第百四の話 エルの抗議
〜龍二視点〜
「テメェは許可なしに人の夢の中に入るのが好きみたいだな。」
「誰が好き好んで貴様の夢の中になど・・・。」
「夢の中で死んだらどうなるんだ?」
「ごめんなさいホントごめんなさい嘘です冗談です。」
真夜中、ぐっすり気持ちよく眠ってるところをこのバカ剣女ことエルは、またもや俺の夢の中に入り込んできやがった。夢の中ぐらいゆっくりさせろや。
まぁ怒ったってしゃーないから、とりあえず付き合ってやることにする。どうやら夢の世界(つってもメルヘンじゃなくて辺り一面黒一色)では俺は空中浮遊ができるから胡坐かいたまま連続宙返りをやってみた。おぉ、これ結構おもしろい。
「・・・ところでリュウジ、ちょっと聞きたいことがあるのだが・・・。」
クルクル〜クルクル〜。
「おう、何だ。」
「・・・最近、私のコアを殴る回数が増えてないか?」
クルクル〜クルクル〜
「気のせいだろ?」
「明らか気のせいではない気がするのは私だけか?」
クルクル〜クルクル〜。
「人ってのは過去を振り返っては前に進めねぇのさ。」
「いい事言ってるっぽいが言い訳にしか聞こえないぞ。」
「さいで。」
クルクル〜クルクル〜。
「ともかく、貴様の握力は尋常じゃないんだからやめて欲しいんだが・・・。」
「へいへい。」
「返事が曖昧すぎやしないか?」
「まぁな。」
「認めた!?」
クルクル〜クルクル〜。
「・・・で、何でさっきからクルクル回転してるのだ貴様は。」
「おもしろいからに決まってるだろ!!」
「そこキレるところか!?」
楽しいことを楽しくなさそうと言われたら怒るぜ普通?え、そうじゃない奴もいるの?あ、そうかいそうですかい。
「で?何の話だっけ?」
回転を止めて、胡坐をかきながら空中浮遊。仙人みたいだ。
「だから私のコアを殴るのはやめて欲しいと言っている。下手したら死ぬぞ私。」
「死ね。」
「え、それ純粋に傷つく・・・。」
イッツジョーク。ブラックジョーク。
「まぁそれは嘘として。」
「それは嘘では済まない世の中なのだぞ・・・。」
「黙れ。」
「す、すまん・・・。」
足を振り上げたら顔真っ青にして謝るエル。前の夢の中での後遺症か?
「で?用件それだけ?それなら蹴っ飛ばすぞ。」
「いや、それは二つのうちの一つの理由だ。もう一つ、大切な用件がある。」
よし、蹴るのは後者の話を聞いてからにしよう。
「まぁ、私にとっては重要なのだが・・・。」
ふんふん。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
・・・(怒)
「!?す、すまない!言う!言うから手に氣を集めるな!言ったらなんか蹴られると思ったから言うのを躊躇っていただけだ!だから拳を解け!」
しゃあないから握っていた右の拳を解いた。
「で?何なんだ。」
「あ、あぁ・・・実は、最近気付いたことなんだが。」
はいはい。
「・・・私の存在って何なのだ?」
「包丁。」
「即答!?どう言ったらいいのか迷ったりせず即答!?」
当たり前。
「そ、それはともかく!貴様が私を包丁として利用しまくるせいで様々な人間から包丁というレッテルが貼られているではないか!」
「だから?」
「だから!私の剣としての存在価値が薄くなってきてると言いたいのだ!」
「安心しろ。薄くなってるんじゃなくて無いに等しい。」
「もっとダメだろ!?」
「しゃーねぇじゃん利用するとこ包丁ぐらいしかねぇんだから。」
「だったら別のを考えろ!」
んだようっせ〜な〜・・・。
・・・・・・。
「じゃあさ。」
「・・・何だ。」
「・・・あるところに意思のある剣が二本ありました。」
「?」
「一本は持ち主にいつも逆らい、文句を言う生意気な剣。もう一本は持ち主に逆らわず、文句も言わない忠実な剣。二本の持ち主はいつも二本を剣として利用せず、木を切ったり、料理に使ったりしていました。
生意気な剣はそのことに大変憤慨していました。ですが忠実な剣は素直に従っていました。
ある日、生意気な剣がとうとう剣として利用しない持ち主にキレてしまいました。忠実な剣は横で大人しく生意気な剣が持ち主に向けて発する罵倒を聞いていました。
最初はただ受け流していただけの持ち主でしたが、だんだんと鬱陶しくなり、とうとうブチ切れました。持ち主は生意気な剣を持って裏の畑に行くと、そこにあった肥溜めの古いつっかえ棒を取り外し、代わりに生意気な剣をつっかえ棒の代わりにしました。
『これでつっかえ棒を作らなくて済む♪』
そう、つっかえ棒は持ち主の手製なのです。ですが一々作るのはめんどくさいので前のつっかえ棒を五年はほったらかしにしていました。
以来、生意気な剣は長い年月の間に肥溜めの臭気にあてられ、気が狂いました。そして暴れだしました。蓋落ちました。剣も(中に)落ちました。そして肥溜めの底へと沈んでいきました。
それからというものの、忠実な剣はよりいっそう持ち主に忠実になり、いいように使われていきましたとさ。めでたしめでたし♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
もちろん、この話はフィクションです。なのにエル顔真っ青。
「で?これからどうして欲しいお前?包丁以外として。」
「生意気言ってすいませんでしたこれからも包丁として利用してくださっても結構です。」
ならよしだ。
「じゃ、そろそろ寝たいから出てってくれねぇか?」
「・・・あぁ・・・。」
暗いよお前。何か暗いよ。
「あ、その前に。」
「?」
「ジャッジメント!」
「みぎょ!?」
蹴ったった。顔。
「な、何をす「さ、帰るか。」おおおおい!!??」
もう無視しよう。
やがて俺の体が上へと昇っていった。
「・・・クスン・・・。」
最後に見たのはエルが肩をがっくり落として落ち込んでる姿だった。
愉快愉快♪
思ったより大学はきついですね・・・更新難しいです。こうなったら土日に頑張るしかない!
とゆーわけで、ちょくちょく頑張ります!
で、次回香苗達出ます。一応報告です。