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第百三十九の話 龍の牙1



〜アルス視点〜



『ガァァァァア!!』

「くぅ!」


アランが召喚した魔物を倒し続けて、どれくらい時間が経ったか……正直、何体倒したかもわからない。


わかるのは、最初にグルゲロッグを数十体倒して…さらに獰猛な狼のようなモンスター、ワーファング数十体に、巨大なゴーレム数体…………場所が広いだけに、多すぎる。


「『光よ、傷を癒せ』!」

【キィン】


時々傷ついては、自分の胸に手を当てて回復魔法をかける。回復量は微量だけど、傷を多く受けすぎて倒れるよりは遥かにマシだった。


「はぁ!」

『ゴォ!?』


一閃…ゴーレムの逞しい胸板を切り裂き、大きな傷を作る。剣に光の力を宿しているから、ゴーレムのような頑丈な体でさえも切りつけることができる。


『グガァ!』

「ちぃ!」


ゴーレムの股の間から、グルゲロッグが這い蹲ったままボク目掛けて突進してきた。


「このぉ!」

【ガッ!】


咄嗟にグルゲロッグの顎目掛けて足を振り上げて、強引に浮かばせる。


「はぁ!」

『グゲオ!』


間髪いれず、がら空きになった腹に剣を突き刺す。即死みたいで、すぐに砂となって消えた。


『グオオオオオオオオオ!!』

「まだまだぁああ!!」


拳を振り下ろしてきたゴーレムの腕に飛び移り、そのまま駆け上がって首を切り落とす。ボクを追って飛び上がってきて爪を振り上げた三匹のグルゲロッグを横薙ぎで返り討ちにして吹き飛ばした。


「『雷よ、降り注げ』!!」


落下しつつ魔法を唱え、周辺にいる敵目掛けて数百の稲妻を落とし、一掃する。


「この!」

『グギ!?』


着地と同時に正面から飛び掛ってきたグルゲロッグに剣を突き刺す。


「でりゃあああああああああ!!」


そのまま勢いよく剣を振り上げて後方に投げつける。刺さっていたグルゲロッグは剣から抜け、背後からも迫ってきたグルゲロッグ二匹にぶつかって吹き飛んだ。


そして次の目標目掛けて走り出そうとし……


【バシィ!】

「うぁ!」


急に足元をすくわれる感覚に襲われ、たまらず転倒した。


『グゲゲゲゲゲゲ!!』

「クソ…!」


上半身を起こして背後を見てみれば、グルゲロッグの長く伸びた舌がボクの右足に巻きついていた。


そして今がチャンス、とばかりに大勢のグルゲロッグがボク目掛けて走り寄ってくる。


「このぉ!!」


右足に巻きついた舌に右手を置いて、魔力を集中させる。


「『いかずちよ、迸れ』!!」


手が電流を放ち、そのまま導火線のように巻きついている舌を伝って本体のグルゲロッグ目掛けて近づいていく。



【ドゴオオオオオン!!】

『ガギゲ!!?』



電流は本体のグルゲロッグまで辿り着くと、大爆発を起こして周辺の連中も巻き込んで吹き飛ばした。


既に黒こげとなった舌を強引に引っぺがして立ち上がって息を整える……でも、激しく動きすぎて、息がしづらい……心臓も暴れまわっているかのようにバクバクいってる……。


「はぁ……はぁ……ぅぐ……!」


思わず片膝を着いてしまう……



でも……まだ!



「まだいける!!」

『ギギィ!!』


周囲から迫ってきたグルゲロッグに対し、体を回転させつつ全方位を剣で薙ぎ払う。胴体が真っ二つに分かれたグルゲロッグ達は、そのまま砂になって土へと帰っていった。



『グオオオオ!!』

「!?チィ!」


グルゲロッグだった砂を掻き分けるかのように、漆黒の狼に似たモンスター、ワーファングがボク目掛けて飛び掛ってきた。


咄嗟に回避しようとしたけど、間に合わない……。



【ドッ!】

「きゃ!」


そのまま押し倒され、組み付かれた……クッ、動けない…!


『グルルルルル……。』

「くっ!…この!」


ワーファングを蹴り飛ばそうと、胴体をかろうじて動かせる右足で思い切り蹴りつける!


『グオオオオオ…!』

「!?くぅ……。」


…ダメ、ビクともしない……こうしてる間にも、赤い目をギラつかせたワーファングが剥き出しにした牙から涎を垂らしつつ、今にも噛み付かんとしている。


(何か……何か手は……。)


若干パニックになりつつも、何とかこの状況を打破するべく冷静に頭を整理する…。


『グルル…。』


!来る!



『ガアアアアア!』

「くっ!」

【ガッ!】


必死に身をよじったおかげで、何とか左手だけは抜け出すことに成功。その左手で迫ってきた牙を咄嗟に押さえつけて、何とか防御した。


『グオオオオオオ!!』

「うぐ……あぁ……!」



でもワーファングの牙はナイフのように恐ろしく鋭い……抑えている手から血が滲み出てきて激痛が走った。



(このままだと……やられる……!)


必死に押し返そうとする中、ふと右の方を見てみる。



『グゲエエエエエエエ!!』

(クソ!こんな時に……!)



グルゲロッグが舌を垂れさせたまま、爪を振り上げて走り寄ってくる……完全に無防備な今の状況で、あの攻撃を防ぐ手は……



!そうだ!



