第66話:謝罪
「川辺先生…………」
「やっぱり来たか。明、功…………?」
自分の教え子である二人以外の人物を見た川辺は首をかしげる。
「この人は美智の会社の後輩の広田君です」
川辺の疑問を察した明が、広田を紹介する。そして広田の名前を聞いた瞬間、川辺の顔には動揺が走り、顔色がだんだんと青くなっていく。
「お久しぶりです。と言っても小さい頃に数回会った程度ですけど」
「…………まっ、真君か…………。すまなかった!! 私は君のお父さんを……」
我に返った川辺は、その場に膝をつき広田に土下座する。自分の犯した罪の大きさを自覚しているのかその体は小刻みに震えていた。
そんな川辺を広田は、ただ静かに見つめている。その顔からは怒りや憎しみは感じとれない。もちろん、大事な父親を奪われたのだから憎んでいないはずはない。けれど、今の広田からは何の感情も読み取ることは出来なかった。
「広田……」
「しっ!」
見かねた功が声をかけたのを明は制止する。
「これは僕達が介入していい問題じゃない」
その言葉に功は、頷くと心配そうに広田を見つめた。
「顔、上げてください」
「しかし…………」
「今はこんなことしてる場合じゃないし、正直僕もあなたに何て言えばいいのか分からないんです。父のことはある程度覚悟していたことだし。だから今、僕が言えることは一つです」
川辺はゆっくりと顔を上げるとその続きを待つ。
そして一分程の沈黙の後、広田は呟いた。
「僕は見てます、これからのあなたを」




