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変わらなければならない場所4 自国の為に


クロォンメモリアル歴 R1000

季節の中で一番肌が冷える時期を越え

四年に一度 各大国の王達が集い ここ数年間で起きた重要問題を協議し合う首脳会談が行われる

通称〝七大国協定会議ヒューファブラ


大国漢の国の皇帝である司馬艶もまた元首の一人として出席するべく

今日この日 まさに歴史に残る一大イベントの幕開けの状態になっており

洛華では十数隻浮かぶ軍船を前にして 港では大勢の国民が賑わっていた


「こうも船出を見守る民達が賑やかだと 四年振りとは言え心が躍るな」


城から港までの大通りの道を兵に囲まれながら歩く艶は 民に応えるかのように手を振る

その後ろを歩く首脳会談を行う会場【ロウラル諸島】に向けて

今回艶を守ると同時に兵士全体を指揮する護衛型禁軍特異十二衛兵に選ばれた趙炎

彼もまた胸を張っていた


「気を張り詰め過ぎるなよ趙炎! 俺達の本格的な仕事はロウラル到着後だからな?」


「分かっています馬留ばりゅうさん」


馬留は趙炎に槍術を教えた師であり 燭で一目置かれる将軍だ

趙炎は艶の周りを守る十二衛兵を見渡す


漢の国の軍事力の象徴として君臨する燭軍・巍軍・娯軍の三軍より

燭軍から 趙炎・馬留・張車 

娯軍から 周癒しゅうゆ帝普ていふ陸遜りくそん 

巍軍から 禁軍軍隊長曹猛丕そうもうひ夏侯沌かこうとん張遼ちょうりょう楽迅らくじん徐交じょこう于禁うきん


何れも大国を越えて恐れられる名武将達 趙炎は改めて自分の立場を理解する

隣で溜め息を吐く馬留とは別に張車が趙炎の背中をまるで手形を付けるかの勢いで叩いた


「っ!!!」


一団は次々と軍船に乗り込み 艶の後に続いて彼等も乗り組もうとしたとき


「…………」


何処からともなく趙炎の隣を素通りする老人が まるで存在を感じ取れない様で奥へと歩いて行った


「一体いつから……」


「今回も欠席だと思っていたんだがなぁ……」


七大国協定会議に唯一同席が許される者達がいた

政府にその功績が認められ 特権の授与と共に選ばれる数年前から存在する異例の役人

世界七大珍品文化財保持者 通称〝人間国宝サブエージェント

その老人こそがこの国の方士として力添えし

仙人と呼ばれた〝吟能ぎんのう 左慈元放さじげんぽう〟その人なのだ


「猛丕殿!! 兵士全員乗船確認が終わりました!!」


「分かった」


船尾で手を振っている艶に猛丕は跪き 出発の準備が可能と報告する


「よし! じゃあ行こうか」


出航の合図と共に軍船が次々と動き出す

趙炎はしばらく帰ってこれない国を少し寂し気に見つめる

そしてその視線は港から見送る孤橋の方に


ーー…………


ただただ皇女として振る舞う孤橋の顔を見つめながら

趙炎はふと数日前の出来事を思い出す 密かに会った妖雷とのやりとりの記憶


〝 いよいよ出発だなぁ…… 楽しみか? 〟


〝 えぇまあ…… 少しは 〟


〝 こっちの件は心配するな…… してねぇか? 〟


〝 そんなことは…… 妖龍さんが見つかって欲しいのかどうか立場として難しいですから 〟


〝 二人きりの会話で用心深いこと…… いやお前はただのクソ真面目だったな 〟


〝 ここまで来ると自覚しています 〟


趙炎が妖雷と会う時は あのマーロウの日記が遺されていた地下室で会うようにしていた

組織の連中にも聞かれたくない情報も妖雷の口から出て来るからだ

何故趙炎にそこまで提供してくれるのかは謎であるが


〝 明日…… 日の国に船を出そうと思う 〟


〝 行くんですか? 〟


〝 こう待っても新しい情報が降って来ねぇんだ 

てめぇで出向いて てめぇで真相を探るしかねぇだろ 〟


〝 そう…… ですね…… 〟


妖雷は葉巻を口に咥えようとするが 自分達の心配をしている趙炎の頭部を思わずド突く


〝 っぅ~~……!! 〟


〝 心配すんなっつってんだろぉ!! お前にそんな顔させる程ヤワじゃねぇんだよ!!

