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第百十五の話 闇の存在3

まずは…ごめんなさい、お待たせしました。もうバイトとかバイトとかバイトとか…はぁ。


とりあえず、本編どうぞ。あ、そうそう。あとがきにお知らせがありますのでそちらもどうぞ。


〜ライター視点〜



「か…カナエ…さん?」


何が起こったのかわからずに、アルスはただ呟くしかなかった。


「か、香苗…一体どうし「お主ら離れよ。」!?」


久美が言いかけた時、日暮が一歩前へと進み出た。


「…貴様、そこにおったのか。」

「…え?」


日暮の言葉に首を傾げたアルスだが…




『クハハ、今頃気付きおったか。』

「!?」




香苗の口から出た言葉に驚愕した。しかも口調どころか声色さえ香苗ではなく、声が低い男性の声となっていた。ただ、若干だが香苗の声も重なってるかのように聞こえる。


「…まさか生徒会長に憑いておったとはな……阿古田あこだ 紅左衛門べにざえもん。」

『フフフ、この女子おなごの真似をするのは実に愉快であったぞ?』


香苗、もとい紅左衛門はニヤリと笑った。


「気色の悪い趣味じゃな…ってそんなことどうでもよいわ。貴様、いつから生徒会長に憑いておったんじゃ。」

『昨日の夜からよぉ。偶然この女子が雑木林の近くを通りかかったんで体を拝借させてもらったまでよ。』


紅左衛門の言葉に苦々しげに顔をしかめる日暮。


「…ワシともあろう者が、お主を見破れぬとはな…未熟じゃったか。」

『フン。貴様如き駆け出し陰陽師なぞに見破られる程、この紅左衛門、愚かではないわ。』


やがて、紅左衛門の右手が黒く光だす。同時に、部屋の四隅から青白い炎が燃え上がり、暗かった部屋を青白く照らした。


部屋は明るくなったが、何故か薄ら寒い空気となった。


『さて、そんなことなどどうでもよい…それより我がどうしてうぬらをここに誘いこんだか…………わかるか?』


目だけをアルスに向け、問いかける紅左衛門。アルスの背筋に悪寒が走る。


「…な、何ですか…?」

『決まっておる……うぬらはなぁ、






生贄よぉ!!』


【ボォ!!】


「!アルス!?」

「!!」


久美が叫ぶと同時に紅左衛門の手から漆黒の炎が飛び出し、アルスは咄嗟に腕で顔を覆った。



【キィン!】



「…………え?」

「やはり…今までの事件は貴様の仕業であったか。」


しかし、アルスに炎が届く前に日暮が立ちはだかり、炎を“切り裂いた”。



手に持っている刀で。



「し、仕込み杖かよ…。」

「え、シコミヅエ?」


ボソリと呟く雅に首を傾げるクルル。


『ち、もう少しのところを…。』

「生憎じゃな、ワシはこう見えて剣術の方も会得しておるのじゃ。因みに免許皆伝じゃぞ?」


右手に持った元錫杖の柄、今では刀をヒュンと一振りし、左手に持った元錫杖の本体、今では刀の鞘を前方に突き出すように構えた。


「して?…どうなんじゃ真相は?今までの失踪事件は全て貴様の仕業なのか?」


鋭い目つきで紅左衛門を睨みつける日暮。やがて紅左衛門はユラリと揺れ、再び右手に漆黒の炎を凝縮させた。


『クハハ…その通りよ。』

「失踪…?」


一人、ふと考え込むアルス…。


「…!まさか………お前!」

『あぁ?何だ小娘。』


紅左衛門から感じる妖気に足がすくみそうになるも、アルスは懸命に堪える。


「お前…リュウジさんをどこにやった!」

『リュウジ?……ふむ、あの小僧か。』


一瞬考える仕草をし、ニタリと笑う紅左衛門。


『さぁてなぁ……どこへ行ったのやらな?』

「!こ、この……!」

「くぅ!!」

「二人とも、落ち着きなさい!」