『グガアアアアアアア!!』


ワーファングの牙を押さえつけてる間にもかかわらず、グルゲロッグは爪を思い切り振り下ろしてきた。




でも腕が使えないなら………この状況を使えばいい。




「はぁ!!」

【ガッ!】

『キャイン!?』


上に押していたの牙を逆に引くことで、頭にくるはずだったグルゲロッグの爪攻撃は覆いかぶさったワーファングの首筋に命中した。


「このぉ!」

【ガッ!ドス!】

『ギィ!?』


すでに死体となって力を失ったワーファングを蹴り飛ばし、起き上がり様にグルゲロッグの心臓を突く。


「くぅ!……『光よ、癒せ』。」


何とか窮地を脱して立ち上がり、激痛が走る左手に回復魔法をかける。薄緑色の光が淡く輝くて、ズタズタだった掌の傷が癒えていった。


「うっひゃ〜、前にも増して強くなったねぇアリス。」


……屋根の上から見下ろし、感嘆の言葉を投げかけるアラン。周囲のモンスターは、全部砂へと帰した……後は。


「もうお前だけしか残っていない……アラン。」

「ん〜、そみたいだねぇ。」


…………。


「…はっ!」

【タッ】


その場で高くジャンプし、建物の柱から出た出っ張りに飛び乗り、そこからさらにジャンプして屋根の上へと飛び乗る。


ちょうど、アランとボクが向かい合う形となった。


「……今度こそ……終わらせる。」

「……フフ、恐い恐い♪」


うすら笑いを浮かべておどけるアラン。でもそれを見たところで、ボクの中で再び怒りが燃え上がることはない。



何故なら…すでに怒りを超えているから。



「じゃ、お望み通りやってあげるよ。」

【バサ】


おどけた表情のまま、右手で体を包んでいたボロマントを脱ぎ捨てる。そこから現れたのは、スラリとした体躯と体にフィットした黒革の服、左の腰に付けた贅沢な装飾が施された長剣。


そして不気味に脈打つ紫色の左腕。


「それでは……。」

【シュイン】


涼やかな音をたてながら、腰に付けた剣を鞘から引き抜く。


「見せてあげるよ……。」

【ブヂブヂブヂ……】


嫌な音をたてながら左腕が少しずつ不気味な剣へと変化していく。


「僕の身に宿った……。」


完全に左腕が剣になると、剣を交差させるように腕で顔を覆い隠す。



そして、






「勇者をも超える、悪魔の力を!!!」

【ゴォ!】



両腕を振り下ろすと同時に、アランの背後が燃え上がった。








〜龍二視点〜



「むん!」

【ザシャア!】


蛙のバケモンを切り伏せ、道を開く……つーかこれで何体目だ?


「あぁもぉ!アルスの奴どこにいんのよ!?」

「フィフィ落ち着いてよ。」

「落ち着いてるわよ!!」


落ち着いてまへんがな。


さて、フィフィがギャーギャー喚いている間に……。



【ピィー】



指で輪を作り、笛の如く鳴らす。


「?龍二、アンタ何してんの?」


花鈴が聞いてきた。そのうちわかる。



「ミィー!」

「?ほぇ?タマちゃん?」


屋根の上から飛び降りてきたのは、俺のダチでありサポート役でもある珠。


「珠、情報は?」

『ええ、町の人達は全員無事に体育館へ避難完了。化け物達も周辺には近づいておらず、今のところ安全です。』

「そうか……で?警察とかは?」

『すでにSATが体育館で待機、警備にあたっています。』

「ふむ、一応は安全か。」

『そうですね……後、アルスさんなんですが。』

「おお、それが一番聞きたい。」

『…仲間達にも捜索をお願いしたんですが、どこにもいないそうです。手当たり次第に探しているんですけど。』

「おいおい、ネコのネットワークでも見つかんねぇのか?」

『お役に立てなくて申し訳ないです。』

「いや、いい。こっちでも捜索を続ける。お前達も頼む。」

『わかりましたー。』


再び珠は塀を伝って俺らが来た方向へと走り去って行った。


…んむぅ、家を出る前に珠にも捜索を依頼しておいたんだが……未だに足取り掴めず、か。クソ、時間がもったいねぇって時に……。


「……あ、あの龍二さん?」

「んあ?何だ花鈴。」

「………いや、やっぱ何でもナッシンです。」

「はぁ?」


わけわからん奴だ。


「……何でネコと会話してんのよ。しかも成立させてるし。」

「は?」

「あ、いや別に何でもない!」


ホントわからん奴だ。




【〜〜〜♪〜〜〜♪】

「ん?ケータイか。」


ズボンのポケットからメロディが流れるケータイを取り出し、通話ボタンを押した。


相手は……雅か。


「雅、どうした。」

『龍二か。そっちの状況はどうだ。』

「大丈夫だ、町の人達は避難させたし、全員無事だ。そっちは?」

『ああ、こっちも大丈夫だ。それより、商店街の入り口まで来てくれ。日暮が話があるそうだ。』

「?日暮が?……わかった、すぐ行く。」


通話をやめ、再びケータイをポケットに入れる。


「お前ら、商店街まで行くぞ。」

「え?何で?」

「話は後だ。」


時間が貴重な今の状況、話はまた後でいいだろう。ともかく、俺達は商店街への道を突っ走った。




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