……取り敢えずお前は目の前の事だけ見てりゃぁいいんだよ! 〟


〝 ……大丈夫です 〟


〝 考え過ぎなんだよお前は……

少し功績残し始めてるからってガキがそこまで考えてんじゃねぇよ

そんなんじゃ愛しの皇女様を守れねぇぞ? 〟


〝 孤橋は…… そういうのじゃありませんよ? 〟


〝 年頃のガキだなぁ~~ 照れ隠しとか…… あぁ気持ち悪い 〟


〝 いや…… ホントに違いますって ただの幼馴染ですよ 〟


〝 ……マジで言ってんのか? 〟


葉巻に火も付けずに上下に揺らして咥えるだけの妖雷の鋭い目に 趙炎は訳分からず委縮する


〝 うわぁ…… 孤橋ちゃんかわいそ…… 〟


〝 え? 何ですか? 〟


〝 お前好きな奴いねぇの……? 〟


〝 俺は兵士だ! そんな感情を抱く暇は…… 〟


突然 趙炎が口を閉じる

会話の流れを辿り 自分の記憶に映像として現れた一人の少女


〝 メモル…… 〟


〝 メモル? 何だ趙炎! 外国の女に手ぇ出してたのか? 〟


〝 六年前くらいに…… あのガルバーク帝国で出会った少女です 〟


〝 マジか? そんなときからお前…… 漢の国の兵士も変わったなぁ…… 〟


〝 そんなんじゃありません! 一度も会話なんて出来ませんでしたし……

でもずっと彼女のことが忘れられませんでした 〟


〝 そっかぁ…… いやぁ~~ 孤橋ちゃん可哀想!! 〟


〝 アイツとは幼い頃に誓い合った者同士の縁だけでして……

それでこそただの幼馴染としての仲であって……

それに…… そんな色恋事をあの孤橋の前で言ったら引っ叩かれますよ? 〟


〝 どの程度のを誓い合ったんだよお前等…… ハァ……

こんなんじゃホントあの皇女様も救われねぇな 〟


〝 どういう意味ですかそれは? 〟


妖雷は冷めた笑みを浮かべながら立ち上がり ドアノブに手を付ける


〝 話を脱線した まぁ首脳会談を楽しんで来い 〟


〝 えっ あ…… はい…… 〟



ーー重要な話を前半にした所為で 後半の話が印象に残り過ぎてしまっている



港に見える孤橋を見つめる趙炎は 彼女の姿にメモルを照らし合わせた


「メモルには恋を抱いていた…… 孤橋には…… 信頼を寄せていた?」


モヤモヤとする感情を押し殺し 趙炎の見る方向は船が進む海原へと傾いた


ーー今しなければならないことを成さねばならない


日の国を攻めるように届いた司馬軌宛ての書状

その情報が火女桜を通じて日の国に漏洩されている可能性が浮上した

しかし一方で火女桜の若頭妖雷の話ではデマ情報だと もしくは組内部の仕業と言う

その経緯で知った組織内での内部抗争と会長妖龍の謎の失踪

そして日の国に関わるメフィアファウストの伝説


ーーまだ分からないことだらけだが 国中に被害が出ようとしているのは明確だ

どこから日の国の連中が攻めて来るかもわからない

火女桜も壊滅したら必ず領界内部 小国のどれかが襲われる可能性もある

最悪の方向へと変わっていく前に今何をするべきなのか 誰に頼ればいいのか

自分が起こせる行動は 兵士として 国士として……

身に付けるんだ今は これから向かう世界会議で


国を思う者としての覚悟を胸に宿し

命令だけでなく初めて自分で何かをしたいと決心する趙炎の行く先は

七大国協定会議が行われるロウラル諸島

己を磨き 自国を改善する為に彼は放旅者となった


これから訪れる困難を前にして



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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょうえんやっぱりいいやつだな(´∀`*)実はいじられキャラだったのかw そうかメモルが……一章のカジノの出会いのとこも読み返してきちゃった [気になる点] こんなにどっぷりなれそめ書…
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