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船上2 魔蛍


対立する島神ディンフリーツと同じく

アレスと呼ばれる島神に似た人間の姿はしているものの皮膚は赤く

全長はディンフリーツより少しだけ低い怪物だった

その二つの会話がゼッペルに疑問を生ませる


ーー名は知らずとも同族なのか? 


アレスは島神を見つめながらゼッペルに言う


〝 前にも話したが…… 我らはかつて一つの大陸で共に過ごしていた

だが訪れた厄災によって大陸が散り 約千年間我らは会うこと叶わなかった

その所為か顔は覚えていてようとも 名前だけは完全に思い出すことはなかろう… 〟


「そういうものなのか?」


〝 何千年も名前を呼ばなければ自然に忘れるものだ

奴でさえ かつての友だからこそ懐かしさを覚えるというもの…… 〟


ゼッペルは深く追求してはならないと思った


〝 しかし…… あちらは身に覚えすらないか…… 〟


〝 ………逃げろ 〟


〝 ……?  〟


アレスの視線の先にいた島神が 何かに抵抗するように言葉を発した


「どうなっているんだ? アレス」


〝  わからないが…… 彼奴の周りには黒い魔蛍(ラル)が見える…… 〟


「何……?」


アレスの話を聞き ゼッペルはすぐに島神の方に目を向けた


「黒い魔蛍に良いことは無いな 止められるか?」


アレスの表情は考え事をしている顔だった


〝 倒すことは出来ない…… 本気で掛かっても勝った試しも無かった……

しかし封印することは出来る 〟


アレスは斧を戻し 両手で印を結び出した


「急いでくれ……」


〝 静かに頼む…… 久々の友との別れだ 〟


ゼッペルの問いにどこか悲しげな返答をするアレスは

弱々しい声で呪文らしき詠唱を唱え続ける


〝 あ…… がが…… やめろ…… 〟


ディンフリーツは頭を抱えながら悶え苦しみ始める


〝 炎豪の掟 罪を犯した者を縛る処方だ

懐かしき思い出だな…… 炎豪の共よ…… 〟


もがく島神に対し 必死に唱え続けるアレスの顔は

なんともやり切れない苦い表情であった

そんなアレスを止めようと 無我夢中で島神は殴り込もうとするが


〝 ウェザンロート ……別れの刻だ 〟


アレスの口が閉じたとき ディンフリーツの周りにある海の中の底

海底から赤い鎖が無数に伸びてきた


鎖は島神の体を不規則に縛り上げる

島神が抵抗しようとするがそれを逆手に取るかのように鎖は生き物の様に動き回り

指一つ身動きが取れない状態まで拘束された


〝 ア…… アレ…… ス…… 〟


〝 …… 〟


〝 炎豪の…… 友よ…… 〟


そう言い残すディンフリーツは海底に沈んでいった

黒い魔蛍が散り散りと絶えながら


「上手くいったようだな……」


ゼッペルがどう声を掛けたらいいか悩んでる間に アレスもまたその場で消える


〝 ……お前に負担を背負わせた 暫く休むとしよう 〟


二柱の神が居なくなれば余韻も残る気持ちの悪い静けさだけが残った


ーーすまなかったな アレス 




数時間後 

横転した車両の一つを起き上がらせる事に成功し ようやく列車の運行が再始動した

先頭の車両にはゼッペル率いる乗組員三人とラウル ヴァースに奴隷の飼い主サクバサが居合わせた


「さてと…… 一応近くの国に要請をしたが対処してくれるかどうか……」


ゼッペルはため息を漏らし 事件後の対処についてこの場にいる全員に伝えた


「別に勝手に状況を語るのは構わないけど

なんで私まで呼ばられなきゃいけないのかしら?」


サクバサは不機嫌な表情で不満を吐く


「一応協力して頂きましたんで お礼をも含めて」


「奴隷くれるってんなら別だけど 口とお辞儀だけじゃねぇ……」


深く頭を下げた列車の乗組員ゴルクレットに対し

サクバサは不機嫌な態度を保ったまま車両を出て行こうとした


「あの……!!」


ゼッペルの隣にいたラウルがサクバサに話しかけた


「あの奴隷達に言っといて下さい

〝助けてくれてありがとな〟って……」


「……変わってるわね アンタ」


サクバサは何気にラウルの言葉を聞き入れ 奥の車両に消えて行った


「さてと…… んで? 何故に然程活躍していない私までここにいるのかな?」


さっきから退屈そうに立っていたヴァースが

サクバサが消えた直後でようやく口を開いた


「……貴方にはこの事を一早く本国にお伝え願いたい」


ゼッペルも先程から真剣に何かを考えているように腕を組でいる


「ん~~ それは厳しいな……

言っちゃなんだが島神の一件よりも大事なんだよ 行き先にある大会は」


「大会…… ですか」


〝そこまで大事な大会なのか〟と言わんばかりのゼッペルの視線に

ヴァースは仕方無さそうな顔をして事の成り行きを説明して上げた


「現時点で今の世界を支えているのが 我ら【七大国(ななたいこく)】と呼ばれるものだが……」


「七大国?」


ヴァースが話を始めた途端に ラウルが質問を吹っかけてきた


「ふん~ つまり一番大きく発展した七ヵ国の先進大国 その国同士が結んだ連盟の総称だよ」


人が困っているときにいつも助言してくれる乗組員が またもやラウルの疑問を払拭した


「遅れてしまったが紹介しよう この列車の乗組員を

今説明してくれた自称物知り〝ラパン・クーバ〟

そしてこっちが〝ジョドン・ステルス〟 仕事は熟すがちょっと軟弱な所が玉に瑕」


紹介されたジョドンは頭を押さえながらペコペコとしている


「そして最後にゴルクレットだ

まだ乗組員はいるが全員を紹介出来るかはわからないな

まぁ名前を覚えとくことは損じゃない 私はゼッペルだよろしく」


ゼッペルはラウルに手を差し出し ラウルは取り敢えず握手した

そしてゼッペルの顔はその柔らかい笑顔を引き締めて

真剣な表情でヴァースに目線を移す



「では…… 先程の大国の話 詳しく聞かせてくれるか?」



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