第33話:墓荒らし
「明は禁足地に入ったことはあるの? おじさんの代わりに儀式の準備してるんでしょ?」
美智の言葉に明は頭を振る。
「ううん、入ったことはない。あそこには正式に当主とならないと入れない。禁足地の入口の社務所に届け物をするくらいだ」
「そうなんだ。でもこれはあくまで想像だから」
「うん、でも謎は残るばかりだよね」
「川辺先生の家ってどんなところだっけ?」
「一応、うちの分家。確か清流荘の女将さんのお姉さんが母親らしいけど、もう亡くなっているから」
「そうなんだ? じゃあ、あの木箱があそこにあっても不思議じゃないか。女将さんか誰かに置かせて欲しいって頼めばいいし、裏口とか通路は把握してるでしょ、多分」
「夏美は知らないのかな?」
「歳が少し離れているし、母親が亡くなってからは疎遠なんじゃないの?」
「そっか」
「とにかく夏美を襲った犯人の正体が分らない以上、気を引き締めて行きましょう」
「うん」
美智の言葉に明は力強く返事を返す。
(絶対、美智は僕が守る)
それから深夜になり人の気配が無くなった頃、二人はそっと家を出た。
用心の為に懐中電灯は極力使わないように寺へと急いだ。
運の良いことに今日は満月、元々電灯が少ない村だったのでこっそりと移動するには好都合だ。
さすがに墓地に入ると足元が不安なので光を細くして足元だけを照らす。
そして例のお墓にたどり着く。
「美智、このお墓でいいの?」
明は、声を押さえて尋ねる。明の言葉に美智は無言で頷き意志を伝える。
「美智、明かり持ってて」
懐中電灯を美智に手渡すと明は、骨壷を収める為のスペースを塞ぐ石を動かす。
けっこうな重さがあったが何とか1人で動かすことに成功する。
美智はその穴に光を照らす、すると骨壷の上で何かが光を反射する。
「明」
明は手を伸ばし、その何かを手に取る。それはビニールに入った小さな鍵。二人は頷き合うとお墓を元に戻す。
そして周囲を注意深く見渡す。誰もいないようだった。
「家に戻りましょう」
2人は急いでその場を後にしようとした。
そして墓地の出口まで来た時、ヒュッと何かが空気を切り裂くような音がした。
前を歩いていた明は反射的にそれを避けて、美智をその腕に庇う。
「何?」
ゴスっという音と何かが地面を打ちつけるのが分った。
美智は、持っていた懐中電灯を照らすとその音の正体が自分の腕くらいの角材であることに気付く。
そして今度はその角材の持ち主を照らそうとした瞬間、ゴツリと自分の頭にぶつかる衝撃に襲われそれと同時に意識が無くなりその場に倒れる。
それと同時に一緒にいた明も何者かに殴られ意識を失った。
そして二人を襲った人物達は、二人の体を抱えてどこかに向かって行ったのだった。




