表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/180

第百二十五の話 アルス、マジでピンチ!

今回は前半コメディ、後半ややシリアスで。



〜アルス視点〜



「おはようございます。」

「おっはーアルス。」

「アルスちゃんおはよー。」

「おすアルス。」


どうも同じクラスの方々からお返事の挨拶を受けてますアルスです。ただいま朝八時二十分です。


あ、遅刻じゃないですよ?現在地が下駄箱ですから、普通に歩いても教室には間に合います。


……リュウジさんはボクの後ろの方で『おっはー影薄ラー二号!』と叫びながら恭田さんを蹴り飛ばして壁を破壊していました。後で回復でもしてあげよ。


「あ、おはようございます。」

「!!お、おはようございます!」


すれ違いざまに女子の人に挨拶を交わす…ってあ、同じクラスの人かと思ったら一つ後輩の人だった。


…今さら思ったけど、ちょっとおかしいかも。考えてみれば学年は確かにボクの方が上だけど、年齢でいえばボク一年生なんだし……まぁ、誰も気付いていないようだし、別にいいかな?


…でも何か緊張してたような…。




「ちょ、私アルス先輩に挨拶されちゃった!」

「うっそー!?」

「マジー!?」

「ずるーい!」

「あぁ…先輩のソプラノ声の挨拶、ちょー綺麗だったなぁ…女の人みたい…//////」

「………アンタその耳寄越しなさい。」

「は?」

「寄越せーーーーーー!!」

「ちょ、やめ、いやああああああああ!!!!」




………………。


「アンタさぁ、ホント女子にまでモテモテよねぇ?」

「……そう……かな?」


肩に乗ったフィフィが呆れたように言った。



……何というか……後輩の人達の中には、ボクのこと男だって思ってるみたいですごい不服なんですけど……。


この間なんて、後輩の子に握手求められたし、写真もお願いされたし、サインもねだられたし…中には男の人もいたけど、多くは女の人からだった。別にいやってわけじゃない、と言ったら……まぁ嘘になりますけど……


それよりも、ほとんどの女性はボクが男だと勘違いしてる方が問題なんです……はぁ。


「…ね、アンタ男と見られたくなかったら一人称とか変えたら?」

「…う〜…一時変えようと努力はしたんだけど…。」


でも何だか…地っていうのかな?次の日になったら“ボク”になってるんだよなぁ…。


「……もう一人称は変えるのは諦めたんだ。」

「ふ〜ん…そう。」


…まぁ、原因は地に戻っちゃうっていうのもあるんだけど…


一番の理由は前にリュウジさんの前で“私”って言ったら……



『キショ。』



こんなん言われたんですよ!?たったの三文字で感想述べられたんですよ!?すっごくショックだったんですから!!


「あ〜……そんじゃ皆の前で公表したら?ボクは女でーすっつって。」

「そんなのする度胸がありません…。」


いえ、恥ずかしいってのもあるんですけど、他に理由があるんです。


「……リュウジ?」

「はい…。」



そうなんです、リュウジさんに言ったら絶対あの人アノ手コノ手で放送室とか校長室とか乗っ取りそうで恐いんです……何だかすごく。


で、行動理由はボクのため、じゃなくて『おもしろそう』、だと思うんです……。



「………ま、一々気にしてたらラチあかないからね。気にしちゃダメよ?」

「うん…ありがと。」


…確かに、気にしてたらキリがないもんね………うん、気分入れ替えよ。


そして気持ちを新たに、下駄箱の蓋を開けた。



【パサ】



「?あれ?何か落ちたよ?」

「え?」


フィフィが足元を指差してその方向を見てみる。


……紙?


「ゴミかな?」

「さぁ?」


とりあえず拾い上げてみる。紙は小さく四つ折にしてあって、端っこから可愛らしいキャラクターの絵が描かれている。単なるゴミじゃなくて、手紙みたいだった。


…ボクの下駄箱から落ちたってことは、ボク宛?


