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蛍籠  作者:
107/119

第106話:落下

 「いたっ…………、うぅ、血は苦手なのに」


 ちらりと傷口に目をやるとそこまで深くはないが、真一文字に傷が走り、そこからポタポタと血が流れている。

 

 「ふふふふふふ、龍神様への貢物。私の手で…………」

 「久美、止めないか…………、うわぁ」


 妻の手からナイフを取り上げようとした神主だったが、狂気に支配された者の力には勝てないようでじたばたと暴れる彼女に突き飛ばされた。

 ぶつぶつ呟きながら、一歩一歩こちらに近づいてくる彼女に美智は視線をそらさないようにしながら同じ分だけ後ろへさがる。

 

 「美智!」

 「先輩、危ないです」

 「え?」


 騒ぎを聞きつけて外へと出てきた明達の姿にホッとしつつも、広田の警告に首を傾げる。しかし、彼の言葉の意味をすぐに悟ることになった。

 久美にばかり集中していたため、自分の後に何があるかにまったく気がつかなかったのだ。いつの間にか、自分は泉のすぐ近くにまで来ていた。

 あと、一、二歩下がれば泉に落下してしまうだろう。


 (嘘! やばい!)


 明達もこちらに駆けつけようとしているが、少し距離がある。多分、間に合わないだろう。神主も突き飛ばされた時に怪我したのか立ちあがれないでいた。

 

 (やばい、本当にやばい。落ちたら、上がれない)


 基本的に運動は得意だが、昔から何故か泳ぎだけは苦手だった。泳げないわけではないが、こんな服装で落ちたらまず間違いなく浮きあがることは不可能。


 「さぁ、龍神様の元へ送ってあげるわ。大丈夫、貴女は選ばれた存在だもの。苦しまないですむわ」

 「神楽は舞ってないんだから、私なんかを奉げてもあなたの願いは叶わない。一度、失われた命が帰るなんてこと絶対にあり得ない!」

 「うるさい! そんなことやってみなくては分からないのよ!! さぁ、落ちろ!!」


 久美は、唸り声を上げながらナイフを振り上げ美智の元へ駆けてくる。このままナイフで刺されるか、それとも。

 

 「仕方ない。明、功、後は任せた!!」


 美智は、そう叫ぶと自ら泉へと飛び込んだ。


 

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