第百四十の話 龍の牙2
〜龍二視点〜
「龍二!」
「オッスー雅る。」
「“る”いらねぇ。」
こんな状況でもツッコミは忘れねえんだな。
ともかく、商店街に辿り着いた時にすでに雅達のチームは到着していて、全員合流できた。
……ここ、普段なら買い物とかで家族や主婦で賑わってるってーのに……静かすぎんのも何か変な気がすんな……まぁ時間的に今は夜だけど。空が真っ赤になってて昼も夜もわかんねぇし。
「来たか、荒木。」
「っておりょ?日暮も来てたのか。」
雅達のチームの中で一際目立つ白髪頭がいた。ま、電話ですでに知らされていたから別段驚きゃしなかったが。
「うむ。このような一大事に、ワシが力なき一般人と共に隠れるわけがなかろう。」
それは体育館に避難した人達に失礼ではなくて?
「っとと、そんなことはどうでもよい。」
「あ、そうそう。俺に話があるって?」
大体、こいつの口から出るのは重要な話ばっかりだし。
「うむ……アルスのことじゃ。」
な?ビンゴ。
「ま、マジで!?」
「どこにいるの!?」
「落ち着けクルル、フィフィ。話を聞いてからだ。」
正直なところ、俺もさっさと話せコンチクショウと頭の中で思っちゃってたりしている。にしても、珠達でさえ情報掴めなかったってのにやるな、日暮。
「……ワシが屋根の上を経由しながら移動しておったら、あ奴の姿がチラリと見えたような気がしたんじゃ。」
「ほぉほぉ……で?どの方角へ行ったんだ?」
「…………。」
っておい、そこでダンマりか。張っ倒すぞ。
「……あ奴は……。」
「おう。」
「裏山の方角へ向かった。」
………………。
「………え?そんだけ?」
「……。」
……んだよ、場所わかる上にここからだと結構近いじゃん。何をダンマリする必要がある。
「…お主、わからぬか?」
「んあ?何が?」
「……。」
………あ、ちょっと待てよ?………………………………
な〜るへそ、そゆことか。
「ね、ねぇどういう意味?」
「わかりやすく説明しなさいよ。」
花鈴とフィフィが説明を促す。
「……それは私から言いましょう。」
お、スティル説明してくれんの?じゃ任せる。
「この空一面を覆った赤い雲……発生源はどこか、わかりますか?」
「発生源?これってアランが作り出したんじゃないの?」
「そうです。つまり、アランがいる場所から発生してます。」
「…………え、てことはまさか…。」
フィフィ、お気づきの様子。
「そうです。
赤い雲は裏山から発生しています。」
さっきから大気中から氣に似てるけど限りなく近い、でも氣とは別格の変な力が肌を刺すように感じられる。フィフィ達は魔力を追って探知できるが、氣を追って探知することは不可能。よって、こいつらは裏山から発生する魔力を感じることができなかった……かと言って、氣に似てるけど違うこの力の根源までは、俺でさえ感知できなかった。よって場所はわからず……こんなもんかね?勘の鋭い奴なら、魔力とかそういうのには反応するもんなんだが……特殊な力って奴か。
とりあえずわかったのは、、発生源であるアランは裏山にいる……で、裏山へ向かったアルスも、当然そこにいる。
となれば、二人がすでに接触してる可能性が高い……チッ、やっぱ遅すぎたか。
「……で、でも何でアルスが裏山にアランがいるって……。」
「……知らね。」
あいつも魔力しか探知できないハズなんだが、理由はサッパリわからん。だが、まぁどこにいるかはわかった。
後は…………。
「……なぁ、ちょっと待ってくれ。裏山にいるってのはわかったけど、具体的な位置がわかんねぇぞ?」
「…まぁ、裏山も広いからの。」
あ、確かにあそこは木々が生い茂ってっからなぁ。
「頂上じゃないの?」
「あ、それあり得そう!雲発生させるのにちょうどいいし!」
…………一理あるが、何か引っ掛かる。
「いや……違うのぉ。」
「へ?」
って俺が否定する前に日暮が否定しやがった。
「確かに頂上からだと雲を発生させるのにうってつけじゃが、あそこからは何の力も感じることができん。」
「何でそんなのわかるの?」
「この大気中に流れる力は、妖力に瓜二つじゃ。じゃから感じることができる。」
あぁ、氣には近いけどまんま妖力……のような魔力、てか?ああややこし。
「で、じゃ。ともかく、ワシは裏山へ行って様子を見てきたんじゃよ。」
「それはよ言えや。」
「ものには順序があるんじゃ……ともかく、偵察がてら見てきたんじゃが、案の定周辺には妖物どもがウヨウヨとおったわい。」
ふむ……。
「戦わなかったのか?」
「あの数はワシでさえも骨が折れるからのぉ。それでお主に協力を求めようとしたんじゃ。」
「なるへそ……で、肝心の場所特定はできたのか?」
「ああ、バッチシじゃ。連中の目を掻い潜ってまで見てきたぞ。」
おー、それが聞きたかったんだい。
「おそらく、奴らの親玉…アラン、といったか?