「………。」

【カササ】


ともかく中身が気になったから、紙を広げてみる。案の定、紙には字が書かれてあった。


え〜と?…………………………。



「アルス〜。何書かれてあったの〜?」


……………。


「?アルス?」


……………。



……………//////////////////



「!?か、顔赤っ!?ちょ、アルスどうしたのよ一体!?」


……ぁぅぅぅ……。








〜教室〜



「ラブレター!?」

「ちょ、声大きいって香苗ちゃん。」

「あ、ご、ごめん。」


…HR後、今朝下駄箱に入っていた手紙の内容について香苗さん達に相談してもらうことになりました。


…ラブレターという単語については知ってましたけど…まさか自分の下駄箱に入ってるなんて…。


「しっかし、またベタだなぁ下駄箱になんて。」

「まぁ、一番わかりやすい場所だからじゃない?」

「あ、なるほど。」

「それよりも、この内容。実にシンプルじゃない?『好きです、付き合ってください。今日の放課後、体育館裏で待ってます』って。」

「だな。でも手紙が可愛らしいっていうのはどういう意味だ?」

「きっと気を引こうとしてるんだろう?」


…ボクを尻目に手紙についての話題で盛り上がる皆さん……相談しなきゃよかったかなぁ?……はぁぁぁぁ。


「アルスったらモテモテだねー♪」

「ホントホント♪」

「………魔王、フィフィ、怨んでいい?」

「「サーセン…。」」


…八つ当たりなんて嫌いですけど、こっちは真剣に悩んでるのに和やかに話す二人に一瞬イラっときました。


「でもさ、アルスの人気度だったらもっと手紙あるはずじゃないの?」

「そうだよな。なんせファンクラブがあるくらいだし。」


前々から思ってたんですけど、ファンクラブって具体的にどんな活動してるんだろう…。


「あぁ………その件はね。」

「?香苗、何か知ってるのか?」

「うん……。」


苦笑する香苗さんを見て、何だかろくでもないような理由なんだなと確信するボクでした。


「……そのファンクラブなんだけど。」

「うん。」

「……ラブレターとか、そういうの徹底的に排除してるらしいわよ?」

「…は?」

「つまり、下駄箱とかに手紙が入っていたら速攻ポイ、てこと。」


……やっぱり……。


「しかも数人で下駄箱やら何やらを監視するもんだから…。」

「なるほどな〜……ラブレターの一つや二つ、来ないのも無理ないわけだ。」

「つーか何つー活動してんだあいつら…。」


…とゆーより、何でわざわざ監視する必要があるのかな?


「まぁ今回は恐らく、ファンクラブ会員達の目を盗んで下駄箱に入れた、と考えてみてもいいわね。」

「そうだな……にしても、ファンクラブの連中もあくどいことをするな。」

「ラブレターぐらい許してあげてもいいのにね?」

「だよねー?」


…………。


「…でも皆さん、ラブレターホントはいらないんでしょ?」

『モチ。』


見事に声が重なった!?


「だって…ね?」

「そりゃぁ…。」

「うん。」

「ねー?」


…………。



【ガラリ】

「あ〜〜〜〜〜めちゃすっきり〜〜〜〜〜。」

『!!???』


!!???


「?あ?お前らどした?」

『いえ何でもありません!!』

「?」


ドアが開いてトイレから戻ってきたリュウジさんが中に入ってきたと同時に口を噤むボク達。セーフ。


「…つーかお前ら、何の話してんだ?」

「あ、そうだった。すっかり話題が反れてたな。」

「うん…実はね、アルスちゃんにラブレターが…。」

「?ラブレター?」

「お前ってあれだよな。ワザとじゃなくて純粋に無知っていうのが反感買うよな。」

「興味ねぇことは知らん。」


いえ、興味云々じゃなくてこれ一般常識だと思いますよ?


「そんで?そのラブレターってのはどれだ?」

「あ、はい…これです。」


おずおずと手紙をリュウジさんに渡す。正直恥ずかしいですけど…/////


「え〜と〜?……………………………



おぉ、果たし状か。」

「何でやねん。」

「おお!?雅の関西弁ツッコミ!?」

「珍し!」

「クッ!ボイスレコーダーに録音するの忘れてたわ…。」


いえそこまで大騒ぎすることですか!?


「いやだってさぁ、これ。体育館裏に来いって手紙、俺何回ももらったぞ?」

「そりゃお前の場合だろ。これはアルス宛だから果たし状なわけねぇだろ。」

「つか今時果たし状ってのも古臭くねぇか?」

「聞けよ人の話。」


こ、コント始まっちゃった…。


「…君達、遊んでる場合じゃないだろう。」

「んにゃ?そうなんか?」

「いや俺は遊んでる気は…。」

「雅、龍二と一緒だとアンタも遊んでるようにしか見えないのよ。残念だけど。」

「………そうか………。」


!?ま、マサさん!?暗い、暗いです!?


