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蛍籠  作者:
66/119

第65話:油断大敵

 木の繁みや社の影に姿を隠しながら、三人はゆっくりとだが目的地である野外舞台に近づいていた。

 舞台の四方には大きな篝火が炊かれている。舞台の上だけは、昼間並みの明るさだった。


 「舞台のすぐ前が泉か。神楽が終わったら建物をぐるっと回ってあそこに沈めるのか?」

 「さぁ? でも、あの泉で間違いはないと思います。もしかしたら簡易の橋が架かるのかもしれません」

 「見た感じでは、もうそろそろですよね。だとしたら、この近くに美智先輩がいるはず」


 舞台と社を繋ぐ入口に目を向けるとそこから数人の男女が出這入りしているのが分かる。しかし、この神楽の要である神主夫妻や川辺の姿は今のところ見えない。


 「確かあの舞台の下に座敷牢の入り口だよな」

 「いえ、本番が近いからもう違う部屋に移動しているかもしれない」

 「でも、本番中に美智先輩を助けるならあの舞台下に身を潜めているほうがいいと思いますよ」

 「そうだな。座敷牢への入り口近くなら俺達が隠れるスペースくらいあるだろう。そこで舞台が始まるのを待とうぜ」


 幸い泉付近には、人がおらず移動しても自分達の姿を見とがめられることはないだろう。3人は、すぐ近くにある舞台の足場の隙間に入りこむと慎重に移動した。


 「けっこう、見つからないもんだな」

 「ちょっと拍子抜けしますね」

 「油断しちゃダメだ。今は泉の方に人がいないからいいけど、本番はどうなるか分からないんだからね」


 明の言葉に二人は首をすくめる。

 そんな二人をよそに明は、座敷牢へと続く扉のすぐ前まで近付き扉に耳をあて中に人がいるかを確認する。


 (物音はしない。じゃあ、やっぱり美智は違う部屋に?)


 そう明が物思いに耽っていると、突然その扉が開いた。


 「!?」


 あまりに突然過ぎて三人はその場に固まってしまう。

 そして声を上げることも出来ず、ただ茫然と成り行きを見守ることしか出来ない。


 (まずい。見つかったか…………)


 最悪の事態が三人の脳裏をよぎったその時だった。よく知った声が響いたのは。


 「不用心が過ぎるぞ。お前たち」


 そう言ってあらわれたのは、川辺だった。

 

 

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