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第百十六の話 龍二、久々大暴れ!

はい、色々ありましたがホラー編完結です!


今回はコメディー一直線…なんですが…


多分、読めば分かります。

〜ライター視点〜



「リュウジ!?無事だったの!?」

「リュウジ…さん…?」

「おいっつー。つか俺よりお前ら無事じゃないだろ。」

『まったくだな。』


ドアを吹き飛ばし、派手に登場した龍二に、歓喜を含んだ声を上げるアルスとフィフィ。それに対して右手をヒョイと上げる龍二とやれやれという風に言うエル。


「り、龍二…無事だったか…。」

「おうよってありぇ?お前ら何で寝てんだ?」

「…これが寝てるように見えるか…?」

「風邪ひくぞ。ちゃんと布団かけて寝ろ。」

「いや聞けよ人の話。」


苦しげにツッコミを入れる雅。どんな状況でもツッコミを忘れない、それが雅。


「ふむぅ…どうやら、俺がいない間えらい楽しそゲフン!大変なことになっとるな。」

「テメェ…明らか楽しそうって言いかけただろ…。」

「オゥイエー。」


初っ端からターボ全開の龍二。久々の出番からか、いつもより飛ばしてるような気がしないでもない。


「そんで?さっさと起きれば?」

「起きれたら…苦労しねぇっつのぉ…!グェ。」

「あれま。」


無理矢理起きようとするも、再び床とキスをする羽目になる恭田。


「ま、影薄のことはどうでもいいや。」

「…ひどい。」


うつ伏せになりながら涙声を上げる恭田。しかし今の体勢では滑稽の他ならない。


「そんで?アルス大丈夫か?」


龍二が剣を支えにしているアルスの下へと歩み寄ろうとして足を踏み出す。




「!?リュウジ、ダメ!!」



『かぁっっ!!!』

【ボォン!!】



フィフィが叫ぶと同時に、ドアに潰されたと思われていた紅左衛門の声が轟いて圧し掛かっていたドアが爆発した。


「およよ?」


飛んできた破片を普通にヒョイと体をわずかに横にずらして避ける龍二。


やがて、部屋の隅まで吹き飛ばされていた紅左衛門が、より炎を燃え上がらせつつユラリと立ち上がった。


『おのれぇ…ふざけた真似をしおってからにぃぃぃ…。』

「?何だこの妙ちくりんな火?」


紅左衛門の姿を見て龍二は首を傾げた。漆黒の炎を見て“妙ちくりんな火”という一言で済ますこいつは大物か。いや、もうすでに色んな意味で大物だ。


「り…リュウジさん…そいつは…。」

「おいおい、無茶すんなアルス。」


必死になって立ち上がって剣を構えようとするアルスを制する龍二。


「で、でも…。」

「わぁってるって、こいつ敵だろ?見りゃわかる。」


どこか投げ槍な感じで言う龍二には、まったく緊張感がない。


「そんでぇ?アンタ誰?」

『貴様…我を見て恐怖を抱かぬのか?』

「いやだから聞いてんじゃんか誰って。日本語理解しろよこの全身マッチ棒。」


ひどい言い様だ。


『………………




ふざけるなあああああああああああああああ!!!!!!』

【ボォォン!!】


どうやら紅左衛門の逆鱗に触れたらしく、体から巨大な炎を放出させて龍二に向けて飛ばす。


「!!リュウジ!避けて!!」


フィフィが焦る声を上げる…が、龍二は恐怖からか目の前まで迫ってくる炎を見つめたまま動かない。





「ふぅ。」

【ボォォォォォォォン!!!】





………蝋燭の火を消すかのように軽く息を吐き、炎を消し飛ばした。つかこいつが恐怖感じること自体ありえない。



『なっ!?』


あまりの光景に声さえ出せない紅左衛門。


『…ふぅ、相変わらず化け物じみてるな貴様。』

「それさっきも聞いた。」


驚く紅左衛門に対し、何もなかったかのように悠々と会話する龍二とエル。


『…………き、き、き、き…。』

「木?」


動揺する紅左衛門と、激しく間違っている龍二。


『き、貴様…化け物か!?』

「いやだからそれ今エルが言ったから。」


普通にあの炎息だけで消す奴見て化け物って思わない奴は世間一般ではいないよ絶対?


