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第百二十九の話 自業自得だ雅

サブタイの意味は読めばわかりますよ。


〜雅視点〜



「ふぅ……宿題終わり。」


カタン、と自室で机の上にシャーペンを置いたのは俺こと、雅だ。やっと宿題が終わったとこでリラックスしようとしてるとこ。


……でも英語の問題、一応見直しておくか。え〜っと、第一文型は……。



【コンコン】

「?はい?」


ノックの音がし、勉強を一旦中断させた。


【ガチャ】

「マサ?」


入ってきたのはスティルだった。


「?何だスティル?」

「そろそろ休憩したらどうです?二時間半経ってますよ?」

「え、もうそんなに?」

「はい。」


言われて時計を見てみると、時計の針が午前中の十時半から午後の十二時半を指していた。


……集中し過ぎたな。


「わりぃ、今から昼飯用意するよ。」

「………それなんですが………。」



「何だ?言いづらそうに。」

「……実は「雅〜♪」……。」


スティルが言おうとしてるのを遮るかのように部屋に入ってきたのは、我が姉である涼子姉さん。何かえらいご機嫌だけど?


「姉さん、何かあったのか?随分機嫌いいな?」

「ウフフ♪」


…………



あれ?何だろう?この嫌〜な胸騒ぎは?



「まぁ降りてきなさいな♪」

「……あぁ。」


鼻歌歌いながら部屋から出て行く姉さん。対し、未だに顔真っ青にしてるスティル。


………………まさか。


「……スティル?」

「……はい。」


たったこれだけでスティルが何を言おうとしてるのかわかった。俺とスティルのみ使える意思疎通だ。


……同じ被害者・・・同士、だからかな?何か泣けてくる…。


「……逝くか。」

「ええ……。」


上の俺の言葉は誤字じゃない。それだけは言っておこう。



忘れてる奴も多いだろうけど、俺とスティルは二階で隣同士の部屋を使っている。スティルの部屋はかつて俺の爺ちゃんが使っていた部屋で、今はもういないから使っているというわけだ。結構古臭いのが置いてあると思われがちだけど、洋風の部屋で壁紙は白いという落ち着きがある部屋だ。唯一爺ちゃんの名残があるとすれば、ベッドの脇に置いてある古臭いツボくらいだ。


まぁ俺の部屋は……大した物はないから言わないでおこう。いや深く追求するなよ?決してバレたらまずいもんとか置いてねぇからな。



さて、誰に説明したのかわかんねぇけど、一先ず一階へ降りてダイニングへ。


そこには………。


「……やっぱか。」

「…………。」


『どうか姉さんの機嫌のよさが久々の登場で舞い上がっていたせいでありますように』……という俺達の願いはことごとく打ち砕かれたのを通り越して木っ端微塵にされた。



テーブルの上に置いてあるのは、料理と形容していいのかわからない茶色い物体Zが複数、深皿の中には同じく何かスライムみたいなゲル状の黄緑色の物体Xが四個、そして極めつけは中央にドドンと置かれてある七面鳥ぐらいの大きさの漆黒の物体Ω(オメガ)が一つ………しかも異臭がすごい。


この世とも思えない光景が、俺達の目の前に広がっていた。



「フフ、どう?私の自信作♪」


姉さんが嬉しそうに笑う。その笑みで多くの男性を虜にしてきたとか言われるけど、今の俺にはどっからどうみても死神が背後で笑ってるようにしか見えない。


そう…姉さんの言う自信作とは、これらの謎の物体s。ご想像通り、姉さんは料理が壊滅的……いや、消滅(?)的に下手なんだ。そりゃもう材料や味付けは当然、焼くのも煮るのも、何故か電子レンジでさえ姉さんにかかれば殺人兵器生産装置に早変わり。


大体、料理に目覚めたのが十歳の時。俺は当時七歳で、その頃からトラウマを植えつけられた。よって、これからは姉さんに料理をさせるのは絶対にやめようと幼いながらも心に固く誓った。


……おかげで、今では俺が料理担当……龍二ほどじゃねえけど、一般家庭で作れる料理なら簡単に作れる。



でも今回のように、何の前触れも無く姉さんが勝手に料理を作ることもある……本人の前では言わないけど、超ありがた迷惑。



「…………姉さん、何で?」

「うん、ずっと雅にだけご飯作らせるのは悪いかなって思ってね?」


悪いかなって思うんならいっそやめてください余計なことしないでくださいつーかすんな。


「…もしかして…迷惑だった?」


!!??


