第116話:それぞれの明日・5
「やっと解放されたな」
「そうですね。これからは、大変でしょうが未来は明るいものになると私は思っています」
「あぁ。若い世代にも気骨のある者があんなにいたとは、思いもよらぬ収穫だ」
「えぇ、きっと大丈夫でしょう」
消火活動を終えた後、村の青年団のリーダー格を集めおばばと深見の当主の口から今回の件を伝えた。そして、明日から起こるであろう混乱を詫びる。すると彼等は、若干の動揺は見せたものの冷静に事を受け止めてくれた。そして、これからも村を支えていくと力強く誓ってくれたのだ。
「皆さんには、こちらで弁護士を手配しますので。残された家族のケアも責任を持って行います」
「あぁ、頼むよ。私は、年が年だから生きて戻る事はないだろうからね」
「?」
おばばの言葉に当主は、いぶかしむ。息子夫婦は、罪を犯したかもしれないが彼女は違う。それなのに戻ってこれないとはどういうことだろうか。
「神崎さん?」
「私は、数年前に夫を殺した。発作を起こして苦しむ夫に薬を与えなかった」
「何故とお聞きしても?」
「もう耐えられなかった。儀式に翻弄される息子夫婦を見るのも、夫が変わっていくのも」
「…………」
「我が家の財産の内、有価証券や現金は村へ寄付しようと思う。些細なものだが村の立て直しに使って欲しい。村にある不動産については美智に継がせようと思う。あの子は、私にとっては孫のようなものだから」
「分かりました。そのように手配をさせて頂きます。息子さん達の葬儀や以後の弔いは私が責任もって執り行いますので」
「あぁ、すまないね。最後まで迷惑をかけどうしになってしまった」
「そんな事ありません。あなたのおかげで私達の娘は生きる事が出来た。感謝しています」
自分達の娘を必死に守ろうとしてくれたこの女性を責めることなど出来るわけがない。美花ちゃんが死んだあの時、真っ先に全てを話たかったに違いない。それでも、灯という存在の為に必死に堪えてくれたのを知っているから尚更である。
「美花ちゃんのお墓への献花も神崎さんの分も合わせて我々が行いますので。それに彼女のご両親への謝罪も合わせて」
「すまない。残りの人生は、犠牲者の死を悼む事に費やそうと思う。それが私に出来る唯一の償いだから」




