがあるが、別にそんなの気にならない程度。電球もうまい具合に巻きつけれていた。



うん、文句なし。


「うむ、よう頑張ったなお前ら。」

「えへへ。」

「……はい。」


褒めると、照れて頭をかくクルルと照れ隠しに顔を伏せるアルス。なんだかんだでこいつら仲いいな。


「ねね! これでサタンさん来てくれるかな?」

「そうだなくるかもな。」

「え、ちょっと何で棒読みなんですか?」

「気ニシナーイ。」


気にします! と叫んでるアルスは無視した。



…………つか、今思い出したが毎年ツリー出してセッティングから飾りつけまで全部俺がやってたな…………。



……………………。



「……フッ。」

「? リュウくん、今笑った?」

「笑った。」

「うわぁアッサリしてるわね。」

『リュウジ、一人で笑うと怪しまれるぞ。』

「踏み潰し。」

『ぐぇ。』

「今のは自業自得ですよエル…。」





……今年のクリスマスは、去年より楽しめそうだな。


とゆーわけで、クリスマスのお話。皆さん、小さい頃はサンタがいると思ってた人も多いでしょう。



俺なんて、心のどこかで多分いると思ってます。いい大人が。ははは、笑うがいい!!!←開き直り



というわけで、明日はクリスマス。できるだけ楽しみましょう。


では、最後に……メリークリスマース♪

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