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蛍籠  作者:
101/119

第100話:夫

 家に戻ると居間には、誰もいなかった。柱にかけている時計に目をやるとすでに午前0時を過ぎている。きっと、皆休んでいるのだろう。


 「…………さて、どう切り出せばいいのかね」


 覚悟を決めたはいいが、いざ行動に移そうとすると自分の心に迷いが生じる。それに、久美がいない時を狙う必要があった。

 妊娠中の義娘に何かがあっては、いけない。

 

 まぁ、何にせよ気が重いことには違いない。相手の出方によっては、非情な決断をすることになる。しかも、相手は長年連れ添ってきた夫だ。

 夫へと情を捨て去ることが出来るか。難しい問題だ。


 そんな事を考えていたら喉が渇いてくる。水をとりに台所へと向かう。コップに水をなみなみとそそぐと一気に飲み干す。

 

 夫は、元々気弱で情の深い男だった。幼少の頃からの顔見知りで、互いの実家も交流が深かく、結婚話が出るのも自然の流れ。しかし、当初私は、結婚する気はまるでなかった。その理由は、簡単で彼には他に思う女性がいるのを知っていたから。

 相手は、美苑の従姉で美月というとても美しい女性。私や美苑にとって彼女は憧れの人。そんな彼女を熱心に見つめている彼をすぐ側で見ていたのだ。

 当時、深見の若と神主の息子。どちらが彼女を射止めるかが村の娘達の一番の話題だった。そんな事を知ってか知らずか親の口から縁談話が出た時に私は、思わず両親達に正気なのかと尋ねてしまった。今、考えれば親にそんな口を聞くなんて無謀だったと思う。

 その後、縁談話は一度流れた。だが、その1年後私達は祝言を上げることになった。


 理由は、その数カ月前に美月姉さんが失踪したことにより夫が結婚を承諾したからだ。そして、この頃から夫は、寡黙な男へと変貌していったのだった。

 彼が変わった理由を知ったのは、義理の両親から神社を引き継いだ時だった。息子が真実を知らされたのと同様に私もそれを知らされたのだ。

 しかし、夫は顔色一つ変えることはなく、不信に思った私は訳を尋ねると彼は暗い笑みを浮かべこう言った。


 「美月が沈められるのをこの目で見ていたからな」と。

 


 

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