そやつは、山の中腹にある廃墟の寺に居座っておる。」
!!
「?廃墟の……寺だと?」
「え?そんなのあったっけ?」
………雅と香苗が頭に?を浮かべてるが、俺は違う。
「……あそこ、か。」
「?リュウちゃん、知ってるの?」
「まぁな。あそこは俺の昼寝スポットの一つだ。」
「あ、そうか。この町の各箇所に昼寝スポットがあるって前言ってたわよね?」
「そゆこった花鈴。(……まぁ、それ以外にもあんだがな……)。」
あそこは山の中腹にあって、石段を上ると開けきった場所にでかいが古くてボロボロになった寺がある。昔、それなりに信拝者が訪れていたらしいが、何か訳あって捨てられ、今じゃ廃墟になっちまって、手入れもされずに草ボーボー状態になってる。鳥居もボロボロで、寺の名前が記入されてたはずの看板もすでに錆び錆びになっちまったから名前さえわからん。
まぁ、正直誰もそんな薄気味わりぃとこには行きたがらねぇよな?オカルトマニアの連中とか肝試し目的の連中は除いて。
でもな、そこから見える景色が最高なんだよね。よく屋根の上とかに寝そべってその景色眺めながら寝るんだよな。これは今んとこ俺しかしてない最高の娯楽。
ただ……な。あそこへ続く道ってのが全然わかんねぇのが、町の連中が知らない理由だ。
歩道のすぐ脇のとこにある上、完璧草木で覆い隠されてっからなそこへ続く道。おまけに小さい上にまるで獣道のように人の手が入っていない。さらには裏山の周辺で一番人通りが少ない場所にある。何で参道への道に手を加えなかったのかは知らんが、そんなこんなで寺には誰一人行く奴はいなかった。ネコでさえそこへ繋がる道がわからんほどかもしれん。珠達がいい例だ。
ま、俺が見つけたのも偶然中の偶然なんだがね……それに俺があそこを知ってる理由は、単なる昼寝スポットなだけじゃねえんだけど。
「ワシもあそこの寺には妖気の調査が目的で行ったことはある。が、しかし何も出なかったから、何も気に留めてなかったんじゃ……それがまさかこのような形になるとはな。」
「?どゆこと?」
「…その妖力とアランという奴が発しておる魔力が同調して、あのような雲を形作っておるんじゃよ。」
……ふむ、なるへそ。アランが根城にするのも無理ねぇわ。
「…そして、この雨。」
「ん?ああ、この雨か。何なんだこの雨?」
もう慣れちまったけど、変な感じがすんだよなこの雨。
「うむ。今はまだ何の害もない。」
「今は?」
つーことは、時間が経てば何かが起こるってわけだ……。
「………じゃここにいつまでも留まってるわけにゃいかねえな。」
「そ、そうだよ!早く行こうよ!」
クルル、焦る気持ちもわかるがな……………
「行くぞらあああああああああああ!!!!!」
俺だってめっちゃ行きたい気持ちで一杯一杯なんだよ。何で今まで普通に話せれたのかも不思議なくらいだ。
「ちょ!?リュウジ待ちなさいよ!?」
「速いっつーの!?」
「……全く、こ奴は。」
俺の足に付いてこれないのか、他の皆はグングン俺から引き離されていった。
「リュウくん、リュウくん!」
「おぉう、お前速いじゃねぇか。」
「だって飛んでるもん。」
横を見てみれば、地面から数センチほど離れたクルルが飛んでいた。
って浮遊術かよ。便利だなぁおい。それくれ。
「皆はどうすんの!?」
「後から来るって。」
それに日暮もいるし、何かと出くわしても何とかなっだろ。それにあいつもあそこには行ったことがあるらしいし、道にも困ることはないだろう。
「……ねぇ、リュウくん?」
「何だ。」
前にしか集中してないので、返事は簡略化した。
「あそこ……えっと、テラ、だっけ?あそこに他に何かあるの?」
「…何でそう思う?」
『貴様がカリンと話してる時にふと頭の中に思い浮かんだだろう。』
あ、そっか。エルもクルルも読心術使えたんだっけな。てか今頃喋るかエル。話参加しろよ。
「ん、まぁ……あるっちゃあるな。」
「?曖昧だね?」
「まぁな。それより今はアルスだろ?」
「う、うん。」
話を逸らした感が否めないが、仕方ない。今はそれどころじゃねぇしな。
………今の俺には必要ねぇと思って隠しておいたんだが………使うことになるかもしれんな、アレ。
〜アルス視点〜
「そぉれっと!!」
【ギィン!】
「くぅ!」
頭上から来る斬撃を受け、すぐさま一歩後ろへ下がる。
さっきから受けては避け、反撃しようとしても弾かれる……これの繰り返し。まったく隙がない太刀筋に、光のような剣速……
アラン……前戦った時よりも遥かに強くなってる……!
