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第百三十五の話 光りし者と呪われし者5


〜龍二視点〜



【チョイ】

「…………ふむ。」


…………。


「あっちだ。」

「よくわかるなそれで……。」


指にツバをちょいと付け、そよ風に当てて探知。十字路の右側を走ることにした。


因みにこの行為に意味はない。百パー勘。


「ふぅ……この町がこんな入り組んでるとは知らなかったな。」


雅が疲れたように言った。


それについては反論はない。現にここまで来るのに右行ったり左行ったりまっすぐ行ったり、上行ったり下行ったり、飛んだり跳ねたり回ったり、とどめにバビョーンでウピョーンな場所でアパラパーな事んなったりで結構複雑で、カモメに乗ってスカースカ。あ、最後の嘘。


「……前半わかるけど他なんなんだ。」

「つーか…龍二の行動に…ついてける…アタシ達って…。」

「で、でも…もうバテバテ…。」


雅がいつもの如く俺の思考に冷静にツッコミ、何か花鈴がショックみたいなの受けてるけど気ニシナーイ。んで香苗何かボロボロだけどこれも気ニシナーイ。


「文句たれんな急ぐぞ。」

「ま、待ってよ…リュウちゃん……はぁ、ひぃ。」

「か、カナエさんファイトー!」

「……体力ないなぁ……。」


香苗、さらに体力ボロクソン。一瞬、連れてきて後悔しそうになったが今さら帰すのもなんなので時々ペースを落としてやったりしている……あぁもう、時間がもったいねぇ。


つーか何なんだこの雨?赤い雲から降ってくる時点で単なる雨とは思っちゃいないが、マジ鬱んなりそうな雨だ。変に気分わりぃ。


…さて、それよっかさっからアルスとアランとか言うの探して駆けずり回ってんだが……一つだけ、どうしても気になることがあった。



「…フィフィ?」

「!?な、何?」


呼んだだけなのに一瞬激しく動揺した。


俺が一旦立ち止まると、俺の後ろから付いてきていた他全員も立ち止まった。


「一つ、お前とスティルに聞きたいことがあるんだけど。」

「「……。」」


後ろを振り返ってみれば、俯き、顔を逸らしている二人…俺が何を聞こうかわかっているようだった。


「あんさぁ、ぶっちゃけ聞くわ。



アランて誰さ?」


この名前を聞いた瞬間のフィフィとスティルの明らかな動揺…どう考えてもこいつらと無関係じゃないことは確か。


つーか、異世界の住人であるこいつらの知り合いってんなら、アランって奴も異世界から来たことになる。だが、こんな事態をそいつが引き起こしたってんなら、事故とかでこっちに来たんじゃなくて意図的にこっちに来たと考えられる。


…何かを狙ってきた。そう思うな俺は。


そんでアランって名前、んでもってアルスのあの状態からして、あいつとは深い関わりがあると見える……何から何までもれなく謎だらけだコンチクショウ。


とゆーわけで、謎は少しでも解決するに限る。時間も貴重だが、憂いは取り除いておくことにしよう。


「「……。」」



なのにこの二人がこのまんまじゃねぇ…。



「…スティル?」

「……。」


雅が声をかけるにも関わらず、無言。アランって奴、こいつら無言にさせるたぁどういう奴だ?


「……。」

「…おいフィフィ。」


空中で羽をパタつかせながら浮くフィフィに、若干イライラしてきた俺は少し口調を強くする。




【ヒタ】




「……。」

「今回は黙っててもいいってわけにもいかねえぞ?」




【ヒタ】




「…お前らが何で話したくないのかは知らねえがな?」




【ヒタ】




「リリアンとアルスのためにも、俺達は事実を知っとく必要がある。」




【ヒタ】




「だから……」





「!!??り、龍二!?」

『ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』




【ドシュウ!!】




さっから湿った足音たてて奇声発しながら背後から襲い掛かってきた何かを後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。


「後で全部話せ!!」


右前中段構え―――少林寺拳法の構えの一つ―――を取り、前方を見据える。


さっき襲い掛かってきた奴……まるででかい蛙に錆びた鎧を着せたような化け物が、数匹俺らにジリジリと迫ってきていた。何か深緑色に黒い斑模様の皮膚が妙に毒々しいんですけど?


