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蛍籠  作者:
102/119

第101話:夫・2

 夫の告白に言葉を無くす自分を見て彼は笑った。その瞳には、かすかに狂気が混ざっていて恐ろしく感じ、思わず後ずさり彼と距離を取る。

 そんな妻の反応にも、夫は笑うだけ。それ以降、彼から美月の話を聞くとはなかったし、自分から聞くこともしなかった。もしかしたら、夫の心の中に潜む闇に触れることを恐れていたのかもしれない。

 

 ただ、今ならば思う。何故あの時、夫の考えをきちんと聞かなかったのかと。

 人間、誰しも思うことがあるだろう。何故、あの時あんな行動をしたのか。何故、あんな言動をしたのか。

 もし、時間をやり直すことが出来たのなら、私はあの時に戻りたい。そして、彼と真っすぐ向き合いたいと。

 そうすれば、今抱えている問題が何か違う結果になったのかもしれないから。



 「ん? あれは…………」


 外でかすかに光の筋が見えた。

 

 「懐中電灯?」


 こんな遅くに一体誰が?

 その光は、社務所の方向へ消えて行った。こんな時間にあそこに行くのは、家の人間しかいないはず。とすれば、夫か息子、それとも義娘か。

 

 「行ってみるか」


 手にしていたコップを軽く水で洗いカゴに置く。そしてそのまま外へと向かった。

 私は、この時思いもしなかった。自分が夫達の行動に不信さを感じていたように、義娘もまた私達に同じことを感じていたことを。

 

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