「ふむ………ま、いっか。」

【シャリン】


何に納得したのか、腰からエルを引き抜く龍二。そして切っ先を下に下げる。


「じゃとりあえず〜、アルス達はボッコボコにされて再起不能なんで〜、




俺が相手してやるか。」

【チャ】


手首を返し、エルの刃を紅左衛門へと向ける。


『……クククク…そうか………ならば、貴様にはこいつらの相手をしてもらおうか!』


そして紅左衛門は手にした刀を頭上に掲げる。


『我の下に集え、怨みし悪鬼どもよ!!』


紅左衛門が声高に叫び、周囲から漆黒の霧のような物が吹き出してきた。


「!?まずい、怨霊どもを呼ぶ気じゃ……!」


起き上がった日暮は、真言を唱えるべく手で印を形作る。しかし、明らか紅左衛門の方が速い。


やがて霧の中から怨霊が現れてくる…





はずだった。





『……な、何!?』


予想外の出来事が起き、さらに驚愕する紅左衛門。


『な、何故だ!?何故霊どもが集まってこない!?我の呼びかけに応じないはずが…!』

「食った。」

『……は?』


遮るかのように言った龍二に、思わず素っ頓狂な声を上げる紅左衛門。


「…え?」


紅左衛門だけでなく、アルス達も目が点。


「だからぁ、霊食った。」

『食ったぁ!!??』


紅左衛門、キャラを壊すかのように叫ぶ。そりゃ悪霊食う奴なんて前代未聞だしね。つか人間じゃないよね。


「あ、ダイジョブダイジョブ。まずかったから。」

『何が大丈夫なのだ一体!?』


紅左衛門はツッコミキャラと化した。無理ないです。


『ってホントに食ったのか、うぬは…!?』

「イエス。」


即答だった。


「ま、いいじゃんそゆことは。さっさと始めようや。」

『…お、おのれ…。』


構えらしい構えを取らず、仁王立ちのままエルを持つ龍二。紅左衛門は悔しげに呟き、炎をさらに燃やす。




『ならば…今宵の最初の生贄は、貴様にしてやぐげ!?』


言いかけたところを一瞬にして接近した龍二の左フックが紅左衛門の右頬に命中、首を90°に曲げつつ回転かつバウンドしながら吹っ飛んだ。


『ぐ、がぁ…な、何故我に触れられる…。』

「俺だから。」


すっげぇ理不尽。


「ま、ともかく先手必勝。『崩龍滅砕ほうりゅうめっさい』。」


そしてすぐさまエルを突き出しつつ突進。同時に地面を衝撃波が走る。


『おのれぇ…甘いわぁ!!』


しかし、フっと消えて龍二の攻撃を避ける紅左衛門。攻撃は空を切り、一瞬無防備になる龍二。


『死ね!』


そしてその隙に大上段からの一撃をお見舞いする紅左衛門。



【ガィン!】



『ちぃ…。』

「ふふん♪」


しかし、その強烈な攻撃を軽く受けて龍二は鍔迫り合いへと持ち込んだ。


『…やはり、我が結界に普通に侵入できただけあふべ!!』


言いかけたところを龍二のヤクザキックが綺麗に命中、“く”の字の形をしながら吹っ飛ぶ紅左衛門。


『こ、こしゃくな真似をおおおおおおおお!!!!』


そして怒り狂いながらすぐさま空中で体勢を整える。



『オンアビラウンキャンシャラクはべぇ!!』