「この!」
「ひゃは!」
それでも、攻撃の手を休めるわけにはいかない…様々な型を駆使して、剣を縦横に振るった。
「はぁあああ!!」
【ガギィ!】
最後に渾身の大上段斬りをアランの脳天目掛けて仕掛けた……けど、剣を交差させることによって受け止められた。
「はは!やっぱ勇者なだけあって強いねぇアリス!一撃一撃に隙がないよ!」
「うるさい!!」
興奮気味に叫ぶアランを蹴り飛ばし、距離をとる。
「『光よ、矢となり貫け』!」
かざした左手から、光の矢が四本連なるように飛んでいく。
この魔法は防御不可能……いける!
「壁、展開。」
え?
【ガガガガ!】
「!?な……弾かれ、た……。」
「クケケケ…驚いたぁ?」
そんな……あんな言葉だけで、前方に見えない壁を張ることなんて不可能なはずなのに……。
「じゃ今度はこっちぃ♪
『黒槍』!!!!」
!?
「はああああ!!」
【ドオオオオオオオ!!!】
悪寒がし、咄嗟に屋根から飛び降りる。同時に、アランの頭上に召喚された巨大な漆黒の槍がボクがいた場所目掛けて飛んできて、爆発した。
【ズザァ!】
「ぐ、ぅ!」
爆風によって空中でバランスを崩したボクは、着地に失敗して顔から地面に激突してしまった。
「ありゃりゃぁ、無様だねぇアリス。」
崩壊した屋根からアランが飛び降りてきて、ボクの前に立つ。
「……クッ!」
何とか立ち上がって、剣を握りなおす……今のボクは、満身創痍の状態。擦り剥いた顔からは血が流れ出し、血が左目に入ってきて開かない。腕も疲労が溜まってきたのか、限界が近かった。
対し、アランは傷一つ付いていないどころか、全く息切れさえしていない……。
「ホント、無様だねぇ…。」
「……。」
…見下すかのような視線に、ボクは悔しくてただ睨み返すことしかできない。
「無様だ……。」
「……。」
…………?え?
「無様……。」
「…アラン?」
……様子が、おかしい……。
「無様……無様、無様、無様、無様、無様、無様、無様、無様、無様、ブザマ、ブザマ、ブザマ、ブザマ、ブザマ、ブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマブザマアブザマブザマブザマブザマブザブザブザブザブザブザブザブザブザブザブザ!!!!!!!!!!!!!」
な……ぁ……。
「アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!アァッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!」
「……アラ、ン……。」
……アランの、いきなりの狂ったかのような……いや、狂った笑い声は、辺りに響き渡った。それに呼応するかのように、空の赤い雲から雷鳴が轟いた。
「ホント!ホント無様だねぇアリス!!今の君はさああ!!!!」
【ゴォオオオオ!!】
!?
【ドォン!】
「ぐぎぃぃ……!!」
剣を構えたまま突っ込んできたアランの突進を剣で受ける。その衝撃は周囲の木々を薙ぎ倒し、建物を吹き飛ばす。
危うく、剣を取り落としそうになる……けれど、腕が痺れて、力が入らない……。
「今まで散々いい思いしてきたんだろうねぇ!?ええ、勇者様ぁ!?」
速く、力強い斬撃がボクに迫る…
「他の国とか回って、いろんな人から尊敬とか憧れの眼差し受けてさぁ!?」
何とか、反撃しないと……でないと……
「それに比べてその頃の僕はどうしてたと思う!?」
ぐぅ……腕、が……!
