第30話:病室
功は、診療所へと走った。この村で運ばれるとしたらあそこしかないから。
診療所のドアを開けるとそこには夏美の両親がいた。
「おばさん! おじさん!」
「功君! 来てくれたのね?」
「夏美は?」
「怪我自体はそんなにひどくないんだけど、ひどく取り乱してるの。それで功君を呼んで欲しいって言うから」
「面会しても大丈夫ですか?」
「ええ、お願い」
処置室へと入ると先生とベッドに横たわった夏美がいた。
「夏美! 大丈夫か?」
ベッドに近づくと夏美の頭に巻かれた包帯が目につく。
「先生、大丈夫なんですか? 市内の病院に連れていったほうが…………」
「大丈夫。数針縫ったくらいだ。今日は様子見で入院。悪いがちょっと席を外すよ。ご両親に説明しなきゃならないから」
「はい」
先生が出て行くと近くにあった丸椅子に腰を下ろす。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫よ。それよりごめんね? 呼びつけたりして」
「いいんだよ!! そんなこと!」
「ちょっと怖くて。ごめんね」
見ると夏美の手はかすかに震えていた。
その手を功は握り締める。もう大丈夫だと安心させる為に。
「油断したみたい。まさか、自宅の倉であんな目に合うなんて」
「何してたんだよ」
「おじさんの住所を調べてたの。それ自体はすぐ終わったから、でも知らない木箱があってそれを開けて中身を見てたら殴られたの」
「木箱?」
「うん。でもさっき両親に聞いたらそんな物無かったって」
「何が入ってたんだ?」
「血だらけの衣服と写真」
「写真?」
「うん。灯ちゃんと川辺先生の写真」
「じゃあ、お前を殴ったのって」
「分らないわ。だってこの時間、先生はまだ学校だし」
「そうか。…………じゃあ今日は俺ここに泊まって寝ずの番してるから」
「え? いいよ、悪いよ」
「いいんだよ。一人にするのは危険だ」
「ありがとう。あっ、じゃあそこにある卒業アルバムに挟んだメモを美智に渡してくれるかな?」
「分った。少し、眠って休め」
「うん」
功の言葉に安心したのか夏美はすぐ眠りについた。
(許さねぇ、夏美にまでこんなこと!!)




