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蛍籠  作者:
88/119

第87話:回想・7

 「……………はっ? それはどういう意味ですか?」


 ある晩の事。

 母と妻が留守の夜の出来事だった。

 突然、夜中に私と数人の男達が、禁足地の社務所に呼び出された。そこで、父から告げられた一言が理解出来ずに問い返す。


 「あの男を始末しろ」

 「あの男?」

 「広田とかいう助教授だ」


 始末する?

 本気なのかこの人は…………。


 いつもと変わらない淡々とした口調の父を見て愕然とする。まるで物か何かを処分するとのと同じように、人を始末しろと言う。

 周りを見渡すと私と同じように男達も途方にくれている。

 それは、そうだろう。自分達に人殺しをしろと言っているのだから。


 「何故そんな事を? 人殺しなど出来るはずもないでしょう」

 「黙れ!! 何も分らぬ者が偉そうに! 神主である私の言葉に逆らうなど百年早い」


 そう言って父は、呼び出した他の男達を睨みつける。そのするどい眼光に男達は、黙り込み視線を床に向けた。


 「ですから、理由は? 我らに人を殺めろと言うからには、理由を教えて下さい」


 この場で父に対抗出来るのは、私だけ。他の者達には、父に異を唱えるなど不可能だ。私は背筋を正すと正面から父を見据えた。

 しばらく無言の睨み合いが続くと、先に引いたのは父だった。


 「あの男は、儀式について学会で公開すると言ってきた。そして、もう儀式など馬鹿なことは止めろとな。何も知らない余所者が、軽々しく口を出しよって」

 「でしたら、学会で発表しないように説得すればいいだけの事でしょう。それに儀式の事ですが…………」

 「儀式は止めぬ。あれを止めたらこの村には災厄が訪れる。この小さな村がここまで生き延びてきたのは、儀式あっての事だ」


 後半、私の言葉を遮るように父は、言った。

 その頑なな様子に、儀式についての事は後回しにしようと私は決めた。


 「では、我々で広田氏を説得してきます。それで良いですね?」

 「ふん、お前達の声に耳を貸すとは到底思わないがな。通」

 「え?」


 父に呼ばれ現れたのは、川辺 通だった。一体、何故彼がこんな場所にいるのだろうか。


 「通がお前たちを手引きする。いいか、通。お前が一番にすべき事を分かっているな?」

 「…………はい」


 父の言葉に俯きながら通は、返事をした。その姿に、今回の事が本意ではないというのが、すぐに見て取れた。

 しかし、私は彼に対して何と声をかければいいのか分からなかった。

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