「…ともかく、どうすればいいと思う…?」


……あの、本題に戻ったのはボク的には嬉しいんですけど……マサさんどうするんですか?


「ん〜、どうするもこうするも、相手がわからないんじゃね〜?」

「だよねぇ、う〜ん…。」


……マサさん、放置確定です……ごめんなさい。


「……ふむ。」


皆が悩む中、一人手紙をじ〜っと見つめつつ考えるリュウジさん。手紙に何かあるんでしょうか?


「……うし。」

【ガタ】


そしておもむろに席を立った。


「?リュウジ?どしたのよ?」

「ん?いやなに、下見に行くんだよ。」

「え?下見って?」

「相手の顔見に行くってこと。」


ふ〜ん………




!!??




「え、相手わかるんですか!?」

「まぁな。大体見当はつく。」

「何で?名前書いてないよ?」

「後で教えてやるさ。」


ボクらの質問を適当に受け流しながら、リュウジさんは教室から出て行った。


「……。」

「……。」

「……。」

「……。」

「……。」

「……。」



ボ、ボクらも行かなきゃ!






〜二階、二年生教室前〜



「お、ここだな。」


リュウジさんが辿り着いた場所というのは、ボクらの教室のちょうど下にある教室だった。つまり二階です。


「…ところで龍二、アンタホントに相手誰かわかったの?」

「モチ。」


さも当然といった風に返答するリュウジさん。聞かせてもらいたいです、切実に。


「ほれ、ここの字見てみろ。」

「?」


指差された手紙に書いてある一文字を見てみる。そこには『付き合ってください』の真ん中部分、“て”の文字だった。


「……これがどうかしたの?」


花鈴の質問にボクも同意します。別に何の変哲もない文字ですよ?まぁちょっと歪な形してますけど。


「お前の目は節穴かバ花鈴このボケナスが。」

「バ……!?」


……言ってたらボクまで罵倒されるとこでした。


「とりあえず黙って聞けよ?ちょっとでも喋ったら舌切る。」


花鈴さん、怒鳴りたかったのに口抑えてたからできませんでした。そりゃそうですよね、エル若干抜いてますもんリュウジさん。


「いいか、説明すっぞ?この“て”だけど、ほれ、この大きく反り返った部分。ほとんど丸みたいになってんじゃん?」


…確かに、逸れてるというより丸いですね。でも“て”に見えなくもない……。


「で、この部分と字を書く時の力加減、そして字の位置。これらを全て合わせて憶測すると、おのずと書いた奴が誰か見えてくる。」

「…何でそんなことでわかんのよ?」

「最近になって全校生徒の行動パターンやらなんやらの情報を掌握することに成功したから。」


ちょ、掌握って!?いつの間に!?


「……さすがリュウちゃん……。」

「……情報大王……。」


カナエさんとクミさんが唖然として呟く。あれ?クミさん、以前までは通り名の名称“情報王”だったような気がしますけど?


「さ、てと。この手紙を書いたのは〜……。」


手紙を片手に、窓から教室の中を覗いてキョロキョロとお目当ての人物を探すリュウジさん。ボクも手伝いたいけど、誰だかわからないので傍観しています。


「………お、あいつあいつ。」

「え、どれどれ?」

「見えない〜!」


花鈴さんに遮られた魔王。背低いですもんね。


え〜っと、誰が手紙を…………あれ?


「どこですかリュウジさん?」

「ほれあいつあいつ。」


あいつって……女子の人達がより固まって談笑してるのしか見えないですよ?


「どこよ?」

「だぁらあいつだって。」


いえ、ですからあいつって…





「ほれ、あの黄色いリボン付けた三つ編みの女子。」




………………え゛?




「…いや、何言ってんのよ龍二。あれ女の子じゃないの。」

「そだけどさ、この字書く奴はあいつしかいねぇべ。」


………………。


「あ〜、名前は三下みした良子よしこ。俺らの一つ下で、成績は並。明るくてフレンドリーなため、友人も多いとのこと。バドミントン部に所属してるんだそうな。」



………リュウジさんがその人の情報を説明してるけど、ほとんどボクの耳に入ってなかった………。



「……つ、つまり…え〜と…。」

「……アルス……。」

「……………。」




またボクのこと男だって思われてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………








〜教室〜


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………。」


結局、大きなショックを受けただけで自分達の教室へと戻ってきたボクら。特にボクなんて机に突っ伏してしまってます。だってしょうがないでしょ?