「い、いや全然!?むしろ超ありがたいさ!な?スティル。」

「え、えええええええ!!」

「そう?……よかったぁ♪」


……上目遣い+涙目からパァっと明るい笑顔になった姉さん。いくら血の繋がった兄弟だからってあれはダメだ、反則気味に可愛い…しかも悪意なんてなくて純粋だから尚更だ。


「さ、早く座って座って♪ご飯冷めちゃうよ?」

「「…はい。」」


テーブルから離れている入り口まで熱気がくるんだから冷めるなんてまずありえない、なんて言えない……。


とりあえず席に座る俺達。さらに異臭が強くなり、例えるとアンモニアの中にガソリンと腐った牛乳と腐敗した肉、とどめにクサヤを長年放置しておいた物をぶち込んだような物の中に入れられた気分だ。テーブルの上でピクピク痙攣してる羽虫がめちゃくちゃ多いように見えるは幻覚だと信じたい。つか信じろ俺の脳。


「さ、どうぞ♪」

「…………。」


姉さんの輝かしい笑顔が向けられる中、俺とスティルは一瞬目を合わせてアイコンタクトを取った。



(ど、どうしますマサさん!?)

(落ち着け。まだ策が尽きたわけじゃない。)

(他にどうしろと!?)

(大丈夫だ……一番古典的だけど、腹が痛いと言ってこの場を離脱しよう!)

(そ、そうですね!)



「あ、そういえば二人ともこないだお腹痛いって言ってたから体の調子を整える食材をたくさん入れたから安心してね♪」



(…………。)

(…………。)

(……どうするんですか。)

(…………仕方ない……あれをやるぞ!)

(!……あれ、ですね?)

(そう、あれだ……。)

(……覚悟を決めなければいけませんね。)

(ああ……いくぞスティル!)

(はい……!)



「「い、いただきます。」」



あれ=降参。万策尽きた場合に用いられる作戦……作戦とも呼べねえよコンチクショウ。



ともかく、テーブルのど真ん中に居座っている料理もといモンスターの表面にナイフで切り込みを入れ、一部分を剥がす……この黒、絶対コゲとかそんな生易しいもんじゃない。コゲには発癌性物質が含まれているとか聞くけど、これ食ったら一瞬にして昇天すんじゃねぇか?


……うん、何だかこの物体の煙の中から地獄のような場所がうっすらと見える気がする。


「……マサさん。」

「……スティル。」


俺達は小声で囁きあう。逃げるための算段なんかしない。だって目の前にニコニコ顔の姉さんがいるんだから。


「生きてたらまた会いましょう。」

「ああ…。」


これは決して大袈裟なことなんかじゃない。今回は今までの比じゃねえからな。


そして俺達は口を開いて……



「「………いざ行かん!」」



星になった。





********************





「…………。」


……。


「……さ……。」


……ん…。


「ま………さ…。」


……ん?





「雅、雅。」

「………。」



あれ?ここは……。



「天国?」

「リビングよ。」


……我ながら何とも笑えないボケかましちまった。


つーか今の、姉さんの声?……何だこの後頭部のやわらかいの……?


「大丈夫?」


また姉さんの声がし、ずっと閉じていた瞼を開けた。



至近距離に姉さんの顔があった。



「…ってうぉい!!??」


すんげぇ慌てて起き上がる。危うくお互い頭をぶつけるとこだったが、姉さんがヒョイと避けたおかげでぶつからずに済んだ。


いやそれよりも!?


「な、ななな何やってんだ姉さん!?」

「何って……膝枕?」


いや聞くなよつかわかっとるわ聞いてるのは何でしてんだってこと。


……現在地はさっき姉さんが言った通り、リビング。そこにあるソファの上で俺は姉さんのやわらかい足で膝枕されてた俺。唐突過ぎだろコレ。


「…何で俺ここに?」

「えとね、料理食べた瞬間に二人同時にイスから転げ落ちたの。」


…………。


「…じゃ俺死んだ?」

「死んでないよ?足あるでしょちゃんと?」


いやあるけどさ。よく気絶だけで済んだな俺。


「それで起きるまでずっと待ってたの。」

「……どれくらい寝てた?」

「え〜っと、二時間半くらい。」

「……膝枕でか?」

「……いけなかった?」


だからその潤んだ瞳やめい!