「毎日毎日、標的を僕にだけ定めて罵倒してくる村人達!」
あぁ……くぅぅ……!
「そして、いっつも僕とアンタを比べては格下だと罵る父親!」
クソ……もう、後が……
「心の拠り所さえ失い、毎日が孤独との戦い!」
はぁ……はぁ……くっ!
「誰も手を差し伸べしてさえくれない、この苦しみ!」
も……もう……
「何度も、何度も味わった劣等感と憎しみが……無様だと言われ続けた僕の気持ちが!!
チヤホヤされてきたお前にわかるかああああああああああああ!!!!!」
【ガギィイイン!!】
!?け、剣が……!
「おらぁ!!」
「カハッ……。」
【ドォ!】
怒涛の連撃に耐え切れず、剣を弾き飛ばされて終いに胸に上段蹴りを食らい、吹き飛ばされて大木に背中をぶつけた…。
「ぐ……ぁぁぁ……カハッ!」
激痛が体を襲って、視界が霞む……血が、口から吹き出る。
動きたい……でも…動けな、い……。
「はぁ、はぁ…………キヒ、キヒヒヒヒ……無様だ……無様だ……。」
かろうじて、アランの声を聞くことはできた……
もう……狂気に捕らわれていて、取り返しがつかなくなってる。
「あぁ………いつまでもこうして、君の無様な姿を眺めていたい……でも、もうそろそろ終わりだね。」
……くは!………体……動け……!
「あぁ、そんな動いちゃダメだよ。それにもう抵抗したって無駄なんだから。
もう少しで、何の力も持ってない愚かな町の人間達がいるあの世に逝くんだからね、君は。」
…………………
……今……何て……?
「な………ん……。」
「ああ、どういう意味か気になるの?そりゃまぁ、君は知らないから当然だね。
すでに、町には僕が作ったモンスターを放っているよ?それも、大群を♪」
な……!?
「……や………。」
「え?何?」
「……約束、が…違う!!!」
強引に体を立たせると、体中に尋常じゃない痛みが走り、悲鳴を上げる。
でも、そんなの…構ってられない!!!
「え?約束なら守ってるよ?今は僕は町には手を出さないよ?
でもモンスターは放さない、なんて言ってないよ?僕は手を出さないとは言ったけど♪」
…………。
「あれ?怒っちゃった?キヒヒ、そんな怒ってばっかだと、そのうち血管切れt「黙れ。」……へ?」
許せない。
「アラン……。」
ボクはもう、
「お前を……。」
絶対に、
「あの世に……。」
許すことは、
「送る!!!!!」
できない!!!!!!!!!
「うらあああああああああああああ!!!!!」
「ぐあ!?」
背後の木を蹴り飛ばし、その勢いを利用してアランの胴目掛けて突進し、吹き飛ばす。
「チィ!まだ動け」
「『氷よ、凍てつけ』!!」
【ビキビキビキ!】
体勢を立て直そうとしたアランを、氷漬けにして動きを封じこめた。
足だけじゃない。体の全てを氷漬けにして完全に動けなくした。
「アラン……!」
切っ先を地面に向け、ボクの中に流れる魔力を全て剣に注ぎこむ。
魔力がどんどん体から流れていくたびに、擦り剥いた箇所から血がさらに吹き出て鎧を濡らす……頭が痛い……体が、痛い……!
「お前は……ここで消えろ!!!」
剣を天空に向けて掲げる。魔力を溜め込んだ剣は、神々しく白く輝いていた。
……けど、ここで負けたら……町は破壊される。
ボクを勇者としてじゃなくて、ボクとして見てくれた皆の町……
だから………だから………!!
「『古の光、闇喰らいて全てを照らさん』」
負けない!!!