「…結局、男と間違えられてたわけね。」

「それ言わないでフィフィ……。」


そもそも、こういう展開は生まれて初めてなんですけど……。


「…い、いや〜まさか女の子にもらっちゃうなんてね〜!?」

「大変だなアルス!」

「ドンマイ!」

「………ホントに大変です………。」

「「「………。」」」


気分を紛らわせようとしてくれたカナエさんとクミさんとカリンさんでしたが、ボクが本気で困ってるのを見て申し訳無さそうに俯いてしまいました。


「…でもホントどうするのよ?」

「…どうしよう…。」


いえ、別に男の人から手紙もらったとしても悩んでたと思うけど、それ以上に困った事態になっちゃうなんてなぁ……はぁ。



「どうするもこうするもねぇんじゃね?」



……へ?


「リュウくん、策あるの?」

「別に策とかいらねぇだろこんなん。」


えっと……どういう意味かな?


「放課後、会って話しつけてくりゃいいだろ?」


…………。


「…あの、それについて悩んでるんですけど…。」

「だぁらわかんねぇか?自分は女だってのを証明しにいきゃいい。」


…………



!あ、そっか!



「普通考えつかねぇか?んな簡単なもんを。」

「…すいません、混乱してて気付きませんでした。」


そう…そうだよね!相手はボクのこと何か勘違いしてるんだから話せばわかるはずだし!


あぁ…何で気が付かなかったんだろうな〜…。


「…ところで、手紙に書いてあったが何に付き合えってんだこれ?買い物」

「いい加減理解しろよお前。」


あ、マサさん復活してたんだ。



と、ともかくこれで何とか乗り切れそう…。


「…ところでアルス。」

「?はい?」


クミさんが神妙な面持ちで声をかけてきた。


「このラブレターなんだけど…もし、相手が男性からだったら君、どんな返事をしていた?」

「…!?え、えぇ!?な、何でそんなこと!?」

「いや、気になってたから…で?どうなんだ?」

「あ、それアタシも気になる。」

「私もー!」


え、え、えぇ!?そんな!?


「…何の話なのやら。」

「龍二は黙っててよ。」

「花鈴にはもれなくエルで真っ黒に。」

『もちろん、無料で。』

「すんませんでした。」


う、うぅぅぅ…………………。


「…と、当然お断りしますよ。そんな好きでもない人と…。」

「ほほぉ?」


……何?何でそんな探るかのような目でボクのこと見てくるの?


「……じゃ好きな人から告白されたら?」

「う……。」


………………。



「………。」

「………ふぁ〜〜あ………ねみ。」



………………。


「……も、もういいでしょうそんな話!」

「ちょ、ごめんごめん。怒らないでよ。」


カリンさんがたしなめるけど、別に問い詰められたから怒ってるわけじゃないです。




……リュウジさんが気付かなかったのに怒ってしまっただけなんですから……。









〜放課後〜



「……ふぅ。」


じ、時間が経つのがすごく早い気がする……。


時刻は五時半、放課後。手紙の通りに体育館裏に来てる。相手の方は来てないみたいで。


「…………。」


当然、ボク以外誰もいない。皆曰く、こういうのは第三者が首突っ込むべきじゃないとか…いえ、わかるんですけど、正直心細いです。フィフィも先に帰ってしまったし…。


…言い間違えた。心細いんじゃなくて緊張します。こういうのは初めてだし…。


「…な、何て言おうかなぁ?」


そうだ、練習しないと………え〜と………。


「……無理です、ごめんなさい。」


無難にこれだけでいいかなぁ?……あ、ダメか。男じゃないって言うのが目的なのに普通に断ってるだけだし。


「えと……ボクは女です、ごめんなさい。」


……ちょっとシンプルすぎたかな?


「……あなたはボクのことを男性だと思い込んでるみたいですけど、ボクは生物学上、女性なんです。外見だけで判断してはダメですよ?第一印象のみで決め付けてしまう人というのは、大抵嫌われてしまいます。それは人間の心理的な問題であり、そもそも…………………。」


話がインテリっぽい上に小難しい上に自分でも何言ってるのかよくわからない。


「……じ……実はボク、女の子なんでーす☆キャハ♪」


キャピ♪という擬音がつきそうなくらい無邪気に言ってみた…………………激しく自己嫌悪に陥りました。


あぁ、風がヒュ〜って吹いてます……惨めです……。



「……とゆーよりウケを狙ってるわけじゃないのにボク何やってるんだろう……。」



ガクリと肩を落とす………だんだんとリュウジさんみたいになってるボクがいるような気がしないでもないんですが………。


…と、とにかく口上考えないと…。




「あの…。」

「!?」


び、びっくりした!気配無かった!


