第103話:悪夢の夜・2
「……………どうでもいい事だ」
「本当にそうですか? あなたが儀式に固執するのは、その事が大きいと私は思いますけど」
じっと見つ合うこと数秒。視線をそらしたのは、夫だった。言葉では、否定してもその行動が彼の思いを表している。
「とりあえず、あなたとの話はあとです。英一」
「はっ、はい」
「本気何だね?」
「はい。自分の罪から逃れたまま父親にはなれません」
「そうか。明日、私も一緒に行こう。知り合いの弁護士と一緒にな。で、自首するのはお前だけでいいのかい?」
「はい。他の者は、巻き込まれただけです。…………通は、あの時正気じゃなかった。あの子をあそこまで追いつめたのは我々です」
「分かった。問題は…………」
ガタン。
「誰だ?」
入口の近くに立てかけてあった箒が倒れているのが目に入る。そしてその横に見なれた姿があった。そこに茫然と立ち尽くしている久美の姿に息をのむ。
「何の話ですか? 英一さんが自首って、どういうことですか!!」
「久美」
「自首って…………、英一さんが人を傷つけるようなことをするわけないじゃないですか!!」
久美は、そう捲し立てながら自分の腕に縋ってくる。その悲痛な声にひどく心が痛んだ。何も事情をしらされていない嫁にとって突然夫が自首をするというのは青天の霹靂と言ってもいいだろう。
「久美。こんな事になってすまない。ただ、私は人として父としてお腹にいる我が子にとって誇れる人間でありたいんだ」
「なら、せめて理由を説明してください。何があっても驚きませんから!!」
「しかし…………」
妊娠中の妻に話してもいいか判断がつかず逡巡する息子の姿に私は覚悟を決める。何も知らないで後から第三者に話を聞かされるよりは、自分達からきちんと話をするべきだろう。それが、久美に対しての自分なりの誠意だ。
「久美、最後まで落ち着いて聞くというのなら私から全てを話そう。お前は全てを知る権利がある。だがお前にそれを受け入れる覚悟があるかい?」
「…………はい」




