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第百三十四の話 光りし者と呪われし者4

〜龍二視点〜



俺としたことが、全く気付かなかったとはな。アルスがさっきまで座っていた窓際には、あいつが脱ぎ捨てていったであろうパジャマが無造作に置いてあった。


…一応、わかっていても確認することは確認しておく。


「……やっぱか。」


ベランダへ出る戸の鍵が開いている。あいつはこっから外に出たとして間違いない。


つーか玄関から行くにはリビングを通ることんなるから、俺らに気付かれないなんて無理だろ。


「……!?リュウジ、これ!」

「?」


フィフィに呼ばれ、振り向く。


フィフィの前には、若干開いたクローゼットがあった。あの中には、アルスとクルルの鎧が置いてあったはず。


…まさか…。




「アルスの鎧が……無い。」

「…………。」




…あんにゃろ、一人でどうするつもりだってんだ?


「クルル!さっきリリアンに水飲ませてた時に気付かなかったの!?」

「だ、だって……水飲ませるだけでも必死で……それにアルス、微動だにしなかったから気配なかったんだもん。」


フィフィが怒鳴ってクルルは恐縮する。


「フィフィ、クルル責めたってしょうがねぇだろ。」

「……でも。」


でも、じゃねぇよ……。



「……まずいな、こいつは。」

「ああ……最悪だ。」


雅の呟きに俺も同意する。何がやばいってそりゃやばいだろ。唯一の目撃者っつーか遭遇者がいなくなっちまったんだから。


おまけに、今一人で行動させんのはまずい…そんな気がしてならねえ。


「…探しに行くぞ。」

「さ、探すったって…どこ探しゃいんだよ?」

「とによりかくよりまず行動。」


俺は行動派なんだよ。あれ?今それ関係ない?んなもん知らねえ。


「ま、待ってくださいリュウジ!」

「どこ行ったのかもわからないのに行動しても!」

「だったら町全体を駆け回るのみだ。」

「リュウちゃん落ち着いてよ!」

「とゆーかアンタまで行ったら…!」



「お、おいお前ら大変だ!」



皆が俺を押さえつける中、恭田が叫ぶ。


「んだよ影薄雑草太郎。」

「だから恭田だっつーの!ってボケかましてる場合か!!空を見てみろよ!!」


?空だぁ?



「………え。」



全員一斉に窓から空を見上げ、唖然とする。








空が………血のように赤黒い雲によって覆われていた。








〜日暮視点〜



「……こりゃまずいのぉ……。」


嫌な氣を感じ取って我が家を飛び出し、巫女服姿のまま他人の一軒屋の屋根の上に立って空を見上げる。今の時間はもうじき暗くなるであろう時間……じゃが、この何とも禍々しい雲によって明るく感じてしまう。


おまけに、信じられない量の妖気に似た力が雲から地上に雨となって降り注いでおる……何故こんなことになっておるのか疑問は尽きんが、事態は深刻ということは確かじゃな。


「まぁ、幸い今のところ人体に影響はないようじゃが…。」


現に、何の免疫もない者の多くが何事かと外に出てきており、空を眺めておる。その様子に異常は感じられない。


ただ、今のところ、の話じゃが…時間が経つとどうなるのかわかりもしない。


「……あ奴のとこへ行ってみるとするかのぉ。」


…交流は少ないが、嫌な気配が充満する今、頼れる奴には頼っておいた方が得じゃからな。


「さて……む?」


ふと、ある方角に目が止まる…………あそこが一番、邪気に満ちておる。


しかし、この方角は……。



「……学校の方か?」



……確かあそこには……………………ふぅむ…気になるのぉ。


「……あ奴のとこへ行く前に、確認しておくべきか。」


そう一人ごち、ワシは屋根から屋根へと飛び移っていった。







〜龍二視点〜



「なんだ……この空……。」

「レッドスカイ現象?」

「そのまんまの名前じゃねぇか。つかそんな現象聞いたことねぇよ。」


こんな状況でもツッコミは忘れねぇんだな雅。


「……!ケルマ、テレビを!」

「は、はい!」


何を思ったのか、カルマがケルマに我が家のテレビのスイッチを入れさせた。



「……マジ?」

「…………。」



…テレビにはどこかの商店街とそこでたむろしている大勢いる野次馬と女性レポーター、



そしてその上には、今外で広がっている真っ赤な空が映し出されていた。




『ご覧ください!この不気味に広がる赤い空を!先程までは今までと変わらない雲だったはずなのに、急に一転してこのような光景になってしまい、近隣に住む住人達から不安の声が上がっています!先程入りました情報によりますと、この空はこの地域だけでなく、今や全国にまで広がりつつあるといいます!一体、日本の空はどうなっているんでしょうか!?現地の専門家の方々にも調査を行ってもらっていますが、原因は未だ不明であり……!』




女性レポーターがテレビの向こうで、鬼気迫る勢いで状況を説明する。俺らはそれを食い入るように見つめていた。


……かなり、大事になってきたなこりゃ。


「……これも、まさか……。」

「……その術者の仕業かもな。」

「間違いありません……。」


つーかそれしかねぇんじゃねぇか原因?