剣を鞘から抜こうとするアルスとクルルを、フィフィが抑える。


「そうじゃ…冷静を欠いてはならん。」


紅左衛門を睨みつけながら、口だけでアルス達を制する日暮。刀からは明かりとなっている青い炎が映り、ギラギラと輝いている。


『クカカ…冷静を欠こうが欠かまいが、所詮貴様らは単なる人間。我に敵うわけがなかろうが。』

「ほほぉ…えらい自信満々のようじゃなぁ…。」


日暮は刀を手首だけで一回転させ…




「ならばその自信、根元から断ち切ってくれる!!」




一足飛びで駆け出す日暮。あっという間に距離を詰めていった。


「はぁ!」

『ふん!』


日暮が放った神速の袈裟切りを横っ飛びで回避する紅左衛門。わずかにできた隙を狙い、右手の炎を日暮に向けて撃ち放つ。


「ちぃ!」


回避がとれないと悟るや、左手の鞘を炎に叩きつける。炎は息を吹きつけるかのように消え去った。


『なるほど、杖自体に浄化のまじないをかけておるか。』

「当たり前じゃ。貴様ほどにもなるとこれくらいはせんとな。」


一瞬で間合いを取り、構えて睨み合う両者。紅左衛門は両手に炎を出し、日暮は先程と同じ構えを取る。


『だがまぁ…その程度の力ではな。』

「まだ本気を出してなぞおらんわ。見くびるでない。」

『小娘が…調子に乗るなよ?』


若干表情を歪ませた紅左衛門は右手に纏った炎を日暮に向ける。


『死ね!』

「はぁ!」


そして再びお互い間合いをつめ、激しい攻防を始めた。






「うわ…すげぇ…。」


恭田が二人の戦いを見て呆然と呟く。


一行は、なるべく安全圏に避難して戦いを見守っていた。


「…速い…。」

「目で追えませんね…。」


リリアンとスティルがポツリと呟く。現に、戦っている二人は一瞬姿が見えなくなるなどの光速戦闘を行っている。


日暮の剣戟を避けつつ闇の火炎を撃つ紅左衛門、それをトリッキーな動きで避ける日暮…それの繰り返しである。


「…大丈夫なのか?見てて何だか危なっかしい気がする…。」


「…でも見た感じ日暮はかなり手馴れだし…油断さえしなければ…「まずいでしょ。」…??」


久美の言葉を遮るかのようにフィフィが言う。


「?フィフィ?」

「…戦ってる相手がまずすぎるでしょ?」

「え…………………………………



!!!」



じっと戦闘を見つめ、ふと気付くアルス。






日暮が戦っているのは、紅左衛門に“憑依されている香苗”。あの漆黒の炎も香苗のものではなく、紅左衛門が操っているからこそ成せる技。


日暮も戦っている相手のことをわかっているようで、うかつに攻撃できずに戦いにくそうである。


つまり、香苗は人質同然であり、明らかこちらの劣勢なのだった。


『どうしたぁ!?攻撃できんのかぁ!?クハハハハハハハ!!』

「くっ……卑劣な!」


攻撃の手を休めない紅左衛門に対し、防御に徹する日暮。今の状態が続けば、勝敗は明らかだった。






「…確かに、まずいですね…。」

「…ど、どうしよう…。」

「カナエさん…。」


悔しげに唇を噛むアルスと、心配そうに呟くクルルとケルマ。


日暮が紅左衛門を切る、もしくは紅左衛門日暮を倒す……どちらに転んでも最悪な結果は免れない。


「…何とかできないのか?せめて香苗を傷つけずにあいつを外に引っ張り出せたら…。」

「無理です。この空間で働く力で魔法は使えないようになってます。」

「そもそも、僕らの魔法は攻撃専門だから下手に使ったりでもしたら…。」

『………。』


全員沈黙した…明らか絶望的である。




「……あ。」

「?…フィフィ?」


ふと何かを思いついたかのようにフィフィが声を上げた。


「…あのさ…もしかしたらだけど、



私ならカナエの中にいるあいつ、引きずり出せるかもしんない。」