「…いやいいけどさ、何ていうか、まぁ…。」

「…恥ずかしかった、とか?」


ぐっ……。


「……そ、そうだよ。悪いか?」

「ううん?何か可愛いな〜って♪」


うっせぇよ。


「あれ?そういやスティルは?起きたのか?」

「ううん、ずっと呻いてるから部屋に連れてったの。多分まだ寝てる。」


……頑張れ魔法使い。


「あ、それとね……さっきのご飯なんだけど……。」

「!!??」


な、何だ!?まさか冷めちゃったから電子レンジでチンして食べてね♪みたいなこと言うんじゃねえだろうな!?


「…さっき龍ちゃんが遊びに来て…」




「お腹すいたって言うから全部食べて帰っちゃったの。」

「…………。」




龍二、俺お前の化け物っぷりに一生感謝するぞ。




「だからもう一回作り直し「ダメだ!!!」!!??」



思わず叫んで姉さんビクついた。いや、これはしょうがない。だって命に関わるし!



「ダメだ姉さん!今後一切、料理すんな!!」

「…………。」


ぐ!……また目をウルウルと!……だが!


「そんな目してもダメ!!」


俺は理性を総動員させて一喝する。よし、これでもう俺は姉さんの純粋ウルウル攻撃に屈することはな


「…………雅。」


!!



「もしかして…料理……まずかったの……?」


う…。


「…自信あったのになぁ…。」


うぅ…。


「…いっつも雅にばっかり任せっぱなしだったから今回は頑張ったんだけど…。」


うぅぅ…。


「…私って…料理下手なんだね…。」


うぅぅぅぅ…。


「ダメだなぁ…私って…。」


ううぅぅぅぅぅぅ……。


「………う…ヒック…。」


ううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………!!!





「ち、ちちちち違う違う違う!いやあれだあれ!ほら、姉さんの手料理ってすんごくうまいからさ!!」



!?な、何を言っている俺の口!?



「え〜っと〜…さ、さっき倒れたのは〜………あれだ!実はあまりにうまくて卒倒しちゃってさ!」



違う!倒れた理由はうまいの逆だ!!しょーもない嘘をつくな!!



「……ほんと?」

「ほ、ホントホント!だ、だからさ、いっつも卒倒しちゃせっかくの手料理食えなくなるからさ!な?だから…」



よせ、それ以上言うな俺の口!






「…だから祝い事とかそういう時に作ってくれねぇか?」

「……雅……。」



………………。



「…うん!ありがと、雅。」

「……どいたまして。」



この日から、祝い事は恐怖の一日と化したのは言うまでもない。



「それじゃ、今度の雅の誕生日は期待しててね!私頑張っちゃうから!」

「……わ〜い、待ち遠しいな〜。」



誕生日過ぎるのが。



「じゃ……俺ちょっと部屋でもっかい昼寝してくるよ……。」

「うん。おやすみー♪」

「ああ…。」


超ご機嫌な姉さんを置いて、俺はリビングから出た。


「………………。」



神様神様神様……どうか俺の誕生日だけ早送りにしてください。



『断る。』



そうですかい……クソ作者。



「涼子さーん、雅が夏休みの間中にも手料理食いたいらしいでーす♪」

「テメェ何出てきてんだライターーーーーーーーー!!!!!」

「撤退!」

【ピュン】

「待てやコラ!!」


野郎〜!!一瞬で消えやがった。


「も〜?夏休みの間も作るの?雅ったらわがままね♪」

「…………。」



誰かあの人どうにかして?


ね?自業自得でしょ?まぁ雅はいわゆるシスコンですね。あ〜あ、ヘタレ。


さてさて……第七十の話から続いている人気投票ですが、そろそろ締め切ろうかと思います。そうですねぇ……


締め切りは明日の夜十二時にします。


それまでは投票オッケーでーす。集計したら結果発表しまーす。あ、二人までオーケーなんで。

それでは、これにて……投票、待ってまーす。まぁ来なかったら来なかったで……泣きます(ォィ


では!

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