「……!?リュウくん!リュウくん!!」

「どしたクルル?」


リリアンの傍にいたクルルが焦っていながらも俺を呼ぶ。



「リリアンが……何か言ってる!」

【シュン!】



一瞬にして俺はリリアンが寝ている傍らへと移動した。


「リリアン、どうした?」

「リリアン!?」


俺に続き、リビングにいた皆も和室に入ってきた。定員オーバーだっつの。狭い狭い。


「あ……ぅ……あぁ……。」


リリアンは汗を滝のように流し、息苦しそうにしながらも必死に何かを伝えようと口を動かす。


「……じ……。」

「じ?」



「じ……じゅつしゃ、は……ア……ラン……。」

「「!!??」」



…………アラン?



「ちょ……アランって!?」

「そんなバカな!?」

「?おいアランって誰だよ?」


フィフィとスティルが揃って顔を青くし、驚愕する中俺たちはチンプラカンプラだった。


「ア………ランが………はぁ……はぁ………この、世界に……来て……。」

「リリアン、もう喋るな…!」


なおも伝えようとするリリアンに、久美は泣きそうになりながらも止めようとする。


でも、リリアンは止めようとしなかった。


「アルス……あいつ、を……止めに……出て……。」



……アルスが?



「今の……アルス……ダメ……会わせ、ちゃ………………くぅ!……。」

「!?リリアン!!」



最後、一際大きく呻いてリリアンは静かになった。



「リリアン!リリアン!!」

「落ち着け久美、寝てるだけだって。」


リリアンを揺さぶる久美を強引に引っぺがす。確かに呼吸も弱々しいけどちゃんとしてるし、少しは落ち着いたようだ。



…でも時間は無い……が、術者がわかりゃこっちのもん。



「フィフィ、今の時間は?」

「えっと、今八時ちょっと前。」


時間経つの早ぇなオイ。


「うし、タイマーセット!」

【カチッ】


左腕に付けてるGショックにタイマーをセットさせる。これでオッケー。


「……行くぞ、お前ら。」

「!?い、行くってどこへだよ…。」


……アホかこいつ。わかって言ってるだろ。


「決まってんだろ影薄。その……アランとかいうクソったれんとこだ。」



アランという名を聞いてビクっとなるフィフィとスティル。何故そんな反応するかは気ニシナーイだ。今は。



「ば、バカ言うなよ!?リリアンをこんな状態にする奴だぞ!?勝ち目ねぇって!」

「……ふぅ。」


…ったく、初っ端から諦めモードかよ…。


「…じゃ行きたくない奴はここにいろ。もう迷ってる時間なんてねぇんだ。」

「ちょ!?」


こーゆーので揉めてる場合じゃねんだよ今は。


「……リュウくん、私行く!」

『当然、剣である私が行かない道理などない。』

「…何でアランがいるか知らないけど…。」

「放ってはおけませんね…アルスも含めて。」

「魔王様が行くなら僕も!」

「当然だ。」


クルル達異世界組は全員参加。そりゃ実戦経験ある奴らばっかだしな。


「……しゃーないわね。何が出来るかわかんないけど、アタシ達も行きますか。」

「リュウくんとカルマ達が行くなら私も行くよー!」

「…しょうがないか。」


やる気まんまんな女性陣に、やる気ナッシンな雅。しっかりせい。


「龍二!あたしも連れて行ってくれ!」

「あ、お前は却下。」

「え、即答!?何で!?」


いや何でって……理由一つしかないし。


「バカか。今リリアンの傍にいるべき奴はお前しかいねぇだろ。」

「で、でも…。」


当然、久美だってこんな状況下の中、一人だと心細いだろうが……。



「…第一、不安抱えたまんまの奴が戦闘に参加したって邪魔なだけだ。」

「!!」



本心から言いたかねぇが、これは正論だ。今のこいつはリリアンで一杯一杯のはずだ。それで気が散っちまったらどうなるかわからんし。


「とりあえずここで待ってろ。何かあったらケータイに連絡してくれ。」

「……でも、龍z」

「待ってろ。」

「………………。」


顔をズイと近づけて念を押す。つか、だぁ〜も〜んな目で見てくんなっつーの。




「………わかった………待ってる。」


よし、わかりゃいい……あ、そうだ念のため……。


「影薄、一応お前ここで久美と一緒にいろ。」

「了解!!」


即答な上にハッキリ言い、ビシィ!と敬礼する影薄。そんな嫌か外出るの。


まぁ、いい……とりあえず。




「行くぞ。」

『おー!』




さっさとそのクソ野郎に会わないとな。



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