「!?ほ、ホント!?」


アルスは思わず身を乗り出した。


「うん…でも確立は低いよ?私でもやったことないから。」

「そ、それでも可能性があるならやってみる価値はある!」


自信無さ気なフィフィに対し、久美は力強く言う。


「でも、そんな魔法あるんですか?第一、この空間では魔法は…。」

「私を誰だと思ってんの?妖精族よ妖精族。こんな空間なんかへっちゃらよ。」


スティルに説明するフィフィ。元々、妖精族は魔力の塊のようなものだから、例え妖精族の子供でも人間の魔術師では足元にも及ばない程の魔法の量を放つことができるわけで。


つまり、魔法の力の方がこの空間の力より勝っているため、フィフィは魔法を使えることができる。


「…わかった。フィフィを信じよう。」

「…うん。」


若干不安を拭い切れない感じの雅とクルル。


「…フィフィ、頼む。」

「お願いします!カナエさんを…。」


ホントは自分達が何とかしたいのに、何もできずに歯痒い気分になりながらもフィフィに懇願するロウ兄弟。


フィフィは小さく頷き、日暮を激戦を繰り広げている紅左衛門をキっと睨みつけつつ、魔法の詠唱に入った。






「ちぃ!」


フィフィが詠唱に入ってる間、日暮は飛んでくる炎を避けるのに精一杯だった。


『クハハハハハ!もう息切れか!』

「…やかましい。お主は息切れすることないじゃろうが。」


漆黒の炎を背後に揺らめかせ腕組みしながら不敵に笑う紅左衛門に対し、刀を支えのように床に突き刺して睨みつけながら立つ日暮。


体に目立った外傷はない。せいぜい服が焼け焦げてるくらいだ。ただ、やはり人間には体力というものがあり、炎を必死で避け続けるしかない日暮はすでに息が上がっていた。


『やはり、我と対等に渡り合うことはできても所詮は人間…他愛もないわ。』

「やかましいと言っておるじゃろが。一般人を盾にしてるお主に言われる筋合いなどないわ。」

『盾ぇ?我はただこの娘の体を借りているだけだぞ?盾にしてる気などないがなぁ?クフフフ…。』

「…外道めが…。」


明らか確信犯である紅左衛門により一層目つきを鋭くさせる日暮。


『さて…そろそろ終わりにしてやろうか。』


スっと右手を上げ、炎をその先に収束させる紅左衛門。炎はじょじょに形を作っていき、やがて四散すると漆黒の刀となった。


「…今頃武器か…なめられたものじゃな、ワシは。」

『人間風情に使うのは勿体ないが…楽しませてくれた礼だ。楽に殺して進ぜよう。』

「楽しませる気など毛頭なかったわい。勘違いするでないわ、このクズ幽霊が。」


やはり相手を罵倒する元気はあるらしい日暮。


『…うぬのその減らず口…



今すぐ閉ざしてくれる!!』


今の言葉にカチンときたのか、刀を大上段に構えて一瞬にして間合いを詰めた紅左衛門。


「な……!?」


【ガキン!】


あまりの速さに対応が遅れてしまい、避けられずに刀で防御に移った日暮。


「ぐぅ…!」


しかし、力は紅左衛門の方が上らしく、頭上から刀をずんずん押し付けていく。鍔迫り合いから逃れようにも、力が強すぎて動けない。


『これで終わりだ…………死ね!!』


さらに力を込め、日暮を押しつぶさんばかりに全体重を乗せていく紅左衛門。


ただ歯を食い縛って耐え続ける日暮の顔のすぐ前に、漆黒の刃が迫っていき…







「悪しき闇、善しき光の前に屈せよ!『リビス・フェルエル』!!!!」

『な……!?』



日暮を真っ二つにせんと迫っていた刀が、一瞬にして離れた…否、消えた。


それもそのはず、フィフィが詠唱の終わりと同時に放った光弾が紅左衛門に炸裂し、吹き飛ばしたからである。その時に紅左衛門が持っていた漆黒の炎で作られた刀を破壊、もとい消したのだった。


