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第101話:夫・2
夫の告白に言葉を無くす自分を見て彼は笑った。その瞳には、かすかに狂気が混ざっていて恐ろしく感じ、思わず後ずさり彼と距離を取る。
そんな妻の反応にも、夫は笑うだけ。それ以降、彼から美月の話を聞くとはなかったし、自分から聞くこともしなかった。もしかしたら、夫の心の中に潜む闇に触れることを恐れていたのかもしれない。
ただ、今ならば思う。何故あの時、夫の考えをきちんと聞かなかったのかと。
人間、誰しも思うことがあるだろう。何故、あの時あんな行動をしたのか。何故、あんな言動をしたのか。
もし、時間をやり直すことが出来たのなら、私はあの時に戻りたい。そして、彼と真っすぐ向き合いたいと。
そうすれば、今抱えている問題が何か違う結果になったのかもしれないから。
「ん? あれは…………」
外でかすかに光の筋が見えた。
「懐中電灯?」
こんな遅くに一体誰が?
その光は、社務所の方向へ消えて行った。こんな時間にあそこに行くのは、家の人間しかいないはず。とすれば、夫か息子、それとも義娘か。
「行ってみるか」
手にしていたコップを軽く水で洗いカゴに置く。そしてそのまま外へと向かった。
私は、この時思いもしなかった。自分が夫達の行動に不信さを感じていたように、義娘もまた私達に同じことを感じていたことを。




