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蛍籠  作者:
11/119

第10話:日記

 美智はとりあえず、明日のささやかな飲み会の為に自宅の掃除へと向かった。

 あんの上、一年ぶりに人が足を踏み入れるということであちこち埃で汚れていた。


 「とりあえず、リビングと台所だけでも掃除しなきゃね」


 美智は、そう思い立ち、階段下にある収納庫に掃除用具を取りに行く。

 毎年、お盆の時期になると両親が帰省してきているので基本的な用具は整っている。

 美智は腕まくりをすると、一度気合を入れ直し、掃除を開始した。

 そして掃除をすること3時間、ある程度目途が立ったので今日はここまでにすることにした。


 「料理は適当にコンビニに行くか…………」


 美智は掃除用具を片付けると二階の自分の部屋へと向かった。

 扉の前に立ち、一度呼吸をすると扉を開ける。そこには、十年前と変わらない部屋があった。自分の物は無いけれど美花の机や物が残っている。

 引越しの時、何となく持ち出せなかったのだ。だから、美花が生きていた頃のままにしてある。


 「本当に趣味が違ったからな」


 美花の椅子に座り、机の周りの物を手にとっていると小物入れが目に入る。開けてみると、一本の鍵が出て来た。


 「何だろう? これ」


 キョロキョロと周りを見渡すが特に鍵で開けるものはなく、可能性としては机の一番上の引き出しだ。鍵を差し込んでみると、鍵はすんなり穴に入っていく。


 ゴクリ。


 緊張で喉を鳴らすと深呼吸をして覚悟を決めた。

 そして美智は思い切って鍵を回してみる。するとガチャリと音がして鍵が開いた。

 引き出しを開けてみるとファイリングされた紙束と1冊のノートが出て来た。


 「何だろう? ………………龍神の花嫁について?」


 そこに在ったのは、この村に伝わる伝承や祭りなどの祭事についての資料だった。

 美花がここまできれいにファイリングしているということは何か調べていたのだろうか?

 一緒にしまわれていたノートを広げる。

 数行程目を通すとそれは、美花の日記であることが分った。


 「…………いいのかな。ごめん! 美花、読むよ」


 その日記の一番始めの日は、祖母が亡くなってからすぐだった。


 3月3日

 おばあちゃんが亡くなってもう一週間がたった。葬儀なども一段落がついてホッとした。

 やっと色々と考える時間が持てた。


 それにしてもおばあちゃんの遺言は一体何だったんだろう?

 神楽を踊っては駄目。まぁ、私は神楽は苦手だからいいけど、あんなに昔から稽古していた美智がちょっと気の毒。


 それに、神楽の娘役と龍神役の言われがあれば、あの二人もいいかげんくっつくだろうと思ってたのに。


 でも、あのおばあちゃんが神楽を舞うことを禁じたということはかなりのことだ。

 お父さん達や美智はあんまり深く考えてないみたいだけど。

 何か気になるんだよね。


 最初のページを読んで驚いた。

 美花はこんなことを考えていたんだ。確かに、おばあちゃんの言葉を深く考えてなかった私は今になってその事を気にしだしたのに。

 昔からあの子は、そういう子だった。一度気になると調べないと気がすまない。


 (でも、くっつくとかは余計だから)


 美智は、日記とファイルを持ち出すことにした。

 もしかしたらこれには今回の件に関する情報があるかもしれないからだ。


 (ゆっくりと宿で読もう)


 そう決めると美智は急いで戸締りを済ませると鍵を閉め清流荘へ帰路についた。

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