【ドンッ!】

「かは!」


派手に吹き飛んでいった紅左衛門は部屋の壁に背中を強かに打ち、苦悶の表情を浮かべた。


「!?か、香苗!?」

「カナエさん!!」


久美とケルマが駆け寄ろうとした。


「…!待って!」



しかし、それをアルスが手で制する。


その手を払いのけようとしたケルマ…






『おのれ…珍妙な小動物風情が…。』






「!?」


しかし、いきなり部屋中に響き渡る声に驚き、手を止めた。




声は、明らか紅左衛門の声…だが、今の紅左衛門…に憑依された香苗は、壁にもたれながらぐったりとしている。



【ォォォ……】



…やがて、香苗の体から先程の炎が立ち昇る。しかし、攻撃のものではない。


炎はやがて香苗から離れ、部屋の天井まで昇っていき、




人の形となった。




「…ようやっと正体現しおったな。」


日暮が体勢を立て直し、刀を構える。


人型の炎…もとい紅左衛門は、人間の体型で言うとスマートな姿ではあるが、顔はメラメラと黒い炎が燃え盛るのみで、まったくわからない。


それが、天井近くで浮いていた。


『…ふん。生身の肉体よりも、こちらの方が動きやすい分好都合…。』

「明らか強がりにしか聞こえんな…まぁよい。ワシとてそっちの方がやりやすくてしょうがないのでな、むしろこちらの方が好都合じゃ。」


日暮の嘲笑とも言える笑みを見て、より一層炎を燃え上がらせる紅左衛門…相当怒ってると見える。




「香苗!」

「カナエさん!」


久美とロウ兄弟が、紅左衛門の注意を日暮が引き付けている間に壁にもたれている香苗に駆け寄る。


「アルス!」

「は、はい!」

「オッケー!」


フィフィにうながされ、アルスとクルルはそれぞれ剣を手にして日暮の下へと駆け寄る。


「!?お、お主ら……。」

「ボクらもやります!」

「私もいくよー!」


驚く日暮を挟むかのように立つアルスとクルル。二人は剣を構え、宙を浮かぶ紅左衛門を見据えた。


『チッ…雑魚が何匹集まろうが、我に敵いはせん!!』

【ゴォッ!!】


右手が燃え上がり、そこから先程の刀が現れる。


「…ふぅ、しょうがないのぉ…。」


やれやれ、といった感じで刀を握りなおす日暮。


「お主ら、ワシを援護せい。ワシが何とか隙を作り出す。」

「はい!」

「うん!」

『調子に乗るな!小娘どもがああああああああ!!!』


紅左衛門が刀を薙ぎ払うと、そこから漆黒の炎が剣の軌跡と同じ形をしてアルス達に迫る。


「でやぁ!『ウィンドスラッシュ』!!」

【ビュン!】


アルスが緑色に輝く剣を振るうと、そこから突風が吹き出して炎を掻き消す。アルスは、フィフィが髪の中で体に魔力を注ぎ込んでいるため、魔法が使えるようになっている。


『この!』



「オンキリキリバザラバジリ、ホラマンダウンハッタ!!」



日暮の声が響くと同時に、紅左衛門は体を拘束させられたかのように硬直する。


『なに!?』

「そりゃあああああああああ!!」


そこをすかさず、跳躍したクルルの剣が紅左衛門に迫る。


『おのれこざかしい!!』

【ボォ!!】


クルルの攻撃が当る寸前、紅左衛門はパっと燃えた瞬間その場から消える。


「あ、あれ?」

『クハハ!馬鹿め!!



ナウマク・サマンダ・バザラダン・カン!』



着地してキョトンとするクルルの背後で真言を唱える紅左衛門。すると、彼の周囲に炎が渦巻き、そしてクルルに向けて疾走していく。



「風は返りて北に吹く、急ぎ律令に従うべし!」



しかし、日暮の声と同時にどこからか風が吹き、炎は紅左衛門へと押し戻される。


『おぉっと。』


しかし、急上昇するかのように浮かび上がり、炎を回避する紅左衛門。


『クハ、呪詛返しときたか…なかなかやりおるわ。』

「言ったであろう?今の貴様の状態だとやりやすくてしょうがない、と。」


ニヤリと笑う日暮。それに対し、呻くかのような声を上げる紅左衛門。


『…やはり、小娘だと思って甘く見すぎておったか…。』



「女だからって甘く見てたら痛い目に合いますよ?」

『なに?』


紅左衛門の背後から声がし、振り返る。


『ボルトランサー!!』

『水よ、切り裂け!!』


至近距離から左手に形成した光の槍を振り上げるアルスと、青く輝くフィフィ。


『うぉ!!』


避けきれずに刀で防御した紅左衛門は、光の槍と水の剣に弾かれて吹き飛ぶ。


「今じゃ!



春は呼ぶ、夏は言う、秋は哭く、冬は呻く、急ぎ律令に従うべし!」



日暮の手から投げつけられた御幣は、紅左衛門の下へと飛んでいく。


『ちぃ!



オン・バザラギニ・ハラチハタヤ・ソワカ!!』

【バチィ!】



受身を取るかのような体勢のまま印を結び、真言を唱える紅左衛門。御幣はそのまま折れ曲がって落ちていった。


『甘い、甘いぞ小娘!式など我には通用せんわ!』

「甘いのはそっちじゃ!」


御幣が落ちる寸前、日暮は一瞬にして間合いを詰めていき、刀を振るう。


【ガギィン!】


『ぐお!…生意気なぁ!』

「くぅ…!」


日暮の刀にかかったまじないの光と、紅左衛門の炎がせめぎ合って激しく火花を散らす。わずかだが、紅左衛門の炎の方が勝っていた。





が、日暮はそんな状況で微笑を浮かべる。





「行っけえアルス!!」

「とやああああ!!」

「てええええええい!!」



紅左衛門が鍔迫り状態なのを見計らって、背後から剣を振りかぶるアルスとクルル。


要は、日暮は囮だった。完全無防備を作りだし、その隙に一斉に叩く、という単純かつ効果抜群な作戦である。


((((殺った!!))))


