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第百三十七の話 避難勧告発令<スティル>

たまには彼にもいいカッコさせないとね。

〜スティル視点〜



……初めて私の視点ですね……こんな時に限って。


「さぁ、こっちです!」

「あ、ありがとうございます!」


リュウジさん達と別れた後、私達は非戦闘員である一般市民を先導していた。


どうやら、近隣の住民は避難勧告というものが発令されたらしく、全員近くの小学校の体育館へと避難しているようですね……当然のことです、あんな化け物がうろついている中、家でじっとしてられませんからね。


そして、マサさんとカナエさんは逃げ遅れた住民を小学校の経路へと導き、避難させていた。私とロウ兄弟は戦えるので、彼らの護衛です。


「香苗、そっちはどうだ!」

「こっちも避難できたわ!」



……それにしても、気になるのはアランです……何故あいつが生きている…?


それに禁術……あまり詳しくは知らないけど、カルマ曰く魔族でさえ恐れるという術を奴が使っているというが………本当に奴なのか?……ダメだ、証拠が少なすぎて何とも言えない。


ただ、アルスがいなくなったということは…あいつはアルスの弟だし、間違いないかもしれない。


「!?スティル、危ない!!」

「!」


『ガギャアアアアアアアア!!』


チッ!上からグルゲロッグ……!


「『豪炎よ』!!」

【ボォン!】

『ギイイイイイイイイイイイイ!!!???』


右手を突き出し、魔法を唱える。グルゲロッグは後少しで私に掴みかかれるという距離で超高温の炎に包まれ、一瞬にして灰となった。


「マサ、ありがとうございます。」

「あ、ああ……ってまた来たぁ!?」


マサが私の背後を指差す……今度は集団ですか。



……まったく……



「……くだらないですね。」


私は振り返りつつ冷徹に吐き捨てた。グルゲロッグは中級の中でもザコ…それも砂で出来た出来損ない。


そんな奴らが……、




「『豪炎、猛火、焦がせ情熱の炎……フレアセレナーデ』。」




オレに勝てると思うな。



【ドオオオオオオン!!】

『ギッ!!!!』


灼熱がグルゲロッグ達を包み込み、先程襲い掛かってきた奴と同様、一瞬にして灰へと化す。


『ガアアアアアアアアアア!!』

『ギギギギギギギギギ!!』



しかし、後続と左右の家の屋根から増援……はっ、間抜けどもが。



「『氷結、砕氷、死へと誘う氷……フリーズレクイエム』。」

【バギィン!!】


右側の部隊全員の体の周囲をマイナス以下まで下げ、氷漬けにて次の瞬間に砕く。



「『落雷、迅雷、踊りだせ雷……ボルトラプソディ』。」

【バヂィ!!】


リング状の雷が左側の部隊を囲み、高速回転しつつ雷を内側にいる部隊に向けて大放出させて身も心も消し炭へと変える。



「『地震、地割れ、眠れ深き地の底に……アースララバイ』。」

【ドォォォォォォン!!】


轟音と共に、前方部隊の足元のアスファルトがバックリと割れて暗い奈落の底へと断末魔の叫びを上げながら落ちていく……地割れは地響きと共に閉じていった。



『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』



…さらなる増援のグルゲロッグどもがオレ目掛けて走り出し、牙をむき出す。



「……ザコどもが。」



貴様らの居場所なんてなぁ、この世界どころか、元の世界にもないんだよ……。



(それに、貴様らは……)





「…………『我に集え、四つの力』。」



オレの周囲に赤、青、黄、緑の光球が地面から浮き上がり、回りだす。



「『炎よ、氷よ、雷よ、大地よ』」



光球がさらに回転を速める。



「『踊りだせ、幻想の舞を。歌いだせ、魅惑の歌を。』」



光球の回転により、一つの虹色の輪になる。



「『我のめいに従え、四つの力。』」



やがて輪は、回転しつつ空へと軌跡を描きながら飛び上がる。



「『さぁ、踊り歌おう。終わりなきこの舞台で…………




エンドレス・オーケストラ』!!!!」





(貴様らは……我が友の世界を汚した!!)





『ギガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


上空から虹色の光柱が無数に降り注ぎ、グルゲロッグ達を貫いていく。柱は周囲の家を貫くが、この魔法は肉体のみしかダメージを与えない。


よって周囲には無害……ただ邪な者どもを貫き、射抜き、燃やし、消し去る……




邪悪な闇に終わりなき苦痛を与え続ける、聖なる光の楽団はしら達。




「……ふぅ。」


戦いが終わり、一息つく。後に残されたのはグルゲロッグ達の灰のみ。血で道を汚して迷惑をかけるわけにもいかないというなりの配慮のつもりだったのですが……


私としたことが、また我を忘れてキレてしまった……。


あ、しかも連中砂だから血は出なかったんだ……まあ、いいでしょう。


「……す、スティル……。」

「あ、マサさんカナエさん。住民の避難、もう終えました?」

「……はい。」


ふぅ、どうにか一段落ついたようですね……。



「……スティルって……」

「?はい?」

「改めて思うけど……強いんだな。」

「え……あ、いや、その…大したことないですよ。」


……正直、アルスとリュウジさんに比べるとまだまだ……。


「いや、でも十分戦力になってるってお前。」

「そうそう!おかげで避難もスムーズに行えたし!」

「……あ、ありがとうございます。」


……正直、私がこの世界で活躍したのってこれが初めてなので照れます……。




…とゆーより照れている場合じゃない、急がないと……何故か胸騒ぎがします。






「うにゃああああああああ!!??」

「!?ケルマ!?」



……そう思った矢先に……はぁ…。



叫び声がし、カナエさんが驚く……え?あれケルマの声ですか?カルマとケルマって声質が瓜二つのはずなんですが……正直、わかりません。


「チッ!…この、バカケルマ!」

「うぇぇぇぇん!だってぇ〜!」


……カナエさん、すごい。大当たりです。


若干離れた場所で、カルマとケルマがグルゲロッグの集団に囲まれていた。ロウ兄弟の片方は尻餅をつき、もう一方はファイティングポーズをとる……座り込んでいるのはケルマでしょう、叫んでいたからして。


「く!…この!!」


カルマは爪攻撃を繰り出してきたゲルグロッグに避けると同時に掌底を繰り出し、吹き飛ばす。あの二人は魔法の他、格闘術の技術も兼ね添えているいるため、恐ろしく強い…以前、魔王城で戦ったことがあるからその強さは身に染みてわかる。


ただ、ケルマがドジを踏んだらしくピンチに陥っている……そういえば、魔王城で戦った時にもケルマが思い切り躓き、カルマが倒れたケルマに躓いてこけ、その隙をついて勝利したんだっけ………



カルマ、苦労をお察しします。



「スティーーーール!!哀れみの目で見てないで助けてええええええええええ!!!」


……はっ!?そうでした!


ケルマの声で覚醒した私は、魔法を唱えるために呪文を







『オンキリキリバザラバジリ、ホラマンダウンハッタ!!』



【キィン!】



……へ?



『ガァァァ!?』

「……飛燕抜刀流奥義・四神朱雀の型……その目に焼きつけよ!!


鳳凰飛翔撃ほうおうひしょうげき』!!!」



『ガギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』



……………。



金属音のような耳鳴りがしたと思えば、グルゲロッグ達の動きが停止し……上空から巨大な火の鳥が飛来して突然グルゲロッグ達に向かって突撃していき、飲み込んだ。



【トッ】

「ふむ……これで全てかの?」


呆然とする私達の目の前に、一人の人間が降り立つ。


……て、この独特の服装…そして口調……まさか。


「ひ、日暮!?何でここに!?」

「何じゃ?ワシがおったらおかしいか?」

「あ、いや……。」


私が言うより早く、マサが先に言ったが急に勢いが無くなった。


「大体、それはこっちのセリフじゃ。何故一般人であるお主らがここにおる?」

「!あ、それは」

「お主には聞いておらんはへタレ。生徒会長、どうなんじゃ?」

「え?えっと……。」


……ヒグラシさんにバッサリ切り捨てられたマサは俯いて白くなった。


「……そ、それよりさっきの技……。」


あ、カナエさん話逸らしましたね?


「む?……あの技がどうかしたか?」

「……す、すごい技だね〜……。」

「大したことなどない。あれで初級じゃ。」


どうでもよさげですね……それに初級って……



…あれ?敗北感が………何故でしょう?



「た、大したことないわけないよ、現に敵も一瞬で………あ。」

「?」


ふと何かに気が付いたカナエさん。


…あれ?そういえば……………………






【バサァ】

「げほ!ごほがは!……か、間一髪だった……。」

「ひ、ひどい……。」






……あ、ロウ兄弟忘れてました!!



「!!カルマ!ケルマ!……あれ?ケルマの方がひどくない?」

「気のせいですよ。」


グルゲロッグ達の燃えカスの中から出てきたカルマは若干頬が焦げていた程度で、大事には至らなかったらしく、対してケルマは……その、形容し難い姿で這い出てきました。


…絶対カルマ、ケルマを盾にしましたね。生きてただけでもすごいですよ。


「ほぉ?ワシの攻撃に耐えられるとはな。」

「伊達に鍛えてませんから。」

「あの……カルマ何かした……?僕の襟掴んでなかった……?」


………哀れです。


「……!そ、そうだ日暮!」

「何じゃヘタレよ。」

「…………ってわざわざ気分をブルーにさすな!!」


見事な切り返しにマサは一瞬暗くなりつつも見事なツッコミを入れた。


「そうじゃなくて!…日暮、アルス見なかったか?」

「アルス…?」

「そう…今行方がわからないんだ。」


……確かに、日暮さんなら何か知ってそうですけど……。


「……!そうじゃ、荒木の奴に知らせようと思っておったんじゃ。」

「!アルスのことか!?」

「左様じゃ。」



…本当に知っていた。



「アルスなんじゃが、ワシが屋根から飛び移っている時にあ奴らしき姿がチラリと目の端に写ったのじゃが……急いでいたから確認できなかったが、もしやと思ってな。」

「…もしかして、白銀の鎧を着てましたか?」

「いかにも。」


……アルスだ。間違いない。


「そ、それでどっちに!?」

「…………荒木の奴めはおらんのか?」

「え?あ、ああ。今別行動している…なんでだ?」

「……アルスの向かった先なのじゃが……。」


いつになく、ヒグラシさんの顔は深刻そうだった。




「あ奴は……。」



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