第46話:父
雨戸の破壊音が聞こえたのか屋敷内がざわつき出したのが三人にも分かった。
それでも闇にまぎれ功達は侵入に使った穴を目指し木が生い茂っている中、枝をかき分けながら進む。
三人とも顔や腕などに傷を負っていたが、とにかく先へ先へと急いだ。そして、残り数メートルで穴にたどり着く所まで来た時、先頭を歩いていた功が急に立ち止まる。
後ろに着いて歩いていたニ人は怪訝に思い、功の脇からそれぞれ顔を出す。
そして目にしたのは、穴の前に立つ和装の男性。その姿を見て、広田以外は固まってしまう。
「誰ですか?」
広田が二人に尋ねると明が前に進み出た。
「父さん」
その言葉に広田は再度、その男性を見る。初老の男性で確かにどこか明と似た容貌をしている。
「父さん、僕は決めました。深見の次期当主としてこの悪しき因習を断ち切ります。例え、あなた方に反対されても絶対に」
そう宣言した明の顔は、緊張でこわばっていたがその瞳には今までにない強い決意の光が宿っている。
その視線を真っ直ぐに受け止めた明の父は、かすかに笑みを浮かべ明に向って何かを差し出す。
「持って行きなさい。禁足地の地図と灯のいる座敷牢の鍵だ。多分、美智君もそこにいるだろう」
「…………いいんですか?」
当主は明に歩みよるとその手に地図と鍵を握らせる。
「私達では因習を終わらせることは出来なかった。情けない親だ、自分の娘一人も守れず息子に託すしか出来ない」
当主の瞳にはかすかに涙が浮かんでいた。そして更に明の手を強く握る。
「後始末は私に任せなさい。お前はお前が考えた通りにやり通しなさい」
「はい」
明は大きく頷くと、功達を振りかえる。
「さぁ、行こう」
その言葉に功と広田には、頷いて穴を通る。
最後に明は当主である父に一礼し、外へと出て行った。
その姿を見送った当主は、息子達の無事を祈り、屋敷へと戻った。
自分のすべき事をする為に。




