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蛍籠  作者:
109/119

第108話:水中の戦い

 どんどんと底へと沈んでいきながら美智は水の中である物を発見した。それは、いくつかの籠。ほとんどが朽ち果てていたが、それでもいくつかは原型を留めていた。籠の周囲には、浮かび上がるのを防止する為に重しの鉄の塊がいくつも付いている。その籠の中に残るのは、沈められた娘が身に纏っていたと思われる衣装の残骸と骨の数々。

 

 (…………残っていたなんて。このどれかの籠が美月さんの籠)


 自らの意志に反して死を迎えた娘達。この中で死の恐怖と苦しみに晒された彼女達をこのままにしておく訳にはいかない。儀式を終わらせるという事は、彼女達をこの水の中から救い出してこそなのだ。


 美智は、近くにある籠の一つに手を伸ばしてその柵を掴む。何とかして息が続く間に、上に上がらなければならない。

 とりあえずは、この衣装だ。これが、今の自分にとって一番邪魔なもの。片手で袴の帯紐を解きにかかる。しかし、片手の上に水を吸って固くなった紐はなかなか解けない。


 ゴボッ。

 息がどんどんと無くなっていく。その恐怖にどんどんと焦りが出てくる。その時、籠の中で何かが光った。その光に手を伸ばす。

 着物の切れ端と水草の中に合ったのは、錆びついた一本の短刀。ほとんどが錆で使い物になりそうになかったが一か所だけ無事な部分があった。

 帯の間に短刀を挟みするようにして切りこみを入れて行く。何度も何度も動かすとかすかに袴がゆるまってくる感じがした。


 (…………あと、少し。もうちょっとだけ持って)


 だんだんと苦しさが増すのと同時に意識が遠の始めている。必死に手を動かすことで意識を保つ。帯紐が切れるのが先かそれとも自分の意識が飛ぶのが先か。


 (冗談じゃない。負けるもんか…………)


 やがてプツリと何かが切れた感触がする。そのまま短刀を放り出し袴に手をかけた。するとそれまでびくともしなかった帯が解ける。


 (やった……)


 美智は、袴を一気に脱ぎ捨てると同時に上を目指す。それまで沈むことしかなかった体が、浮き上がるという感覚を取り戻していく。

 しかし、美智の息は限界で既に鼻や口からは水が大量に流れ込んでいる。


 (も…………う……………だ…………め。ご……………めん………あ………き)


 そして、美智は意識を手放す。なので、誰かが自分の腕を掴んでそのまま引き上げてくれたことに気がつかなかった。

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