第99話:後悔・3
男に案内され、屋敷の裏口から部屋へと通される。そこには、自分以外の人間はいなかった。用意された座布団に腰を降ろすと知らず知らずのうちに溜息をついてしまう。
誰にも知られずにと言われた時点で、嫌な予感はしていた。多分、息子の異変にも関わることだということは予想出来た。
「お待たせしました」
「いや。かまわないよ」
部屋に入ってきた若当主の様子に、これは当たりだと思った。普段は穏やかな笑みを終始浮かべているこの男も、今夜ばかりはそうもいかないらしい。その顔は、うっすらと青ざめている。
「…………何があったんだい。私が少し村を留守にしている間に」
「我々が考える程、あの方達は甘くなかったようです」
”あの方達”という言葉に私の脳裏に二人の人物の顔がよぎる。自分の夫とそしてこの若当主の父親であり自分の幼馴染である男の顔が。
「それで?」
「複数の若者らに彼の始末を命じ、それが実行されたようです。その中には…………」
「いい、分かっている。分かっているさ」
手を軽く振り青年の言葉を途中で遮ると同時に軽い眩暈が自分を襲う。
「神崎さん!!」
「大丈夫、大丈夫だよ」
額に手を当てて、眩暈をやり過ごす。それ自体は、一瞬の事で落ちかけた意識はすぐに浮上する。
「…………想定していた事態とはいえ、現実に起きるとこのざまとは。私もまだまだか」
「申し訳ない。急な用事で市内に出なければならなくなり、急いで帰ってきたらもう。古参の者が手引きしたようで」
「仕方ないさ。まだまだ、あいつの影響力は強い。何があったか一から説明してほしい」
「はい」
若当主は、起こった出来事を把握した範囲で明瞭簡潔に説明し始める。それを聞きながら私は、これから自分がどうするかを考えていた。
そして、ある決心を下す。
けれど、考えてもいなかったのだ。その場であんな悲劇が待っていることを。




