第67話:明かされた事実
「…………美智にも同じ事を言われたよ。私はもう逃げる事はしない。自分のした事をきちんと受け止め、償って行くよ。約束する」
「そうして下さい。そして今一番しなくてはいけないのは、美智先輩の救出です。だから、立って下さい」
広田に促され、川辺は立ち上がる。その様子を見て、明と功は安堵する。事が事だけに最悪の事態も考えていたのだ。
「美智ともさっき打ち合わせをしてきた。助け出せるチャンスは、一度。神楽の最大の見せ場の直前だ」
「神楽の見せ場?」
実際に神楽を観たことがない広田は、明達に視線を向け説明を求める。
「見せ場って事は、あそこか?」
「でしょうね。この神楽はいくつかの場面で構成されています。まずは、龍神と村娘の出会いの場面。次に飢饉により泉に来なくなった村娘の無事を案じて龍神が舞う場面、そして村娘が龍神に雨を請う場面。最後に花嫁となった娘と龍神の二人が舞う場面です」
「じゃあ、最後の二人で舞う場面の直前に何かがあるんですか?」
広田の問いに明達は顔を見合わせ黙り込む。そんな二人の煮え切らない態度に広田は、トントンとつまさきで地面を叩き苛立ちを紛らわせる。
「いや、その直前に何かあったかなって。確かに黒子が娘の衣装を変えるけど、それは一瞬の事だしな」
「ええ、特に逃げだせるタイミングという訳では…………」
そう、昔から神楽を観ている自分達でさえそんなタイミングが作りだせるはずがないと思ってしまうのだ。でも、川辺や美智がその場面で逃げだすと言っているのだから、何かがあるはず、しかし…………。
二人は助けを求めるように川辺に視線を送る。すると、川辺の口からは意外な事実が告げられた。
それを聞いた瞬間、三人は思い思いに呟いた。
「はぁ?」
「そんな馬鹿な…………」
「さすが、美智先輩のお祖母さんだ」
川辺からの聞いた事実、それは。
―――――――私、神楽の最後の舞を教えてもらってないんです。だから、そこで絶対騒ぎになりますよ。
という美智が口にした衝撃の事実だった。