刀印を結ぼうとした紅左衛門に、龍二が蹴り飛ばした机が炸裂。粉々に砕け散る机。きりもみ回転しながらまた吹き飛ぶ。


『…手加減しないな、貴様…。』

「これでも加減はしてんだけどなぁ。」


呆れるように言うエルと、頭をポリポリかく龍二。


「…ま、いいか。そろそろあれ使うべ。」

『あれ、とな?』

【キン】


龍二はエルを鞘に収め、右手の拳を左手の掌にパン、と打ちつける。


『う、ぐぉぉぉぉ………。』


かなりダメージを食らっているため、起き上がるのに一苦労している紅左衛門。龍二はその間に右手を抱え込むように構え、氣を集中させる。


「そんじゃ行くぞー。作者がお昼にパスタ茹でてる時偶然思いついた技。」


こら、そんなこと暴露すな。



「…『龍空弾りゅうくうだん』。」

【ドォン!】



右手に練り上げた拳大こぶしだいの氣弾を、右手を突き出すと同時に放つ。明らかパスタと関連性ない。


『!?うぉおおおおおお!?』

【ドオオオオオオオオオオオオン!!!】


咄嗟に横に転がって回避する紅左衛門。氣弾はその横を通り過ぎた。



壁に大穴開いたけど。



『ば、馬鹿な…我の結界がこうも簡単に破れるなどあべし!?』


呆気にとられてる紅左衛門に容赦なく回し蹴りを繰り出す龍二。体をブーメランの如く曲げて回転しながら飛んでいく紅左衛門は、ブーメランの如く戻ってくることなく床に突っ伏す。


【チャキ】

そして、龍二は再びエルを引き抜いて構えた。


「じゃ次。作者が何となく日曜日の『いい○も』見てる時ふと思いついた技。」


だから暴露せんでもいいっつーの。



「はぁぁぁ!『龍破双牙斬りゅうはそうがざん』。」



その場で一回転し、エルで横薙ぎをする。


するとそこから剣閃が生まれ、高速で飛んでゆく二つの衝撃波。この技は、見た目は一回転したかのように見えるが実は光速の速さで二回転し、剣圧を飛ばす技。やはり『いい○も』との関連性はゼロ。


『な、にぃ!?』


飛んでくる衝撃波に戸惑いながらも、刀を振るうことで弾き飛ばす紅左衛門。



【ドドオオオオオオオオン!!!】



…その結果、天井に大穴が開き、そこから雨が降り注ぐ。


因みに、今いる職員室は一階。この校舎は三階建て。


つまり、三階の天井ごと吹き飛ばしたわけとなる。


『こ、この…規格外の化け物め!』

「だから聞いたってそれ。つかそんな体のお前に言われたら世界の破滅じゃね?」


一理あるけど、それ言いすぎじゃね?


『クソ!』


忌々しげに呟き、宙を浮く紅左衛門。そして両の腕の炎を燃え上がらせ、高く掲げる。


『覚悟しろ!この場にいる者全員焼き殺してやべぼ!?』


言いかけたところを、龍二が瞬速で紅左衛門の背後の壁を蹴って飛び上がって背中に飛び蹴り、素敵なエビ反りになりながら吹き飛ぶ。


『お、おのれはびょ!?』


体勢を立て直した瞬間、今度は高く飛び上がって天井を蹴って頭から突っ込んできた龍二のロケット頭突きが素晴らしい音を立てながら炸裂、さらに吹き飛んで机やらを破壊する紅左衛門。