「『アシェン・グランダスト』!!!!」
〜龍二視点〜
【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!】
「おぉっとい。」
「ぴやあ!?」
『くっ!?』
寺へと続く道を見つけた瞬間、山の中腹からめちゃんこ眩しい光が発生し、同時に突風が吹き荒れて俺達に襲い掛かった。ついでに振動すげぇ。
咄嗟にクルルの襟を右手で引っ掴み、飛ばされないようにしておく。んでもって鞘に収まったエルがカタカタと腰で揺れるもんだから、左手で抑える。
俺はまぁ、これくらい大したことねぇから普通に踏ん張ってる。舐めたあかんで。
【ゴゴゴゴゴ……】
「……収まったな。」
「ぷえ〜…な、何〜?」
『すごい力だったな…何なんだ?』
振動も収まり、風も止んだんで、発生源である山の中腹を見てみる。
「………何あれ?」
『な…ぁ…。』
「ほほぉ?」
クルルとエルは絶句し、俺は感嘆の声を上げる。
山の中腹から、天に向かってバカでかい光の柱が伸びている……間近で見ると絶景だなこりゃ。
『何なのだ?…この、神々しいまでの光は……。』
「………この魔力は………。」
……いつか、見たことがあるな俺も。
アルスが、剣を巨大化させる時と同じような力をあの柱から感じる……。
……だが、その中に何か違和感を感じた……何だ?この感じ?ホントにあいつのか?
「…行くぞ。」
「う、うん。」
『急ぐぞ。』
まぁ、行って確認するっきゃ手はねぇわな。
〜アルス視点〜
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
光が収まってもなお、剣を掲げたまま荒い息をする……必死に、呼吸を整えた。
「……ぅ……はぁぁ……。」
……落ち着いた。
「…………。」
剣を下ろして、改めて周囲を見てみる。
ひどい有様になっていた…木々は薙ぎ倒され、開けた広場はボクを中心にクレーターができ、さらに広くなった。木造の建築物も、もう原型を留めていない…木っ端微塵になっていて、石造りの土台しかない。
………アランの気配も、消えていた。
「……………。」
…終わった。
「……終わったんだ……全部。」
アランが消えた今、この雲も、雨も、そのうち消える……モンスター達も再び砂に帰る。
リリアンも、きっと元に
「!う……。」
くぁ!………はぁ…はぁ……。
「……やっぱり……この技は……ツライね……。」
…あの技は、リスティル・オムの次に威力の高い全範囲技……魔力のほとんどを消費して出せる、最強の必殺技だった。
……体が、無事ですむはずない、か……。
「……かえ、らないと……。」
足を引きずりながらも、その場から離れる。
血が流れ、鎧も体もボロボロの状態…体力も底を尽きかけた今、途中で倒れるかもしれない。
でも帰らないと……皆、待ってる。
アハハ……帰ったら、リュウジさん怒ってるだろうなぁ……叩かれるかも……。
「バーカアーリス♪」
「……え?」
【ガッ!】
!!!???
「あ、ぐっ……!?」
な………何………?
【ボフ】
!?
「ふぅ、ひどいなぁもう。服汚れちゃったじゃないか。」
…………そ、そんな
「あ……らん……。」
いきなり地面が盛り上がって……そこから、無傷のアランが出てきた。
左腕を、醜く巨大化させた状態で。
「ヒャハハ、無理だよ無理♪たとえ君が最強の技使ったとこで僕には勝てない♪」
…不気味に脈打ち、血管が太くなった上にまるで筋肉の塊のような腕につかまれて、ボクの体は宙に浮かぶ……。
「な……ぜ……。」
「ん?何で効いてないのか?当然だよ。
今の君の力は、負の力しか感じないから♪」
え………。
「僕が許せない、僕を殺したい、僕が憎い……これらの感情、気持ちに支配された今の君は、見た目だけ神々しくて、中身は実は闇のように真っ暗な力しか出せないわけ。そんなんで負の力を使う僕に勝てるわけないじゃない?むしろパワーアップさせちゃってるよ?」
……そんな……。
「でも、おかげでこの雨をさらに強化できそうだよ。ありがとね、アリス。」
「…………何?」
「この雨はねぇ、僕の力を宿してるんだ。そうだねぇ……うん、ちょうど君のお友達のリリアンが死ぬ頃にね、
この世界の全生物の魂は消滅して、死滅する。」
!!??
「ようはあれだね。リリアンと同じ呪いがかかってるんだよ、この雨。でも世界中にまで雲広げるのに多少時間かかるし、それに力使っちゃったから雨の方にまで力が少ししか回らないんだよ。
でも君のおかげで、時間は大幅に短縮できたよ。ありがとね♪」
あ………あぁ………。
「それじゃあ、今僕の剣で楽にしてあげるよ。」
こんな……こんなのって……。
「それじゃあね?お人好しで、愚かで、弱虫な……
僕のお姉さん♪」
……リュウジ……さん……。
【ドス!】
胸に、焼けるような激痛が走った………。