「は、はははははい!?」

「………。」


振り返ってみれば……朝、覗き込んだ教室の中にいた子だった。


「え、えと……あなたが手紙くれた人?」


一応、確認のために聞いてみる。


「は、はい!三下良子といいます!」

「…そ、そうですか…。」


…リュウジさん、あなたはすごいです。今さらなんですけど。


「…そ、それで話というのは…?」

「………。」


自分で聞いててなんですけど、呼び出した理由は手紙ですでに把握してます。頭の中では断り方を脳内イメージで練習中。



「実は!」

「!」


って早い!心の準備できてないですよ!?


「実は!…前々から…。」

「は、はい…。」


…………うわぁ、何だかこういうのってドキドキする…………。



「…私、先輩のことが好きでした!!」



い、言った……!じゃなくて言われた……!


「それで……付き合ってくれませんか!?」


…………よし!


「え、え〜っと…ですね…。」


……お願いです、そんな純粋な眼差しでボクを見つめないでください断りにくくなりますから!


「…あ、あの。勘違いしてるようですけど…。」

「?」


よ、よし行け自分!



「…ボク女ですよ?」



や、やった!言い切ったぁ!!



「…で…ですから、ボクとあなたとは付き合えな」

「知ってますよ?」

「ですよね?ですから………。」



…………………………へ?



「い、今なんて?」

「ですから私、先輩が女なの知ってますよ?」

「…………。」




よ、予想GUYです!!??

【あまりのことでアルスはキャラが壊れております】




「え、え!?じゃ何で!?」

「だって私……女の子にしか興味ないんですもの。」




ふ、What!!??

【あまりのことでアルスはキャラがかなり壊れております】




「ずーーーーーーーーーーっと前に、初めて先輩見た瞬間から惚れてました。」

「…………………。」




こ、コケコッコー?

【あまりのことでアルスはキャラがどうしようもなく壊れております】




「つまり、先輩は私からハートを奪っちゃったんですよ?」

「…………………。」

「ですからぁ〜…………


責任、とってくださいね♪」




こ、コケ!!!????

【あまりのことでアルスは(以下略)】




「せーんぱい♪」

「コケぇ!?じゃなくて、はいぃ!?」


一瞬何故か鶏の霊がボクに取り憑いてた気がしたけど、いきなり抱きつかれて覚醒!


「ちょ、何を!?」

「ウフフー♪何でこんな人がいないとこに誘い込んだかわかりますかぁ?」


………………



あ、やばいです。冷や汗出てきた。



「あ、あの、ちょっと待って…きゃあ!?ど、どこ触ってんですか!?」

「あははー♪先輩の声かーわいー♪」


ゾワァ……!


「だ、誰か!誰か助けてーーー!!」

「無理ですよー♪みーんな帰っちゃいましたしー♪」


う、ウソ!?


「お、お願いです待ってください!第一ボクら女ですよ!?」

「愛に性別は関係ないです!」


いやその言葉はカッコいいんですけどボクにとっては迷惑極まりないです!!


「そ・れ・で・は〜………」

「!!??」



「いっただっきま〜す♪」


いやあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???










「ほい。」

【ズバキ!】

「はう。」



……………………



……………あれ?



「……あ……。」

「よ。つか何してたんだお前ら?」



…………リ…………



「リュウジさぁぁぁん!!」

「おぉっとい。」


ふぇええええええ!!