「こ、こいつらは……グルゲロッグ!?」

「僕達の世界のモンスター達が……何で!?」


……ふむ、やっぱこりゃ大事だな。異世界のモンスターがこの場にいるし。


「!?か、蛙!?」

「いやああああああ!!??気持ちわる!!」

「か、カナエさんカリンさん落ち着いて!?」


あ、二人とも蛙苦手だったっけ?しょーもねぇとこでビビリな奴ら。


まぁいい。二人なだめるのはケルマに任せて今は状況打破、状況打破。



『ガギエエエエエエエエエエエエエエエエ!!』



蛙とは思えない気色悪い奇声を発しながら、水掻き付きの手を振りかぶってくるいっちゃん先頭の化け物。一瞬キラっと手が光った…爪か。


「よっと。」


頭上めがけて振り下ろされた爪攻撃を手刀を形作った手で受け流し、隙を作る。


「どーん!」

【グシャ!】


顔面にグーパンチをかます。嫌な音をたてながら顔面が陥没し、後方へと吹っ飛ぶ。


『ガアアアアアアアアアアア!!』


吹っ飛んできた仲間を飛んでさけ、三匹一度に俺に飛び掛ってきた。


「エル!」

『ああ!』


エルを引き抜き、一匹目の飛び掛り攻撃を避け、


「はっ!」


かわすと同時に袈裟切りで化け物を切り裂き、


「せい!」


頭上に迫ってきた二匹目を股から頭にかけて切り上げで真っ二つにし、


「おらぁ!!」


二匹目を切ったと同時に小ジャンプし、体を横に一回転させつつ三匹目の両腕を薙ぎ払いによって切り落とし、


「逝けやぁ!!」

【ドゴン!!】


そのまま空中で前方に一回転し、遠心力を利用した踵落としをかます。化け物の頭が体にめり込んで絶命し、地面に叩きつけられてアスファルトにクレーターを作った。


『ガアアアアアアアアアアアアアア!!』

「はぁぁぁぁああああ!!」


さらに前方から数十匹、同じ化け物がバックリ開いた口から涎垂らしながら迫ってきたんで、着地してすぐさま体を捻って勢いをつける。



「『百烈龍閃弾』!!」

【ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!】



捻った体を元に戻す勢いを利用し、左手から拳大の氣弾をガトリングの如く連続発射し、化け物どものどてっ腹のみならず、体全体にぶち込んでいく。モロに食らった化け物どもは全員残らず吹っ飛んでいった。


「…フィニッシュ。」

『楽勝だ。』

【キィン】


エルを鞘に戻し、鞘鳴りで戦闘の終わりを告げた。


「うへ……前にも増してスゲェ……。」

「はわぁ〜……すごーい……。」



…で、さっから傍観していた他数名。戦えよテメェら。主に異世界組。



『ガ……ギィィ……。』


?……あ、化け物のうちの一匹がまだ生きてたか


『……ギィ……。』


小さく呻くと、かろうじて上げていた頭を再び地面に打ちつけた……逝ったか。



【バサァ】



『!?』


うぉう、ビビった。いきなり体が震えたかと思うとまるで砂のように粉々になっちまった。


「な……砂!?」

「バカな……。」


フィフィとスティルが半ば唖然とする。何だ、全てのモンスターが死んだら砂になるわけじゃねえの?


「……!思い出した!」

「?何がだ?カルマ?」


隣で、カルマが掌を拳で打つ。


「あの禁術……別の本に書いてあったんですけど、砂を媒介として魔物を造りだし、術者はそれを使役することが出来るって……。」


……あれか?気分はもはやシャーマ○キ○グってか?


