第九の話 やぁっと騒動始まるよ・・・やれやれ<後>
さて、その後はリリアンとカルマとケルマが放つ怒気を龍二が適当に収めつつ、一旦話し会いをしようというわけで、とりあえず龍二が仲介役に買って出て、勇者側と魔王側で話し合おうじゃないかというわけで雅達には和室へと移動させてもらった。スティルが目覚めたのは三十分後っつーわけで、前編の冒頭に至る。因みに龍二は緊張はしてません。ぶっちゃけ。
「さて・・・。」
龍二が沈黙の中喋りだす。
「まずは俺から言いたいことがあるんだが。」
『?』
「テメエら時間考えろや。」
因みに、今は十時半。もうよい子はおねんねの時間である。
「う・・・そ、それは・・・。」
「アルス・・・心配だったから・・・すぐに飛び出してきた。」
スティルを遮って言うリリアン。哀れだなぁスティル。
「じゃ何故に俺がお前と別れた後に来なかった?あ?」
ちょっと怒気を含めて言う。実を言うと、龍二はこんな時間に押しかけてきたスティル達に対して怒っていた。そりゃ夜遅くに来られたら怒るが、急用でどうしてもという事+いきなり来て申し訳ないとか礼儀というのがあれば別だ。現に、雅達はその事を肝に銘じているから怒る理由はない。
ところがどっこい、今目の前にいるスティルとリリアンとカルマとケルマは、いきなり来たのにすいませんの一言も言っていない。しかも自分達の用事なのに雅達が謝るというのは理不尽である。
ま、それよりも龍二にとって大事なのは・・・。
「テメェらのせいで今日見たかった番組見れなかったじゃんよ。どうすんのよオイ?」
自らの平和な時間を邪魔されたことだった・・・。
「ば、番組って何ですか「黙らっしゃい。」・・・ハイ。」
睨まれたスティルは押し黙った。
「・・・邪魔したことに関しては・・・ごめんなさい。」
無表情ながらも頭を下げるリリアン。
「謝ってすんだら警察いらん・・・と言いたいとこだが、まぁ心配する気持ちもわからんでもないからな。大目に見てやろう。」
「おぉ!リュウジさん太っ腹「ただし。」?」
フィフィの言葉を遮る龍二。
「次同じようなことしたら・・・『消す』。」
【ゾクッ((((;−□-))))】
『消す』という部分に殺気が込められ、思わず全員身震いした。和室にいる方々も殺気が届いていたのか一瞬で縮こまった。おまけにあえて『消す』という単語を使った為にリアリティが増した気がした。
『・・・ホントすみませんでした。』
テーブルに座っている面々は揃って頭を下げた。何故か龍二の家に最初からいたアルスとクルルとフィフィまで下げてるし。
「ふぅ・・・で?お前らは一体どういった関係なん?」
龍二が一息つくと、低姿勢だった面子にまた殺気が蘇った。
「貴様ら・・・ここまで来るとはしつこい連中とはな。おまけに魔王は少女に化けていると見た。」
スティルがいつもよりドスを効かせた声で言う。
「い、いやでもあれは私達が偶然巻き込まれたわけで・・・第一、これは私の元の姿なわけで・・・。」
魔王、お前微妙に低姿勢だぞ。
「でも・・・手間が省けた・・・。」
そしてゆっくりと斧を持ち上げるリリアン。
「ここで・・・殺す。」
「え、ち、ちょっと!?」
「おい待て。」
クルルが慌てる。おいおい。
「魔王様、ここは我々が。」
「この間の怨み、晴らさせてもらうぞ!」
「お前らも待て。」
カルマとケルマがそれぞれレイピアのような剣を異次元から引き抜き、立ち上がる。
「ちょ、ちょっとリリアン!?」
「上等だ・・・ここでケジメをつけさせてもらうぞ!!」
「おい、落ち着けって。」
スティルも杖を取り出して構える。
「よっしゃー!返り討ちよーーー!!」
「待てって。」
そして赤く光るフィフィ。
「って、スティル!?フィフィまで!?」
「おい・・・。」
仲間は本気でやりあおうとしてるのに、リーダーである勇者と魔王が慌てるってどうよ?
「「死ね!勇者ども!」」
「殺す・・・。」
「ここで終わりだ!」
「ファイアー!!」
「「やめてってばぁ!!」」
「・・・。」
『おいっつってんだろーがこんの頭パーどもがああああああ!!!!!!』
『!!!!???』
龍二が怒鳴って静まり返ること三分(全員そのままの姿勢で硬直)・・・。
『スワレ。』
『ひ、ひゃい・・・。』
あまりの龍二のキレっぷりに怯えながらも座りなおす一同。ついでに今の龍二のセリフも無機質なものだった。
「よし、とりあえずお前らがお互い敵同士だったてのはわかったが・・・アルス、クルル。」
「「は、はいぃ!!」」
すぐさま姿勢をピシっと直す二人。
「お前ら敵同士なのに仲いいよな?何で?」
「「・・・。」」
龍二よ、それはお前が気が付かないだけで最初なんて本気で殺し合いしてたんだぞ?
