第37話:決意
「あれ? でも、灯ちゃんが神隠しにあったのって美花が亡くなってからよね?」
美智は、女将さんから聞いた話を思い出す。
「…………実はね、美花ちゃんが亡くなったことで一度私は人柱からはずされたの」
「何で? 美花は深見の家とは全く関係ないよ?」
「人柱の条件は、深見の家に連なる娘である事。でも、かならず娘が生まれるとは限らない。それを補う為の条件、それが神楽が舞えること。それも名手と言われるほどの才能を秘めた少女」
神楽が舞えることが人柱としての条件。
だとしたら、祖母が神楽を舞うことを禁じた理由はこれだ。
「でも、美花は…………」
「そう、美花ちゃんは、神楽が苦手だった。一度、神主さんが見たらしいの、神楽を踊る姿を。でも、それは」
「それは、美花ではなく私だった」
美智の言葉に灯は頷いた。
そして、床に手をつき美智に頭を下げる。
「ごめんなさい、謝ってすむことではないわ。私の代わりに犠牲にしてしまったのは事実。ごめんなさい」
「…………謝ることないよ。灯ちゃんが謝る必要なんてないじゃない! 灯ちゃんだって被害者だわ」
美智は、灯の体を起こし、灯を抱きしめる。
「ありがとう。でも、私は最初からすべて教えられて育てられたから」
「え?」
「灯という名はね、人柱になる少女につけられる名前なの」
灯の言葉に美智は愕然とする。
小さい頃から人柱として育てられ、その時が来るのを待つということはどれだけつらく、ひどいことだろう。
美智は改めてこの村の因習が許せない。そして、それを実行しようとした大人達が。
「逃げよう、灯ちゃん。駄目だよ、このままじゃ。灯ちゃんが人柱になったって誰も救われない。また50年後に被害者を出すの? ここで終わらせよう! この村の負の歴史を」
美智の言葉に灯は心惹かれているようだった。
「そう出来ればどんなにいいか。でも、無理だわ。この十年ここに閉じ込められて私はどこかおかしくなってしまったの。いっそのことさっさと殺してくれないかと思う自分がいる」
「だから出るのよ、この村を。そして出て心を休ませてから自分で答えを出すべきよ。大丈夫、この件について調べてるのは私だけじゃない。外には、まだ味方がいる。だから、諦めないで、前を見ることを」