頭突きをきめた後、片手を床についてその場で跳躍し、華麗に立ち上がる龍二。息切れなんてまったくしていない。


「オッサン弱いぞー。しっかりしろよ。」

『う…おぉぉぉぉぉぉぉ……。』


龍二の挑発に、痛みのせいか呻くだけで全く反応することができない様子…




『……かぁあああああ!!』




…ではなく、急に起き上がって刀を投げ飛ばす。


「おっと。」


龍二も負けじと投げ飛ばした。



エルを。



『り、リュウジ貴様ああああああああああああ!!!』


まさか投げ飛ばされるとは思ってなかったエルは悲痛な叫びを上げ…



【ガィィン!!】

『あうっ!』


相手の刀とぶつかり合った。


紅左衛門の刀は砕け散り、エルは空中で回転しながら龍二から離れた位置に突き刺さった。


『クハハハハハ!武器を手放したな!素手ならば負けはせんぞ!』


高笑いしながら、新たな刀を生成する紅左衛門。便利な能力である。


「…ん〜…。」


ふと顎に手を添えて考える龍二。お前素手でも十分戦えるんじゃね?


「…まぁ問題はないけどなぁ…かと言って普通に肉弾戦行うのはメンドイし…。」


おいおい。


「………あ。」


何かを思いついたかのように、龍二はパチンと指を鳴らした。


「よし、あれやってみっか。」


そういうなり、合掌するように手を合わせ、足を肩幅まで広げる龍二。また新技?


「…キョウ、悪ぃけど使わせてもらうぞ。」


?キョウ?…………………………………




!!???て、それはあああああああああああ!!!!!




「…『龍気功』。」



龍二の周囲に五つの青く輝く野球ボールサイズの球体が現れる…ってコラああああああああ!!!何してんだお前!!


(いや、いっぺんやってみたくて。)←テレパシーです


パクるな!!謝れ!鐵 迅渡先生に謝れ!!


(やっちゃったもんはしゃーねんじゃね?)←テレパシーです


やかましゃあああああああ!!!


「さ、行くぜ。」


無視かよ!?


……もうええわ、後で俺が謝っとく。


「『龍氣弾』。」


氣弾の一つを紅左衛門に向けて飛ばす。


【ドォン!】

『クハハ!そんな遅い物当るか!』


しかし急上昇でかわされ、今度はあっちから炎が発射される。


「ほいっと。」

【ゴォォォ!】


それを軽く避け、龍二がいた場所からは黒い炎が燃え上がる。


「もいっちょ。」


さらに氣弾を飛ばす。


『何度も言わせるな!そんな遅い物当るわけはびょご!!』


フェイントの氣弾に騙され、龍二のジャンピングアッパーが炸裂、天井にぶち当ってバウンドし、床でもバウンドしてさらに天井でバウンド。


「ほいチャンス『龍閃双脚りゅうせんそうきゃく』!!」

『!?』


一瞬にして間合いを詰め、目にも留まらぬ速さの右足蹴りを繰り出す龍二。それを身を捻って回避する紅左衛門の横で、今度は左足蹴りが通る。



【ドドドン!!!】



さらに壁に穴が開き、風と共に雨の水が入り込んできた。まぁ、ここまでは先程の龍空弾と同じ光景である。




違うのは、開いた穴の淵のところどころに無数の靴跡が付いていることだった。




『…今の、ただの蹴りではない、な…。』

「おう、一応な。」

『………。』


『龍閃双脚』。これは音速を超える速さで左右それぞれの足から二億発という蹴りを繰り出す技である。


あまりに桁違いの強さを延々見せつけられ、紅左衛門はいい加減まいってきたようすでへたり込む。


『…う…うぬは、ホントに人間か?』

「はいはい、どうせ化け物だよ俺は。」


どこか投げ槍な感じで言う龍二は、頭をポリポリとかく。


「さってと……




遊ぶのやめてそろそろ消えてもらうか。」

『!?な…!?』

【ヒュン、パシィ】


龍二は周囲から気功球を消すと、懐から取り出した長いタオルを突き刺さっているエルに向けて投げつけた。するとタオルはエルの柄に巻きつき、勢いよく引っ張ると龍二の手元に戻る。そんなんできたんかお前。