「おい、泣きすぎだぞ。つーか暑いから離れてくれ。」

「うわあああああああん!!」

「聞いちゃいねぇやコンチクショウ。」






〜アルス号泣のため、しばらくお待ちください〜






「……う……グス。」

「落ち着いたか?」

「あ、はい……すいませんでした。」

「んにゃ、別にいい。」


大分落ち着いてきたので、リュウジさんから離れた。


…でも…


「……。」

「?どした?」

「!い、いえ別に…。」


……もうちょっとさっきの状態でいたかった、なんて言えない……////////


「…あ、ところであの…。」

「ああ、それならそこに。」


指差した方を見れば、ボクの後ろでうつ伏せで倒れているミシタさん。気絶してるだけみたいです。


いや死んでたら大変ですけど…。


「つーかそんな泣くほどのもんか?ただ抱きついてきただけだろあっちが?」

「…操取られかけたんですよ?ホントに恐かったんですから。」

「操?何それ?」

「…もういいですよ…。」


リュウジさんて黒いのか純粋なのかさっぱりわかりません…。


「操とかどうとか知らんけど、何の力も持ってない女子に迫られて泣く勇者ってどうよ?」

「う…!」


い、痛いとこ突かれた…。


「…あ、あの…できればこのことは内密に…とくに魔王とかには…。」

「はいはい、(一応)黙っておいてやるよ……。」

「今小声で一応って言いましたよね!?」

「気ニシナーイ。」

「気にします!!」


楽しんでる!この人絶対楽しんでる!!


「まぁんなことは置いておくとしよう。」

「置かないでください。」

「で?結局の話、お前さんが女だってことはわかってもらえたのか?」

「…………。」


いえ、わかってもらえた…という以前に、相手はボクが女だというのを知った上で告白をしてきたわけですから…え〜と…。


「……まぁ、わかってもらえた……ということになったような何ていうか?」

「んだよその曖昧な表現はよ。」

「うぅ……べ、別に、いいじゃないですか…。」

「そこで膨れっ面になる意味がわからんのだが?……まぁ確かにどうでもいいか。」


リュウジさんは基本深く追求はしない人なんですよね…。


「さ、ともかく帰るとするかっと。」


言うと同時に、片手で気絶しているミシタさんを担ぎ上げるリュウジさん。ミシタさんの体格上、重そうに見えないですけど、人一人を小枝の如く持ち上げるリュウジさんはやっぱりすごいと思います………



…岩小指で持ち上げる方がもっとすごかったけど。



「?何してんだ?行くぞ。」

「あ、はい……。」


…………。


「…あの、リュウジさん。」

「んあ?」


歩きながら、ふと疑問に思ったことがあったから口にした。


「何でここに来たんですか?先帰ったはずじゃあ…。」



ボクがここに来る前、リュウジさんは晩御飯のしたくをすると行って魔王達と一緒に先に帰ったはず……。



「んだよそんなことか。」


疑問に思うボクとは違って、当たり前のような感じで言うリュウジさん。


「決まってんじゃん。



何か心配だったから。」


…………ふぇ?


「…心配?」

「お前あれじゃん?何かあがり症だし、もしもの場合とか考えたら何か不安になっちまってさぁ。」

「……はぁ。」

「つーわけで、一人とっとと戻ってきたってわけよ。でバッタリお前が叫んでるのを聞いて覗いてみればあの状態だ。」


……………。


「……心配……してくれたんですか?」

「何だ悪い?」

「い、いえ……その……。」

「?」

「………あ、ありがとう、ございます。」

「どいたまして。」


心配されて嬉しい反面、恥ずかしさから少し俯き加減でお礼を言うボクに、リュウジさんは別に何とも思っていない風に返した。



……ホント、この人って信じられないくらい鈍感で……それでいて遠回しに優しくて……恥ずかしいと思うようなことを平然と言ってのけてしまう。




そんな彼に、ボクはいつか……この気持ちを伝えれるかな?




今まで感じたことのない、暖かくて、でも、どこか切ない……この気持ちを……。




「さ、とりあえずこいつを家の前にほっぽり出してから帰るぞ。」

「……いえほっぽり出したらダメですよ!?」

「気ニシナーイ。」

「いえですから気にしてくださいって!?」




……でも少なくとも今は……このままでいいかな?




「ところでこれ、捨てていい?邪魔んなってきた。」

「だからダメぇ!!」




だって今が……何だか心地いいから。








〜翌朝、登校時〜



「良子〜オッハー!」

「………。」

「?良子?どしたの?」

「………どちら様ですか?」

「…は?」



「……リュウジさん。」

「んあ?」

「……あの時、彼女のどこ叩いたんですか?」

「脳天。」

「………。」



ボクは彼女に、リュウジさんの代わりに心の中で謝罪しました。


…最近、ラブコメ感が無いな〜ってことでちょっと頑張ってみたつもりなんですけど…軽くガックシ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