「そんな……まさかアランの奴……。」

「……いや、フィフィ。まだアランの仕業だと決まったわけでは…。」


…………。


「おい二人とも。」

「「!」」


ったく、コソコソ話し合いやがって…。


「……今度こそ話してもらおうか。そのアランってのは誰なのか。」

「「……。」」


…一番気になるのは、どうしてこいつらがそのアランって奴をひた隠しにしようとしてんのか…。


「……。」


……また無言か……。



「…リュウジ。」


っとっとととい。危うく怒鳴るとこだった。


「…何だフィフィ。」

「……ホントはこれ、アルスの為を思って黙ってたんだけど……。」


?はい?


「…どゆこった?」

「……。」

「フィフィ……。」

「…大丈夫……それに、今は緊急事態だからしょうがないよね。」


どうやら話してくれるみたいだな。


「……今から、全てを話すわ。」

「ああ。」





俺はこの時まで、知らなかった。





「あいつは……アランは。」





アルスが、





「…アランは…。」





あいつが、ずっと深いを隠していたことを。










「アルスの………実のよ。」






〜アラン視点〜



「…………。」



木の上から、空を見上げる。空は僕の魔力により、美しい赤に染まっていた。


ああ……綺麗だ……どんな花よりも、人よりも、この空の色に勝るものなんてない。


あ、いや……一つだけあるか、この空に勝る物が。



それは血……どんな荒れた大地だって、人間から溢れ出るたくさんの血によって、美しい大地に蘇る。



そう、一面に広がる花畑よりも、緑よりも、何よりも……。


「……フフ。」


想像すると笑みが出る。空から視線を外して、眼下に広がる町を眺めた。


いつか見た、この光景…いや、これそっくりじゃないけど、似たような光景が前にもあった。


でも、今では別の気持ちの方が数倍大きい。


「……この町が血に染まるなんて……。」


想像するだけで……体が火照ってきちゃうよ。


まるで、あの時のように……。




「…………あの時?」



あの時っていつだ?いつ、僕は何をしたんだっけ?



……あぁそうか……あの時か。


思い出したよ…。



あの時……あなたが村を立った次の日……。


村中から一人だけ晒し者となり、役立たずと近所の人達から言われたあの日。


稽古をしている時、父が僕に向かって吐いた言葉。





『姉は立派なのに、お前はどうしてそんなクズなんだ?』





……思えば、あの時から僕は僕でなくなった。


僕の中で、何かが音をたてて切れたんだ。


まずは目の前にいた父…そして今まで散々罵ってきた村のおじさん、おばさん、同年代の子供達。


皆の血で、村は赤く染まった。


でもね、全然後悔してないよ?


だって、一つたりともいい思い出なんてなかったんだよ?あの村には?


後悔なんてするはずないじゃないか。


それに…


それに………



皆から噴き出し、流れ出る血がとっても綺麗に見えたんだ。



村人全員を殺した後、僕はふと思いついた。


もしかして、勇者の血を浴びれば僕は勇者になれるかな?


何だろう、その時、僕の頭の中で誰か囁いたんだ。そうしろって。


きっとあれは、神様のお告げなんだよ。僕にはわかるもん。


その為には、犠牲はつきもの……邪魔だと思った物は、全て殺していかなきゃいけない。


震え上がったよ……歓喜に。


勇者になれるかもしれないという願望もあったけど。


また殺戮ができるって思うと、たまらなく嬉しいんだ。


だから、生きてるもの全てが邪魔に見えてきてしょうがないんだ。


殺したいんだ……生き物の、全てを。


染め上げたいんだ……血で大地を。


陥れたいんだ……人を恐怖に。


見たいんだ……人が血で染まる姿を。


そう、血で……血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で、血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血で血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血!!!!!!!!!!




あぁぁぁ………楽しみだなぁ………。






「あなたの前で大虐殺ができるんだから………ねぇ?アリス。」








さぁ、始めようか。



血で彩られた狂気のダンスパーティーを。

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