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蛍籠  作者:
105/119

第104話:悪夢の夜・3

 ゆっくりとそして少しでもショックを受けさせないように事の経緯を説明する。最初は、半信半疑な顔をしていたが私と英一の言葉が真実だと実感するにつれて、その顔色はどんどんと青ざめていく。しかし、思っていたより久美は強い娘だったらしく、話をする前以上に取り乱すことはなかった。


 「…………人柱だなんて、そんなこと。でも、真実なんですね」

 「あぁ、残念ながらね」

 

 最後まで話を聞き終えた久美は、俯き、黙りこむ。英一は、彼女の手を握り寄り添う。そんな息子夫婦の姿に、自分の力の至らなさを後悔する。嫁いでからの数十年の間にもっと何か出来たのではないか。息子の代わりに自分の手が血で汚れるべきではなかったのかと。


 「久美」

 「あなた………、私、待っていますから。この子と一緒に」

 「ありがとう…………」


 それでも互いを思いあう二人の姿にホッと胸をなでおろす。この様子ならこの先も大丈夫だろう、自分達とは違って。

 

 「二人とも、もう休みなさい。明日は、早いからね」

 「母さん。ありがとうございます。それと…………」

 「久美のことは美苑によく頼んでおくよ。私もすぐに戻れるとは限らないからね」

 「…………さん。…………許さんぞ! そんな事!!」


 それまで一言もしゃべらなかった夫が大声で怒鳴り散らす。その剣幕に久美は、怯え、体をすくませる。そんな妻を英一は、自分の背に庇う。

 その姿に今までとは何か違うものを感じ取り、息子の前に立って夫を阻む。しかし、老いたとはいえ男である夫の行動を止めることは出来ず、逆に床に突き飛ばされた。


 「お義母さん!!」

 「うっ…………」


 床に体を打ちつけて動けない義母の姿を見た久美は、すぐに駆け寄ると抱き起こす。英一も駆け寄ろうとしたのだが、一瞬の隙をついた父親に丸椅子で頭を殴られた。


 「うあっ!!」

 「あなた!!」


 突然の義父の暴挙に久美は悲鳴を上げると義母の体をそっと床に横たわらせると夫の側に向かおうとした。しかし、服の裾を掴まれそれを阻まれる。


 「駄目だ。危ない…………」

 「お義母さん!! でも、英一さんが…………」

 「腹の子に何かあったらどうするんだ…………、私が行く…………」

 「久美! 母さん! 私は大丈夫です。久美、母さんと一緒に外に出ろ!!」


 最初に殴られ、床に倒れこんだ英一は、そのまま暴行されながらも妻や母を案じて声を上げる。そんな夫の言葉に久美は、泣きながら覚悟を決めると再び抱き起こす。そして肩を貸しながら、半分抱える形で出口へと向かう。とりあえず、義母を安全な場所に移しまた夫の元に戻る事を決めたのだ。

 だが、あと少しという処で義父が近くにあった工具箱の中にあった金槌を手にする光景が目に映る。


 「駄目!!」

 「いけない、久美! 戻るんだ!!」


 そしてそれは、起きた。

 大切な、大切な命が絶たれる瞬間が。

 

 

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