第百四十五の話 包丁交代ならず
最近ちょっと訳あって休んでました。あとがきで書いてますので。
〜エル視点〜
…………。
「……ふむ、刃こぼれ無し、と。」
…………。
「サビも……ねぇな。うん、以上無しだぞエル。」
『ん、そうか。』
今宵は私の手入れチェックだ。月に何度か、リュウジが磨いたり点検をしたりする。
人間で言うところの、いわゆる身体検査……まぁ、磨くのは風呂に入っているようなものだ。
……言っておくが、人間だった頃はちゃんと風呂に入っていたのだからな。一応細補足しておく。
「んにしても、こないだは大活躍だったなお前。」
『ああ、まさかあんな化け物どもが出るとは思わなかったからな。』
この町は平和そのものなため、普段家では包丁として扱われている私だが、この間のような騒ぎがあれば私は立派な武器として活躍することができる。まぁ、来られたら被害が出る一方、私の出番が増えるからよいが……正直複雑だ。
「ま、これからもああいうのが出てきたらいっちょまた頼むわ包丁。」
『ストップ。私の聞き間違いであればよいのだが、さりげなく包丁と言わなかったか?』
「気のせい気のせい。」
「…………そうか。」
何かすんごい釈然としないのは何故だ?
「リュウジさぁん、出ましたよ〜。」
「ん?おぉ、そうか。」
ピンクのパジャマ姿で風呂場から出てきたアルス。風呂上りだから頬がほんのり赤くて、何気に色気が出ている……普通の男が見たら見惚れそうだな。
「おーい、次クルル入れー。」
「はーい♪」
リュウジは普通の男じゃないから論外だな、うん。
「ふぅ……気持ちよかったぁ。」
気分よく台所へと向かうアルス。あれだな、風呂上りのココアを一杯……後でちゃんと歯を磨くように。
だが…。
「あ、わりぃアルス。ココア切らしてたんだ。」
「!えぇ〜!?」
……そこまででかい声出す程驚くか?
「…じゃ今日はココア無しですか……はぁ。」
「毎日飲むからだっつーの……まぁ、代わりといっちゃ何だが。」
「?何かあるんですか?」
ココアに代わる物…?
「んむ、今日何となく買ってきたコーラがある。それ飲んでもいいぞ?」
「……………へ?コーラ?」
「そ。」
「………………。」
目が点になったアルス。そりゃまぁ、確かにコーラという飲み物はココアと同じ黒い飲み物だが……味はかなり違うだろ。それに色彩も全然違うし。
……だが、アルスのあの表情………何故か恐怖におののいているように見えるな……。
…………。
『…読心術…。』
少し、アルスの思考を覗いてみるか…。
『コーラ → 飲む → 骨溶ける → 体も溶ける → どこかの誰かさんの母親の如くドロドロになる → ゲヘヘ♪ → メルヘン!』
…………………。
「……すいません、今日は我慢します。」
「そうか?コーラ結構うまいぞ?」
「いえ遠慮します。」
「そうか。」
物凄い速さで返答したアルスは、顔が青いまま和室へとフラフラ入っていった。
……いや、大体溶けるって……そりゃ確かに歯を溶かすとは聞くが、体ドロドロになるまで溶けるわけがないだろう。とゆーより最後の三つは何なんだ………ゲヘヘとかメルヘンとかって………………いや、考えるのはやめよう。危険だからな色々。まぁ首が飛ぶのは作者だからな。
【キィン】
「おし、エル終わり。」
手入れも終わり、鞘に収められた私はテーブルの上に置かれた。ついでにいつもよりピカピカだ。
「じゃ、次はっと。」
そう言って足元から拾い上げたのは…。
『あぁ、それか……ホント、不思議な形をしているな。』
「この日本独特の製法で作られた剣だからな、日本刀ってのは。」
ニホントウ、とな……私の世界にはこのような形をした剣というのはない。まぁ片刃の剣ならあるにはあるが、扱うにはコツがいるらしく、クセが強い武器ばかりだった為にもっぱら両刃の剣を使っている騎士がほとんどだった……
しかし、この剣…『龍刃』だったか?この剣は切っ先が鋭く、切る以外にも突くこともできそうだ……うむ、この世界の武器は実に素晴らしいな。
「………うん、長い間放置してたにも関わらず汚れ一つねぇな。」
…………。
『……リュウジよ。』
「?んあ?」
ただ、一つだけ疑問に思うところがある。
『貴様、その剣をどうしてあの寺とかいう場所に隠していたのだ?』
「ん?ああ、置く場所なかったからあそこに。」
そんな理由かい。
『…………。』
「で?何でまたそんなこと聞くよ?」
『あ、いや……何であえてあんな所に隠したのか気になっただけだ。』
「そうか。」