「そうなんか?」
作者に聞いちゃいかん。
「あ、そう。」
だから返事すなっつーの。
「リュウジさん、誰に話しかけてんの?」
「天の声。」
「???」
クルルが聞くが、当然理解できなかった。
「ま、別にどうだっていいや。」
『いいんかい。』
そして一同、龍二のどうでもいいや発言にツッコミ。じゃ聞くなよと言いたい。
「でもまぁ、始終そうやって喧嘩されたらたまらんな・・・。」
腕を組んで考える龍二。やがて何か思いついたかのように手を叩いた。
「そだ。ええこと思いついた。」
何故に中途半端に関西弁?
「はい、和室にいる方々〜。全員集合〜♪」
楽しそうに言いながら和室に向けて手招きする龍二。
「何だよ?」
雅が最初に出てきた。
「まぁいいからいいから。」
適当に流す龍二。やがて全員出てきて、頭の上に?を浮かべた。
「さてと・・・。」
「じゃ第一回、『どいつの家で居候すっか今決めちまいましょうぜ大会〜!!!』」
【ドンドンパフパフ〜♪】
『・・・。』
『何だとーーーーーーーーーーーーー!!!!!????』
いきなりの発表に勇者チームと魔王チーム(全員書くのしんどいからこんな感じで省略)がツッコミをいれた。因みにさっきの効果音は龍二がどっからか出したラッパとクラクションである。
「ち、ちょっと待ってよ!居候って何なのさ!?」
「居候・・・他人の家に寄食すること。またその人。食客。ついでに広辞苑参照。」
「そういう意味じゃなくて!あとコウジエンて何!?」
アルスの激しいツッコミにも顔色変えない龍二。
「いやだってさぁ、メンドイじゃんか。ここでいきなりはい、仲直りってゆーわけにもいかないっしょ?だったら手っ取り早く俺らの家で居候してこの世界で馴染んでって仲良くなったほうがいっしょ?」
「だからって何故に居候なんだ?」
雅が最もなことを聞く。さすが常識人。
「社会勉強だ。」
「なるほど、って納得しかけたけどやっぱおかしくね?」
「細かいこたぁ気にすんな。」
「む・・・しょうがねえな。」
おい、常識人。
「それによ、帰る方法はあるんか?見た感じ無さそうなんだがな?」
「か、帰る方法なら・・・あ。」
勇者チームと魔王チームは一斉に龍二の肩を見る。そこには、チョコンと座っているフィフィが。
「そういえば、私達がここに飛ばされた原因は、フィフィが時空魔法使ったからなんですよね?」
「そういえば・・・そう。」
「じゃもっかいフィフィが時空魔法唱えれば・・・。」
「ボクらも帰れるってことですよね?」
「そうなるな。」
「で?どうなのさフィフィ?」
全員がフィフィに注目する。
「・・・。」
それに対し、顔がだんだん青くなってゆくフィフィ。
・・・。
これはあれだね。“やっべー”って顔だね。
「え、え〜っと・・・。」
言いよどむフィフィ。それをじ〜っと見つめる一同。
「じ、実は〜・・・。」
「時空魔法って・・・“一回こっきり”しか使えないのよね・・・。」
『・・・。』
やはり沈黙。
「えっとそれはつまり?」
微妙に棒読みなアルスが聞く。
「つまりはね・・・帰れませ〜ん♪」
テヘっと可愛らしく舌を出すフィフィさん。
『・・・。』
『ふざっけんなーーーーーーー!!!!』
「ぴえぇ!?」
【ビュン!】
物凄い速さで龍二の背後に隠れるフィフィ。隠れられた本人はいたって平然と鼻くそほじっていた(オイ)
「帰れないってどうゆうことフィフィ!?」byアルス
「それって永久にここにいろってこと!?」byクルル
「まだやるべきことがたくさんあるのに!?」byスティル
「フィフィ・・・責任取る・・・。」byリリアン
「「とゆーか舌出してごまかそうとすな!」」byカルマ&ケルマ
「あうぅ〜。」byフィフィ
もう何が何だか。
「まぁとにかく落ち着きやがれテメェら。」
龍二に言われ、立ち上がっていたアルス達は渋々席に座った。純粋に龍二を怒らせるのが恐いから、という意味も含めて。
「まぁ、どっちにせよ帰れなくなっちまった。ってことだな。」
『・・・。』
龍二に言われて無言になる一同。
「じゃ、それぞれ居候決定〜♪つーことで。」
「や、やっぱりちょっと待ってよ。」
アルスが手で制する。
「何だ?」