『…貴様、怨むぞ。』

「わりわり。」


さっき投げられたのを根に持ってるのか、恨みがましく言うエル。結構ダメージでかかったようで。


『ま、まさかうぬ、今まで本気で来てなかったというか!?』

「そりゃそうだろ。俺が本気出したら…あ、やっぱ言うのやめるわ。言ったら言ったでまた対抗しようとしてくる連中増えるし。」


失礼極まりない。


「まぁこれだけは言うけどな。




軽く一瞬で終わらせるより、手加減してジワジワと精神的にも肉体的にも痛めつけてやる方がいいだろ♪ムカつく奴には♪」


ニッコー♪という擬音が付きそうなくらい晴れやかな笑みを浮かべる龍二。それを見て、体の炎の勢いが弱くなってくる紅左衛門。怯えている、と見ていいだろうと思う。


『な、ぁ……。』

「それじゃ最期の言葉…は言わせないとして…………いくぞ、エル。」

『了解。』


へたり込んでる紅左衛門へ間合いを詰め…


「せい!!」

【ズガァァァン!!】

『ぐぶふぅ!!』


勢いよく爪先蹴りを繰り出し、紅左衛門を蹴り飛ばす。紅左衛門は校舎から飛び出し、雨雲が覆う空へと飛んでいく。



【チャ】



それを確認することもなく、龍二はエルを両手で持って頭上に掲げた。



「…豪炎、全てを焼き尽くす。轟雷、広大なる大地を割かつ。」


やがて龍二の声が響き渡り、辺りに反響した。


「二つの破壊の力よ、我が意思に集え、全てを滅する槍と化せ。」


やがて掲げたエルの刃が白く輝き、さらに紅い氣のようなものが立ち昇る。





『奥義!魔龍天滅槍まりゅうてんめっそう』!!!!!!」

【ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!】





やがてエルが一際大きく輝き、轟音と共に辺りを光で覆いつくす。



光が晴れると同時に目に飛び込んできたのは、龍二の頭上にある、白く輝き放電し、紅く燃え盛る炎が周囲を螺旋を描くかのように渦巻いている巨大な槍であった、



「な…何じゃ、これは…。」


目の前のあまりに非現実的かつ神々しいまでの光景の前に、雅達と傍観していた日暮は思わず呟く。雅達に関しては、もはや言葉さえもない。



『あ…あれは一体……何なのだ……。』


遥か上空、かなりの高度からでも確認できる程光輝く槍を見て、紅左衛門は硬直した。


その硬直は、紛れもなき恐怖…これから自分の身に何が起こるか、予想できてるからこそ感じるものであった。


…同時に、一つの疑問が生まれる。


気功術、というのは、読んで字の如し、自らの気力を消費してこそ成せる術。人間にとって気力は動力源であり、これがなければ生きる屍と同じ。それゆえ、より強力な技など放てばその分消費する気力は激しいはず。


にも関わらず、龍二は何発も、さらには今のような強力な技を放っているのに全く気力を消費する気配がない。むしろ、さらに増えていっている気がしてならない。おまけに、先程の『龍閃双脚』は下手すれば足の筋肉がバラバラになることは必須。普通の人間ならばありえないことばかりである。





