表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛍籠  作者:
94/119

第93話:回想・13

 広田氏の言葉に私は言葉を失う。これまでの彼の通を思う誠実な態度に感銘を受けたからこそ、この人なら分かってくれるかもしれないと思っていたのに。


 「やっぱり、それがあなたの本音なんですね」

 「君だって儀式という枷から解き放たれたいと言っていたじゃないか。どっちにしたって何かしらの犠牲が出る。だったら……………」

 「もういいです!!」


 通は、彼の言葉を遮るように大きな声で叫ぶ。そして、俯くと掠れた声で一言呟いた。


 「………………やっぱりこうするしかないんだ」


 ふらふらとした足取りで彼に近づく通を私達は、訝しげに見ていた。もちろん、広田氏も。そして、通が彼の左肩を掴んだ瞬間。

 通は、隠しもっていたナイフを広田氏の胸に深くつき刺し、抜きさる。すると、その傷口からは、大量の血が流れ出た。

 それは、本当に一瞬の出来事で、刺された本人も声を上げることが出来ないまま床に崩れ落ちる。

 私は、その血と匂いでやっと我に返った。


 「通! 何て事を!!」

 「…………あ……………」

 

 私は急いで広田氏に駆け寄り、脈を確かめたが彼は既に絶命していた。私は、自らの犯した罪の大きさからショックを受け、うろたえる通を見て思わず舌打ちをした。そして改めて、広田氏へと視線を移す。彼のカッと両目を見開いた顔はまるで我々を呪うかのような恐ろしい表情だった。その目線から逃れるように顔を逸らしながら私は、彼の瞼に手を当てその目を閉じさせた。


 「バンに積んであった毛布を持って来てください」

 

 ――――こうなる事を何より恐れていたのに私は結局止めることは出来なかったのだ。そして自覚する。結局、一番愚かで力のないのは私なのだということを。きっと、父は分かっていたのだ、こうなる事が。だから、通をこの場に寄こしたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