「いや、だって・・・居候だよね?ってことは一つ屋根の下で暮らせっていう意味ですよね?」
「そうに決まってんじゃん?」
「それなら、皆さんの意見も聞かないといけないじゃないですか。いきなりそんなこと勝手に言われたら皆さん困るでしょうし・・・。」
アルスのその遠慮しがちなセリフに、龍二はため息を吐く。
「なんだそんな事か。俺はいつでもバッチコイだぜ?今両親共々不在だし。」
「俺の家も別に・・・なぁ姉さん?」
「私の家なら誰だって大歓迎よ♪」
「あたしの家だって大丈夫だ。」
「そうね♪新しい家族が増えたと思えば。」
「私達だって基本何でもオッケーよね♪」
「ねー♪」
「・・・別にいい。」
何ともおおっぴらな性格な人々である。
「は、はぁ・・・。」
そんな彼らに唖然とするアルス。
「ま、そんなこんなで誰がどの家に居座るのか、適当に決めちまうべ。」
さっさと寝たい龍二は何かどことなく投げやりな感じになってきた。
「じゃまず雅の家にはスティルな。」
「何でだ?」
「最初に出会ったのが雅だろが。妥当だろ?」
「あ、なるほど・・・うぅ。」
適当という割には理にかなってんじゃん。でもスティルが何か涙こらえてるが何でなのか作者は知らん。
「そんで久美の家にはリリアンな。」
「まかせろ。責任もって世話するぞ。」
「私・・・犬じゃない。」
「い、いやそーゆー意味で言ったわけでは・・・。」
さっそくリリアンに遊ばれる久美。
「で、カルマとケルマは香苗の家。」
「わ、わかりました・・・。」
「まぁ、行くあてもないし。」
「じゃ、今日からこの子達の遊び相手ね。」
「よろしく♪」
「よろしく・・・。」
「「・・・。」」
美紀と美香の眩しい笑顔に顔を赤らめるロウ兄弟。
「で。俺ん家には・・・。」
「・・・フィフィとボクと?」
「私?」
「そ。」
それを聞いて若干渋い顔をする久美と香苗姉妹。
「これで異論はねえな?」
龍二が全員に聞く。
「別にないな。」
「スティルくんなら慣れてるから大丈夫ね。」
「よ・・・よろしくお願いします・・・。」
意気消沈気味なスティルだが異議はない。
「まぁ・・・龍二に限ってそれはないしな。」
「よろしくねリリアンちゃん♪」
「よろしく・・・。」
別の件で異議がある久美だが、居候オッケー。
「リュウちゃんが言うなら・・・。」
「む〜・・・。」
「・・・。」
「あ、あの・・・。」
「ま、まあ異論はないからな。」
メチャクチャ不満たっぷりな顔をしている香苗と双子の姉妹だが、まぁ異論なし。
「・・・わかりました。」
「グスン・・・。」
「まぁ・・・嫌じゃないしね(ぃよっしゃーーーー!!!)。」
「じゃ決まりだ。」
複雑な顔を見せるアルスと皆に怒られてまだ泣いてるフィフィと冷静を装っていて内心めちゃくちゃ喜んでいるクルルも賛成。
「・・・フィフィ、まだ泣いてんの?」
「うぅっ・・・クスン。」
龍二の服の袖を掴みながらグズグズと鼻を啜りながら泣く妖精。見てて可愛らしいが、泣かした人達にとっては罪悪感を感じずにはいられない。無論アルス達。
「あ〜あ〜もう泣くなよ。問題は解決したんだからさぁ。」
「うぅぅぅ・・・。」
「ふぅ・・・しゃあねえなぁ。」
ため息を吐きつつも袖にしがみついているフィフィに右の掌を差し出す。
「ほら、乗れ。」
「・・・。」
フィフィがおずおずと掌に乗ると、もう片方の手でフィフィの小さな背中を撫で始めた龍二。
『!』
それを見て固まるアルス、クルル、リリアン、久美、香苗、美紀、美香、涼子。
「よしよし。いい子いい子。」
子猫を撫でるかのような感じで擦る。
「・・・。」
効いたのか少しずつ泣き顔から眠そうな表情へと変わっていくフィフィ。
「よしよし。」
なでなで。
「よしよし。」
なでなで。
「よしよし・・・。」
なでなで。
「よし・・・よし。」
なで・・・なで。
「よし・・・。」
なで・・・。
「よ・・・。」
・・・。
「・・・グゥ。」
フィフィより先にダウンした龍二。
『って寝るんかい!!!!』
またもやハモりツッコミ(大多数Ver)が発動した。
「り、龍二!くれぐれも変な気を起こすな!!」
「何がだ?」