そう、“普通の人間”ならば、の話。





『!?ま、まさか……うぬは!!』


何かを思い出したかのように叫ぶ紅左衛門。




しかし、それは最後まで言えることはなかった。




「そんじゃあ……消えな。」



冷たく言い放ち、エルの刃を返して上空にいる紅左衛門めがけて振り下ろす。



【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】



同時に、槍は雷と炎を散らしながら上空へ向かって飛んでいく。


当然、その軌道上には、紅左衛門がいた。






『うぬは“荒木家”のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!』


やがて槍は、絶叫する紅左衛門を飲み込んで暗い雨雲の中へと吸い込まれていき…








【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!】








「うわぁ!!」

「くぅ!!」


遥か上空で爆発し、白く明滅した。その爆風は、地上にまで及んで周囲を揺らす。


雅達は顔を覆って爆風に耐え、龍二は一人、エルを振り下ろした体勢のまま動かない。





【オオォォォォォ……】


やがて風は止み、再び静寂が訪れた。


「………。」


まず最初に腕を降ろしたのは雅。



もはや職員室の面影はなく、とゆーより校舎は半壊していた。天井も消え失せている。


そして、空を覆っていた雨雲は爆風によって綺麗サッパリ消え去り、夜空には星が瞬いていた…。





「………ま、【ピーーーーー】分の一ならこんなもんだろ。」



そしてまた敵を作りそうな発言をして構えを解いた龍二であった…。







〜校舎外〜



【ズ〜ルズ〜ルズ〜ル】


「……………。」

「ふぅ…こいつらまた体重増えたかな?」


【ズ〜ルズ〜ルズ〜ル】


「……………。」

「?どしたお前ら黙り込んで。」

「…リュウジさん……




二人はケガ人なんですから丁寧に扱ってあげないとまずいんじゃ…。」

無問題もうまんたい。」

「いやダメだろ。」


紅左衛門が消え、結界が解かれた校舎から外に出て龍二達は暗い雑木林のぬかるんだ道を歩いている。



そして龍二の両手には、気絶している香苗と花鈴の襟が握られていた。当然、二人は目覚めない上に泥まみれ。そんな龍二に真冬に食べるカキ氷並(?)に冷ややかなツッコミを入れる雅。


「にしてもよぉ…俺、今回のこと夢に出そうだ…。」

「まったくだ…もうあたしはこんなことこりごりだ。」

「【コクリ】」

「はぁ…。」

「「ふぅ〜…。」」


上から恭田、久美、リリアン、スティル、ロウ兄弟。皆揃って疲労の色が見えている。


まぁ、術食らって地べたにべったりくっ付いてたから無理もないね。


「…ところでヒグラシ?」

「?何じゃ?」


先頭を歩く日暮に、フィフィが声をかけた。


「あの…ベニザエモンって奴、一体何者だったの?あんた知ってたみたいだけど。」

「ああ…あ奴か。」


やられたのを思い出したのか、若干苦笑しながら言う。


「あの者は大昔…まぁ平安時代辺りじゃな。名のある陰陽道の一族だったんじゃが、どうも野心が人一倍強い男だったみたいでのぉ。不老不死になるために己の体に悪霊を降ろし、結果肉体は失い、挙句はあの校舎が建つ前にあった墓場に我が先祖によって魂を封印されておったんじゃが…校舎が建って墓場が無くなり、封印の力が弱くなったみたいでの。」

