第13話:彼女の思い
美智は相手を威嚇すべく普段よりするどい声を出した。
しかし、そこ立っていたのは不審者ではなく、夏美だった。
「夏美? 何してんの?」
一応、相手は夏美とはいえ軽く睨みをきかせてみる。すると、夏美はしどろもどろな口調で話し始めた。
「ごめん、明日のことどうなったかなって聞きにきたんだけど。何か真剣な話してたみたいだから声かけづらくて…………」
睨みがよほど効いたのか、夏美は半泣き状態になってしまった。
「おい! 美智どうしたんだよ…………………」
手にしていた携帯からの功の怒鳴り声でまだ通話中だということを思いだす。
「とにかく部屋に入って。それから話そう?」
夏美に声をかけ手を引き、部屋に招き入れながら美智は通話に戻る。
「ごめん、驚かせて。ちょっと困ったことになって。悪いけど今から清流荘まで来てくれない? 部屋は蛍の間だから」
そう言って電話を切り、夏美の正面に座る。
そして一度溜息をつき、夏美から詳しい話を聞くことにした。
「で、どこから聞いてたの?」
「ダムの賛成反対派がどうとかから」
「めちゃくちゃ最初からじゃん。…………何ですぐ部屋から離れるなり入ってくるなりしなかったの?」
「すごく真剣な話みたいだったし。それに気になってたの」
「気になる?」
夏美はコクリと一度頷き、言葉を続けた。
「だって、こんな時期に功がいきなり帰って来て、その次に美智が帰って来た。その上、二人は何か調べてるみたいだったし。それに、明が山の橋で美智に会ったって、だから…………」
「あのさ、別に花を供えに行っただけよ?」
「ううん、儀式の前に山に入るなんてことこの村で生まれ育った人間ならしないはず。それなのにいくら許可を貰ったからって山に入るなんておかしいもん!」
「それで話を盗み聞き?」
「だって……。私、ずっと思ってた。十年前、美智達家族が居なくなって、絶対深見の家と揉めたんだ。だからこの村に居れなくなったって。美花のことなんでしょ? あの事を調べてるんでしょ?」
「違うって。そりゃ確かに色々調べてるよ、ダムの件にしたって。ただ、それは記者として気になってるだけであって、美花のことなんて…………」
「嘘!! 絶対、美花のことだよ。じゃなきゃ、あの功がこの村に帰って来るなんてありえない! だって功は今でも美花が好きなんだもん。美花のこと忘れてない!」
夏美がこんなにも感情をあらわにして私にくってかかってくることは今までなかった。
どう言ったらいいものか考えあぐねているとついに夏美は泣き出してしまう。
(…………ピンチだわ。どうしよう。てかやっぱり夏美は今でも…………)
「あんた、今でも功のことが…………」
夏美はスカートを握りしめると美智を見て言った。
「…………好きだよ。昔からずっと好きだよ! 悪い? 美花と付き合い始めてからもずっと!!」
「悪いとは言ってないし。別にいいんじゃない? 美花だっていつまでも功が独り身でいたら悲しいだろうし」
「無理だよ。たとえ美花がそう思ってたって、功はかわらない、かわらないもん!」
夏美はそう叫ぶと部屋から飛び出して行ってしまう。
追いかけようと部屋のドアまで行くがもう夏美は廊下には居なかった。
その代わり、開いたドアの後ろから功が出て来た。
「んで、あんたはどうするわけ?」
美智は思い切り功を睨む。当の本人は、片手で口元をおおいばつの悪そうな顔していた。
「どうするか…………」
「アホ!! 自分で考えろ!」
美智はやり場の無い感情を功の足を思いきり踏みつけることで昇華させた。




