第75話:祖母の意志
「なっ、何を馬鹿なことを!! つまらない真似は止めてさっさと続きを舞いなさい!」
神主の妻は、怒りに震えながら叫ぶ。
そんな様子をおかしそうに眺めながら美智は、続ける。
「こんな状況で嘘なんて言ってどうするんです? 私が祖母から教わったのは、ここまでです。その先が見たければ、ご自分でどうぞ。ということで、私は失礼します」
美智は、舞台の欄干に手をかけるとひょいっと下に飛び降りた。
「お待ちなさい。誰かあの娘を捕まえなさい!」
その声にやっと我に返った男達が数人、美智を追いかけた。そして、美智に手をかけようとした瞬間、美智と男達の間に割り込んだ人物達がいた。
「もう止めてください。貴方方は、いつまでこんな馬鹿げたことを続けるつもりですか!!」
「もう儀式は終わりです。おばば様も了承されたことです」
それは明と美智を追って飛び降りた川辺だった。
村の若様と巫女守の言葉に男達は、戸惑っているようだ。
「おばば様!!」
男達の中で一番年若い者が説明を求め叫ぶ。
すると舞台袖に控えていたおばばが現れる。
「明達の言う通りだ。儀式の終了は、すでに十年前に長老連が決めたこと。その一員であった美苑がすでにそれを実行していた。それだけのことだ」
その言葉にその場にいた人間達は、ざわつき始める。囃子方も楽器を置き、おばばの元へと駆け寄ってきた。
「では、もうこの儀式は下の代には教えなくも…………」
「当然じゃないか。この忌まわしい負の歴史は、我々の代で終わりにするんだ」
それを聞いた囃子方達は、一様に安堵している。
しかし、そんな面々の中で一人納得していない人間がいた。
「お義母様! いい加減なことをおっしゃるのは、止めて下さい!! 儀式は行わなければいけないのです。現に龍神様は、お怒りではありませんか? 皆もよく思いだしなさい、何故儀式を行うことになったかを!」