この時、四人は確実に仕留めたと確信した。







『…甘いわぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!』

【ズゴオオオオ!!】

「!?うわぁ!?」

「きゃあ!?」

「何!?」



突如、激しく燃え上がる紅左衛門。突然のことで、三人は全く反応できずに吹き飛ばされる。



アルスは壁まで吹き飛び、背中を強かに打って跳ね返るかのように床に叩きつけられた。あまりの衝撃に悲鳴も上げれない。


クルルは机を破壊しながら吹き飛び、机の残骸の中に埋もれ、日暮は部屋の奥まで吹き飛んで数回転がってようやく止まった。


「!?お、お前ら!!」

「アルス!」

「魔王様!!」

「くっ…!」


戦いの場から離れた位置で、三人を見守っていた雅達は駆け寄ろうとする。



『オン・キリキリ・オン・キリウン・キャクウン。』

「ぐぁ!?」



だが、紅左衛門が真言を唱えると、雅達は床に叩きつけられたかのように倒れた。


「な、何だこれ!?動けねえ…!」

「く…拘束呪文…。」


起き上がろうとする恭田と、悔しげに呻くリリアン。当然の如く、動けない。



「か……はぁ…!」

「ちょ、アルス!しっかりして!」


一番ダメージが大きかったのか、口の端から血を流しつつ呻くアルス。フィフィはアルスの横に立ってアルスの肩を揺らす。


『クカカカカカカ…生意気な小娘どもが、調子に乗るからだ…。』


余裕を取り戻し、愉快気に笑う紅左衛門。ただ、やはり顔は見えない。


『さて…と。散々手間取らせてくれたが…ようやく生贄にありつけるわい。』


刀の峰で左手の掌を叩きながら、一行を品定めするかのように見回す紅左衛門。


『…ふむ……




まずは、うぬからいただくとしようか。』

「…!」




その視線が止まった先には、一番近くで倒れているアルス。




「!あ、アル…ス…!」


リリアンが這ってでも近寄ろうとするが、それでもピッタリと床に張り付いたかのようで、全く身動きがとれずにいる。


「…くぅ…!」


剣を支えに、ゆっくりと起き上がろうとするアルス。


『クハハ、足掻くだけ無駄だ。』

「!?」



いつの間にか目の前に立ち、アルスを見下ろす様に顔を下に向ける紅左衛門。動こうとするアルスだが、剣を支えにして立ち上がるのに精一杯だった。


「あ、アルス!動いて!早く!」

「く……あぁぁ…!」


フィフィに叩かれつつ、何とか逃れようと足を動かすアルスだが、かなり動きが鈍い。


『足掻くだけ無駄、というのが…わからんか?』


ブン、と刀を一振りし、嘲りを込めて言う紅左衛門。


『それでは…






我の一部となれええええええええ!!!!』

「アルス!!!」



フィフィが叫ぶのと同時に、紅左衛門が黒く燃え盛る刀を振り上げた。



そして刀はアルスの頭上へと振り下ろされ…









【ドオオオオオンバキィ!】

『!?へぶぅ!?』




…ようとしたが、突然職員室のドアが爆音と共に飛んできて紅左衛門に炸裂した。


「!へ!?」

「…ぅ…。」


驚き、入り口へと目を向けるフィフィと、かろうじて目を開くアルス。





そこに立つのは、救世主。全ての闇を切り払い、浄化の炎で焼き尽くす覇者。



大いなる光を湛えながら、その者は威厳溢れる言葉を発するため、口を開く。










「荒木龍二、コメディー引っさげて只今参上!!!!」



台無し。


まえがきで言っていたお知らせです。


今回、秘密基地様の方でコニ・タン先生という方がおもしろそうな企画が建てられました。俺も参加します。

どたばたコメディーを書いている皆様、是非覗いてみてください。

URLも一応張っときます。

『http://hp23.0zero.jp/bbs/kiji.php?uid=himitukiti&dir=382&num=3&th=&unum=1211640598305&m_no=0』


それでは、皆様またいずれ!次回、龍二が大暴れ!

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