『……それにしても、その剣……ただの剣ではないな。』
「ほぉ?何でそう思うよ?」
『刀身から放たれている力が物語っておるわ。』
この龍刃……魔力とも違う不思議な力が溢れ出ている。おそらくは私と互角か……悔しいが、それ以上か。ここまでの力を持った剣は見たことない。
まさかと思うが、寺に隠していた理由はこの力なのではないかと思う……いや、深く考えすぎかもしれんがな。
「へぇ、わかるのかお前。さすが包丁。」
『……もぉ私はツッコまんぞ。』
「さいでっか。」
いい加減包丁から離れろ。
「…まぁ、確かにこいつは単なる刀じゃねぇな。詳細は知らんけど。」
『古くから伝わる物なのか?』
「そ。大昔にご先祖がこれ手に入れて子々孫々まで伝えてきたんだと。まぁいわくつきの刀……とも呼ばれたこともあるんだってさ。」
『ほぉ…。』
「まぁ使えればいわくつきだろうが何だろうがいいけどな。つーかこれとお前以外の剣、俺使えねえし。」
『何故だ?』
「振ったら簡単に壊れるから。」
バカ力ってこういう時には不便だな……。
それにしても、いわくつき、か…………それは興味深いな。
「あ、ついでに言うとこれ、お前と同じように意思あるぞ?」
『……え?いや、でも一言も喋っておらんではないかそれ。』
「確かに喋りはしねぇな。まぁ意思があるってのはジジイから聞いた話だからよくわからんが。」
意思がある……とゆーことは、この中に誰かの魂が封じ込められているのか?
………読心術も使えんとなると………確実性は無いが、ありえなくもない、といったところか。ふぅむ……つくづく謎な剣だ。
「……考えてみりゃ喋らない分エルより口やかましくなくていいかもしれんな。」
『何か言ったか。』
「べーつにー?」
聞こえた。確実に聞こえた。ある意味失礼なこと言ってた。
「ま、とりあえずこれからは俺、二刀流だな。」
『貴様、そこまで剣の才があるのか?』
「あれ?俺って剣の腕無いか?」
『…………すまん、私が今まで会った中で一番剣の才能がある。とゆーかありすぎて困る。』
「どゆこっちゃ。」
こないだの戦いで十分過ぎる程わかった。まったく、どこで剣を習ったのか知らんが……。
あ、そうだ。
『……ならば、私の代わりにそれを包丁にすればよいではないか。切れ味も一級物なのだろう?』
そうなれば、私も包丁生活ともおさらばできr
「ん?別に包丁交代する気ねぇぞ?」
………は?
『……………つまり?』
「これからもお前が包丁。」
『何でやねん!?』
「おお、関西弁。」
いやカンサイベンとかよく知らんがどうでもいい!!
『何故だ!?包丁だって新しい方がいいだろう!』
「いや、使い慣れてる奴のが手に馴染んで安全だし、第一周囲の状況とか教えてくれるまさに万能包丁みたいなもんだから鍋吹かす心配ないし。」
『そんな理由か!?ならもう私は喋らんぞ!!』
「そうか、そんな役立たずには単なる鉄くずになって粗大ゴミと化すか質屋へGOだな。」
『すんませんでした!!』
「わかりゃいいんよ。」
お、おのれ………喋れない剣のことが生まれて初めて羨ましいと思ったぞ……。
「………うし、終わり。」
【カチャン】
リュウジは磨き終えた龍刃を私の上に置いた……ってコラ、人の上に置くな。いや人じゃないが。
「じゃそろそろクルル上がる頃だし、俺風呂入ってくらぁ。」
『オイこらちょっと待て。私はこのまま放置か。』
「いいじゃんよ。今のうちに仲良くなっとけ。」
『おい!?』
止める間もなく、リュウジはさっさとリビングから出ていった。あいつめ……。
『……。』
それにしても………龍刃、か…………ホントにこれに意思があるなら、この世界には魔力とは違った別の神秘的な力が存在している、ということになるな。
実に、興味深い世界だ……まったく、転送されて運が悪いのやら良いのやら……。
まぁ、とりあえず今考えるべきことは一つだけだな。
『…………………………………………………………………………。』
喋らない剣とどう仲良くしろと?
どーもー先日親友とガチで殴り合いをして口からダラーっと血が流れ出たコロコロです。写真撮っておきたいくらい流れ出ました。唇腫れあがりました♪
そんで今日のネタ……めろん先生、ごめんなすぁああああああああああい!!!!!!『学校日和2』をどうぞよろしくお願いします!!………宣伝して後で腹切ります。
さて、今度から龍二は二刀流……かも?まぁ剣を抜く機会はそんなないでしょうけど。
では、これにて。切腹うううううう!!!……ガホ。