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乗船3 島神


  何故…… 我は……


  何故… 我は 人を許した…


  奴らが 無人島に… 足を踏み入れた…


  追い出していれば……


  我は…… 痛み…… を……




「なんじゃこりゃ~~~~!!!!」


ラウルの目の前には およそ人とは思えない巨体の

本で語られる化け物と呼ぶべきか そんな生き物が海から噴き出してきた


「これは…… 〝島神(ウォージュ)〟という奴か?」


ゼッペルは微かな声で 化け物をそう呼んだ


「ウォージュ?」


「ふん~…… 木が生い茂り 川が清く流れ そういった自然が生きた島には

島神が宿ると決まっている いないと逆に不自然な影響が出るんだ」


ラウルが首を傾げていると 乗組員が親切に説明してくれた


「そんなことよりこの状況を何とかしないと……!!」


別の乗組員が慌てて屋根の上を行き来している


「……」


ゼッペルは疑問に更けていた


ーーなぜ今…… 島神が……


〝 主らは…… 〟


ーーん!?


ゼッペルが考え事をしていると

島神らしき化け物が言葉を話して来た



〝 主らは…… 我の守りし…… 島を汚し過ぎた…… 〟



そう言うと島神は耳を塞いでも気が遠くなりそうな咆哮をゼッペル達に浴びせる


「「「「 うっ……!! 」」」」


思わず屋根に乗っていた四人は膝を着き それはそれはのた打ち回る声量だった


〝 これより 神の制裁を 〟


無機物で形成されるゴツい腕を振り上げ 真っ赤な溶岩流が頭上より五月雨で降ってきた


「待ってくれ!!」


〝 …… 〟


耳を塞ぎながらも 必死にゼッペルは島神に問い合わせる


「私達は旅人だ! 貴方の本来の怨みに関係ないんじゃなのか!?」


〝 …… 〟


島神は一瞬腕を止めたがそれもほんの僅か

振り上げた腕をラウル達の車両に向けて振り下ろそうとしていた


「闘うしかないんじゃねぇの?」


ラウルは背中に装備していた二本の柄に手を付けて鞘から抜いた


「おぉ…… 二刀流ですか?」


「双剣使いと言ってください!」


一人の乗組員が興奮するが ラウルは二刀流と言われて不貞腐れていた


「ふん~…… 問題はその刀で神に勝てるかだが……」


「ウッ……」


もう一人の乗組員の言葉にラウルは多少威勢を削がれる

そうこうしている内に 島神は列車に向けて殴り込もうとしていた


「ま…… まずい!! この車両から離れろ!!」


ゼッペルは余裕の無い形相で三人に指示する

島神は躊躇なく列車に巨体を傾け

まるで隕石の如く一直線に腕を飛ばして来た


ーーおいおい…… こんなの食らったら列車なんて一溜まりも……


車両から別の車両に離れたラウルは

何処まで逃げようともあの一撃で列車がもたないことを確信していた

そんなことはあの島神の拳を見れば誰でも分かること


「……!!?」


何かに気づいたのか ラウルは物凄い形相で元居た車両に引き返した


「ちょっ……!! どこに行くんだ!!?」


乗組員が慌てて止めに入った


「メモルが…… それにあの車両にもまだ人がいる……!!」


巨大な生物を見て逃げようとしない奴はまずいないが

メモルは動ける状態で無いことを ラウルは思い出した


「だからって戻って何かできるのか?」


ゼッペルはラウルの肩を掴んで止めに入る

しかしラウルはその手を弾き 島神に向け双剣を構えた


「俺は腕試しする為に旅に出た

相手が神だろうと自分の限界は 自分で作って 自分で決める!!」


自身を鼓舞して凄み 島神の方へラウルは突っ走った


「ふん~…… やれやれ…… 車掌そろそろ戦闘準備でもしますか?」


「ゴルクレットが準備してる筈だが……」


「早くしないと死にますよ? あいつ」


ラウルは来た道へ迂回して島神のもとへ戻ろうとするが

島神の右腕は既に列車間近に迫っていた


ーー俺の速度を舐めるなよ 


ラウルは双剣の柄と柄をくっつけ長剣へと換装させた

換装と共に島神へと跳び込み腕に接近する

あまりの速さに島神に気付かせず一気に斬りかかる


「関節を斬り砕いてやる!!」


島神の右腕に長剣を突き刺し

双剣に戻して島神の肩をロッククライムで登りつめる

剣を刺し 剣で斬り突け 剣で削ぎ落とす

高速と技術を兼ね合わせ複数の切れ目を入れた


ーー……?!


ラウルは肩に辿り着いたとき 腕に疑問を感じる


「マジかよ」


よく見ると島神の腕の切り口には関節どころか 

細かい組織すら無く あるのは岩の塊だけだった


「さすが島神」


ラウルを見向きもせず 僅かに止まった腕も地道に動き出そうとしている


「クソッ…… クソォ!!」


島神の右肩を全力で斬りかかったが それでも止まらずさらに肩を斬るも

今度は腕が車両に落ちるのではないかと瞬時にラウルは思考を巡らせた


ーーどうすれば…… メモルもいるし乗客もまだ残ってる筈

……これが俺の限界なのか?


成す術が無く呆然とし始めるラウルを

叩き起こすかのように突然 目前の車両の窓が綺麗に割れた


「んもう~~使えない乗組員に小僧ね…… 頼むわよアンタ達!!」


割れた窓から覗き見る人影 三つの影が島神に向かって矢の如く跳び放たれた


〝 !!? 〟


島神が体の異変に気づく いつの間にか腹が大きくへこんで後ろに蹌踉よろけた


ーー何が起きてるんだ……


ラウルにも状況が読み込めないが

島神がよろけた反動で脆くなった肩が海に落ちようとしていた


「うっ…… やべぇ!!」


ラウルは海へ落ちまいと体勢を整えていたが

踏ん張りが利かず 下へ真っ逆さまに落ちようとしていた


ーー……あれ?


気が付いたラウルは車両の上で逆さに足を握られ吊されていた


「あなたは……」


ラウルを担いでいる男をゼッペルはずっと見つめていた


「まったく…… 島神の威圧に屈しないとは大した少年だ……」


「ふん~ あの大国スレイシャガル国の軍総督

ヴァース・グラビドル様ですか こりゃぁすごい」


「あのグラビドル族の末裔で 一国を一人で滅ぼしたとか……」


二人の乗組員は少し驚きながら説明だけ口に出していたが

ゼッペルだけはずっと黙っていて会釈だけは忘れない


「一人で滅ぼしたっていうのはガセだね!

ホントのことを言うと 一人で敵国を丸く治めたってことで争ってはないよ!」


ハハハと優雅に笑っていたヴァースだが

別車両の窓から見える人物で目つきが変わる



「まさか 彼等も来てるとはね……」  



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