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蛍籠  作者:
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第44話:受け継がれた狂気

 部屋には重苦しい空気が満ちていた。


 「美苑の葬式の時に遺言で舞を禁じたと聞いて嬉しかった。因習を無くす為に動きだした人間がついに出たのだから、そして長老と呼ばれる我々の手で儀式を終わらせようと決めた。だが、遅かった」

 「遅かった? 別に遅くないだろう?」


 功の言葉におばばは力なく首を振る。


 「村を支配してきた狂気は確実に下の代に受け継がれてしまっていたんだ」

 「神主さん達にってこと?」


 夏美は恐る恐る聞いてみる。


 「ああ、息子は幼い頃から亡くなった主人に儀式について教えてられてきた。あの子の中で儀式はしなければならないこととして記憶させられている。まぁ、儀式の詳しい内容を知ったのは、ずっと後のことだけどね………………あれが全ての始まりさ」


 おばばの説明に困惑していた功と夏美は、おばばの最後の呟きは聞こえなかった。ただ、広田だけが、じっとその様子を見つめていた。ひどく落ち着いた顔をして。


 「でも、美花が亡くなったことでもう儀式は成立したんじゃないのか?」

 「一度はそう収まった。だが、美花が死んでから少しづつだけれど水源の水がおかしくなってきた。やはり、本当の花嫁を捧げなければいけないと考えているらしい」

 「そんな………、水がおかしいってちゃんと調査すればいいじゃない」

 「水源が禁足地だから、余計に儀式をするべきだという話にな。そのせいか村はピリピリしていた。そんな時に功と美智が帰郷してきた。儀式の賛成派は、気が気じゃなかったようで交代で監視をしていた」

 「うかつだったか」


 功は、美智を巻き込んでしまったことを深く後悔し始めていた。

 自分だけならいいが、この上美智の身に何かあったら。


 「今はこれからどうするか考えましょう」


 広田の冷静な言葉に功は驚く。意外と言ったらなんだが、自分より若いはずなのにこの落ち着きよう。冷静さを失いかけていた自分を軽く恥じた。


 「僕達が今しなければいけないのは、美智先輩を無事に連れ戻すことです。儀式のことについては後回しです」

 「そうだな。まずは、戦力を取り戻す為にも明をどうにかしないと」

 「昔使ってた秘密の出入り口は?」

 「あそこか。後はどこにいるかだな」

 「離れじゃないかしら? あそこなら人が寄り付かないし。灯ちゃんの部屋があった場所だもの」

 「じゃあ、俺が行ってくる」

 「僕も行きます。一人じゃ危険ですから」

 「分かった。頼む」

 「はい。それと後で皆さんに聞いていただきたいことがあるんです」


 突然、厳しい顔つきで言いだした広田に、一同はとまどいながらも頷いた。


 (この際、何がこようと驚かないぜ)

 

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