第55話:山猿
門の中へと侵入した明達は、明の父から貰った地図を片手に暗闇の中を移動していた。門の内側には明かりになるようなものはない。
しかし、都合のいいことに今日は満月でその淡い光だけでも十分進むことが出来た。
「広田君、足元大丈夫?」
「俺等は慣れてるけど、見えてるか?」
この山間の村で育った自分たちならいざ知らず、市内で育った人間にはつらいだろう。
「大分慣れました。それにけっこう明るいもんですね」
「まぁ忍び込むには好都合だな」
最初は正直不安もあった。かぎられた人間しか入らない場所なのであまり山道が整備されてないとふんでいたが、それも杞憂だった。
山道には古いものだが石畳が敷かれているし、手入れもされているせいか歩きやすい。ただ、整備されているせいで人に見つかりやすいという難点もあるが。
「そこの大岩が目印だ」
大岩の近くのしげみに身を潜めた三人は、地図を開く。
この大岩から右に進むと本殿の入り口に、左に行くと泉に行けるらしい。
「さすがに真正面から行くわけにもいかないだろう」
「この大岩の斜面を登って行くと本殿の裏手にある舞台近くに出るみたいだ。その地下にある部屋が姉さん達がいる場所」
「入口ってやっぱり本殿の中でしょうか?」
「そこにもあるみたいだけど、裏口も存在するみたいだね」
明が指さした場所にあるのは問題の舞台だ。
「舞台上にあるのか?」
「ここの舞台は、野外なんじゃないかな。だから、舞台を支える足場の空間にあるんだと思うよ」
「とりあえず、ここを登りましょか?」
「ああ。けっこう急だから俺が上に登ってロープおろしてやるから待ってろ」
そう言うなり功は、木や地面の窪みなどを器用に使いあっという間に登って行く。その姿を見て広田はポツリと呟く。
「すごいですね」
「功の小さい頃のあだ名は、山猿っていうんだ」
「…………確かに」




