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蛍籠  作者:
50/119

第49話:広田 真 2

 それは、そろそろ初夏と呼ぶに相応しい暑い晴れの日。

 近所の祖父母の家に届けものをした帰りだった。

 駐車場の脇に自転車を止め、玄関へと歩いていると誰かが家から出てきた。

 自分と年のかわらない少女。


 (…………誰だろう?)


 とりあえず、会釈をすると僕に気づいた少女も同じように会釈を返してきた。


 「こんにちは」

 「こんちは。えっと君は誰?」


 突然話しかけられた為、そのままストレートに疑問を投げかけてしまう。

 その子は、一瞬驚いたようだがすぐに答えてくれた。


 「初めまして、田中 美花といいます。光泉村の者です」

 「光泉村の!?」


 思いがけない言葉につい声を荒げてしまう。光泉村と言えば、父が最後に滞在した村。そんなとこの人間が何故この家に?


 「ごめん、大きな声を出して。僕は、広田 真。でも、何で光泉村の人が何でこんな所に」

 「個人的に調べている事があって、それを調べていくうちにあなたのお父さんの研究に行き当たって。それで大学に聞きに行ったら、教授さんが紹介してくれたの」

 「父さんの研究? でも、かなりマニアックというか君みたいな若い子に関係あるの?」


 父さんが使っていた本や論文などを読んだことはあるが、自分たちみたいな若い世代が気になるようなものではないと思う。


 「私の家は神楽を伝えている家系なの。でも、それに関してこの間亡くなった祖母が気になる言葉を残しているの」

 「ああ、確かに父さんが研究してそうなものではあるな」

 「本当は、コピーさせてもらうつもりだったんだけど、あなたのお母さんがどうぞって。だからその代りおじさんが調べてたことが分かったら報告しますって約束したの」

 「へーー。あれ? おじさんって父さんに会ったことあるの?」

 「昔、おじさんが村にいた時に遊んでもらったの」

 「もしかしてあの写真の?」

 「そう、双子がいたでしょ? その片割れ」

 「そうなんだ。あっ、良かったら他に資料がないか探しとくよ。大掃除の時にしまい込んだのもあるし、それに」


 真が口ごもると美花は首をかしげながら目で先を促してくる。


 「よかったら父さんの村での暮らしを聞かせてもらえればって」


 その言葉に美花は、優しい笑みでもちろんと頷いてくれた。


 僕は、美花との約束に答える為に色々と資料を探して待っていた。けど、それ以降美花からの連絡は一切なかった。


 もう自分との約束なんて覚えてないのかと、諦めかけたある日。

 新聞の片隅の小さな記事を目にして唖然とした。


 光泉村で少女が行方不明だったが、翌朝、崖から転落し死体が発見される。その少女の名前は、田中 美花。

 事件は、本人が足をすべらせて転落した事故として片付けられた。


 あり得ないだろう、同じことを調べていた人間が行方不明と事故死って。

 何かある。絶対に。

後、1・2話ぐらい広田サイドの話が続きます。


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