「ほらほら、妬いてないで帰るわよ久美ちゃん。」
「か、母さんしつこい!!」
「・・・早く行く。」
「じゃ俺らも。」
「龍ちゃん、今度私の頭も撫でて♪」
「帰るぞバカ姉さん。スティルも。」
「は、はい・・・。」
「いいなぁフィフィちゃんだけ・・・。」
「私達撫でられたよー♪」
「・・・イエーイ。」
「な、何でもボクらも・・・。」
「まぁ、嫌ではなかったな・・・。」
「玄関でギャーギャー騒いでないではよ帰らんかい。」
「「「はーい。」」」
「「はい・・・。」」
そんなこんなで、皆はそれぞれの家に帰っていった。もちろんボクの仲間と魔王の双子の部下をそれぞれ連れて。
あの後、リュウジさんに撫でられてるフィフィが羨ましくて皆して頭撫でてもらおうとして・・・あまりにもうるさくて怒鳴るのもめんどくさくなってきたらしいリュウジさんは、『また今度してやる』と言って皆を落ち着かせた。でも子供であるミキちゃんとミカちゃん、魔王の部下二人揃って撫でてもらっていた。理由は子供優先らしい。
それを見ていたボクまで、いいなあ、と思ってしまった。
いやそれより前に、フィフィが撫でられてるのを見てた時もそう思ってしまった。
これって・・・なんて言うのかな・・・。
「あ〜やっと帰ったぜ・・・ねむ。」
ふぁっと欠伸をするリュウジさん。もう既にフィフィは自分のフトン、もとい枕で眠っている。あのフトンは大きすぎたらしくて急遽枕にしたらしい。
「リュウジさんねむ〜い!」
魔王、居候なのに駄々こねちゃダメだと思う。
「そだなぁ、寝るか。」
あ、気にしないんだ。そういえばこんな人だっけ。
そんな日は経ってないのに、この人の性格が少しだけわかってきた気がする・・・まだ謎は多いけど。
「布団敷くぞ〜。手伝え〜。」
「は〜い。」
「あ、はい。」
呼ばれたんでフトンを敷くボクとボク。でもいまいち敷き方がわからないな〜。
「はい敷けた。」
「「はやっ!?」」
こっち二人でやってんのに敷くの早すぎリュウジさん!!
「じゃ、敷けたらさっさと寝ろよ〜?」
「は〜い♪」
「・・・。」
「?どしたアルス。」
「あの・・・また迷惑かけてしまうことになりましたね・・・。」
「そうだな。」
・・・そこ否定しないんだ・・・。
「まぁ決まっちまったもんはしゃあねえじゃん?」
「決めたのアナタでしょうが。」
「気ニシナ〜イ。」
「誰!?」
そんな言い合いの間に・・・。
「すぅ・・・。」
魔王・・・寝てるし。
「寝るの早いな。さすが魔王。」
「さすがって何が?」
「気ニシナ〜イ。」
「もういいよそのわかんないモノマネ!」
つ、疲れる。短時間で疲れる。
「さて、消灯するぞ〜。」
「はい。・・・あ、リュウジさん。」
「?」
「えっと・・・明日からよろしくお願いします。」
例え短い期間であってもお世話になる人には礼儀を。常識だ。
「ああ、よろしく。」
ニカっと無邪気に笑うリュウジさん。
気のせいか、一瞬ドキっとした・・・。
「じゃな。おやすみ〜。」
「あ、おやすみなさい。」
電気を消されると同時にボクはフトンに潜り込んだ。
「ふぅ・・・。」
とりあえず、寝かしつけたな。
「さて、と。」
晩飯食ってる間にいきなり雅達が来たから、洗い物が溜まりまくっちまったぜ。そんでそれらをささっと洗うことにした。全部洗うのに5分しか掛からなかったぜ♪
「で、と。」
明日のご飯である米をといで、炊飯器に入れてタイマーをセットしておく。これで準備万端だ。その後、チャッチャと歯磨きをして時計を見てみる。
「うぇ、もう一時過ぎちまってんじゃねえか。」
夜更かしは体に毒だな。さっさと寝よ。
「にしてもまぁ・・・。」
俺は和室を見る。
「・・・食費増えそうだなこれから・・・ま、いいや♪」
俺は二階の寝室に向かった。
作 さて、いよいよ明日から勇者と魔王との日常生活が始まります。
龍 また長いことかかったなここまでくんのに。
作 ついでに今までのは全部プロローグです。
龍 プロローグなげぇな。
作 気にしたら負けさ。
龍 そだな。
作 それじゃ、これからも頑張りますんで!
龍 こんな野郎に応援よろしく。
作 何?
龍 やるか?
*この後、この部屋はボロボロになりました。