「ふ、不老不死…。」

「そ。じゃがまぁ、それを維持するために生贄を必要としておったらしくてな。ワシはそれを調査するためにここに来たってわけじゃ。」

「…哀れな男…。」

「自業自得じゃ。」




そんな会話をしながら、雑木林を抜け、龍二達は校門前で立ち止まった。


「さて、と…おお、そうじゃお主らに言っておかねばならんことがある。」

「?」


日暮は龍二達に振り返った。


「もうあの校舎には近づくでないぞ?悪霊どもの気配は消えたとはいえ、あそこは負の念が強いからのぉ。」

「?どういう意味?」


クルルが首をかしげた。因みに頬に龍二が貼った絆創膏がついてる。


「あの場に留まっておったら、そのうちネガティブでイラつくくらい内向的な性格になるという意味じゃ。わかったか?」

「はーい。」

「魔王、授業じゃないんだから…。」


元気一杯なクルルに対し、満身創痍状態のアルス。頭に包帯を巻いているので、一番重傷であった。因みに日暮はちょっと足をすりむいた程度。


「うむ…それと…。」

「?」


そして日暮は、両手に香苗と花鈴の襟を掴んでいる龍二へと目を向ける。


「…お主、龍二じゃったな?」

「おうよ。自己紹介まだしてないのによくわかったな?」

「アルスらがお主の名前を呼んでおったし、第一お主のことをこの学校で知らん者はおらんじゃろうが。」


そりゃそうか。


「…それより…お主は…。」

「あ?」

「………………。」


言いかけ、躊躇うかのような表情になる日暮。


「…………いや、やはり何でもない。」

「何じゃそりゃ。」

「…ま、ともかくお主らには色々助けられたからの。礼を言っておくぞ。」

「い、いえ。ボクらもヒグラシさんがいなければどうなるかわかりませんでしたし…こちらこそありがとうございました。」


皆を代表するかのように頭を下げるアルス。他の皆も頭を下げるが、龍二だけは首を傾げた。


「うむ…ではな。またいつか会うじゃろう。」

「そりゃ隣のクラスだったらな。」

「…ムードをぶち壊すでないわ…。」


龍二に呆れたようにツッコミを入れる日暮であった。


「…まぁよいわ。ではな。」

【シャリン】


踵を返し、錫杖の音を鳴らしながら濡れた暗い夜道を歩いていく日暮。



やがて街灯の明かりの下を通り過ぎ、暗闇にまぎれていった。



「…にしても、隣のクラスに陰陽師やってる人がいるとはなぁ…。」

「ああ…可愛いし。」

「関係ないだろ影薄。」

「ひ、ひどいぜ久美…。」

「いやでも、魔王様を脅かしていた輩は全員消え去ったみたいでよかったです♪」

「…まぁ、僕でもいやだからなああいうのは。」

「…魔族って幽霊苦手なんですか?」

「…さぁ…?」


雅達は校舎から出れて緊張がほぐれたのか、先程より和やかに会話する。


そんな中、龍二はまた首を傾げた。


「…つかあいつは何が聞きたかったのやら…?」

『さぁ…わからん…。』

「もういいじゃない、終わったことでしょ?」

「………だな、気ニシナーイでおくか。」


フィフィに言われ、やがて日暮が聞きたかったことなど頭から投げ捨てるかのように忘れた龍二とエルであった。




「…ところで…龍二、大丈夫だった…?」

「は?」


リリアンが龍二に声をかけた。


「あ!そうですよリュウジさん!大丈夫でした!?」

「心配したんだよ〜!?あの時計が鳴った後、リュウくんどこにもいないから〜!」

「どこ行ってたのよホントに…。」


皆が問い詰める中、龍二はキョトンとした表情になった。


「どこって…






“便所”行ってたんだよ。」



『…………………………………






は?』


長い沈黙の後、全員見事のハモった。


「いやだからぁ、便所。行く前に言ったんだが聞いてなかったのか?」

『いや、多分時計の音と言うの同時だったから聞こえてなかったと思うぞ?』

「ありゃま、そうなのか?」


『…………………………………………………。








何じゃそりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』






深夜三時、町中にそんな叫びが木霊し、どこかの家から怒鳴り声が聞こえてきたそうな。







〜おまけ♪〜



「………。」


そして全員、それぞれの家へ帰っていき(香苗は久美が送り届け、花鈴は龍二の家の和室で寝かせている)、龍二達も床についたのはよかったけど…。



「……なぁ、ものっそ寝にくいから一階で寝ろよお前ら」

「「や。」」

「ありま。」





その晩、龍二は恐がりのアルスとクルルに左右から抱きつかれる形で就寝したそうな…。





朝には二人ともベッドから蹴落とされたけど。


ってなわけで、ホラー編は完結です!


今回の長編を書きたかった理由は…ずばり、あいつの秘密がチラリ!

“あいつ”って誰のことかわかります?勘の鋭い方々なら分かるはずです。

まぁ、ホラーに挑戦してみよっかなぁ的なこともありましたけど。


それと…迅渡さん、ごめんなさい。責任とって腹切りをおおおおおおお!!(殴)


…いやホントすんませんでした。

鐵 迅渡先生の『そんなのって有りですか!?』をよろしく!!


…ちゃっかり宣伝して責任取ります。


えっと気を取り直し…次回からは普通の日常



の、前に番外編です♪それでは!!

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