第16話:あたしは珍獣か!!
バッグを手に取り、宿の階下へと向かうと入口から男女の会話が聞こえてきた。
「…………………帰省するにしても何故今なのか…………………」
「お仕事の都合です。妹のお墓参りをするのが何がいけないんです。さぁ、用がないならお帰りください」
女性は、もちろんこの宿の女将だ、男のほうは神社の宮司さん?
(多分、私のことよね。………………何だかな、この村には何かあるって自分達で証明してないか)
美智は階段に座り込み、溜息をつく。やがて、宮司さんは帰っていった。
「……………おはようございます」
「あら? ………………もしかして聞いてた?」
「はい」
「気にしないのよ、あなたの行動は当然のことなんだから。ただ、儀式前だから、皆落ち着かないのよ」
「しょうがないですよ、気にしてません」
「なら、いいわ」
「あっ、女将さん、深見の御当主夫妻とお友だちですよね?」
「ええ、そうよ。と言ってもあなたのお父さんとも幼馴染よ」
「あの、灯ちゃんって今、村に帰って来てるんですか?」
「何? 急に」
女将さんの声が一転してするどいものに変わったので驚いた。
「この間、取材で灯ちゃんのお友だちに会ったので…………」
何かあるなと思い、思わず嘘をつく。
「ああ、そうなの。…………みっちゃん、あなたは灯ちゃんともお友達だし、言っておくわ。でも決してこの村でその名前を出しては駄目。余計にここに居づらくなるから」
「はい」
「実はね、灯ちゃんなんだけど、みっちゃん達がこの村から出て行った後にね、神隠しに合ったの」
「神隠し?」
思わず、笑いを含んだ反応になってしまった。この科学が発達した時代に神隠しって……………。
「みっちゃん!! ふざけないの。これは本当なのよ、ちょうど休みで村に帰省してた時にね、あの山道で忽然と姿を消してしまったの。灯ちゃんも神楽の名手だったから…………、いい? みっちゃんもあの山に入る時は気をつけなさい。分った?」
女将さんの余りの迫力に美智は神妙に頷くしかなかった。
美智は予定を変更して功の家に向かうことにした。
それにしてもこれは偶然何だろうか? 美花が亡くなった後に同じ年代の少女が姿を消してしまう。
(まぁ、偶然が重なった結果と言えばそうなんだろうけど。でも…………)
ふと視線を感じて周囲を見渡すと、村の人間がこちらを見ている。
とりあえず、お辞儀をするとその人達はお辞儀を返し急いで去っていく。
(いったい、何? 何かした?)
まぁ、顔を知っている程度の人間だから別にいいけど、この村の空気の悪さは何なのだろうか。
その後も似たような出来事が2度、3度と起き、いいかげんにしろと叫びたくなるのを抑えながら功の家へと辿りついた。
今日は、そのまま功の寝床である倉へと真っ直ぐに向かった。
――――ドンドン!
倉の戸を思い切り叩くと奥から功がぼりぼりと頭をかきながら出てきた。
「…………………はよ。何だよ、朝からその不機嫌さ全開の顔は?」
「うっさいな! さっさと中に入れろ」
美智は功の体を押しのけると倉の中へ入る。
後ろでは、功が戸を閉めた音がする。音で閉まったのを確認するなり美智は、叫んだ。
「いったい、何だってんだよ。あたしが何かしたか―――――!!」
「…………うっせえよ」
功のぼやきが聞こえるがそんなのにかまっていられない程に、美智は腹が立っていた。




