恋人が多重人格になったとき、あなたならどうするか。【評論】
突然ですが、明日になって恋人が急に多重人格者になったとき、あなたならどうしますか?
無論、多重人格の経緯にもよりけりで、一概に世間一般と言うのは微妙ですが、多くの方は、『破局』か『妥協』を選ぶと思われます。
恋人の人柄・人望を好いていた場合は破局の路を辿るかもしれません。一方で恋人の肉体的な面を好いていた場合や、単に存在価値が肝要な場合は、妥協して関係が維持されるやも分かりません。ですが、これらは元の人格や恋人の外貌が関与するものです。
ここで、妥協して関係を維持した場合を考えてみてください。
恋人が多重人格になって日数が経った頃に、元の人格ではなく、後天的な人格(以降、別人格)の方に魅力を感じて好意を抱くようになる、すなわち恋心が『移転』することはないのでしょうか。私は有り得る事態だと推考しています。
では今度、その別人格に対する恋心は、浮気に値するのでしょうか。容貌が変わらないので問題ないのか、精神面が異なるので浮気なのか。
哲学に片足を突っ込んでいるこの標題。類似する小説がないか二晩かけて調べて見ましたが、残念ながらかすりもしませんでした。
私は『別人格への恋』は浮気に当たらないものの、一定のリスクがあるように思います。
まず、色恋をしている時期が違いますから、その時点で浮気だという主張は霧消します。 ですが、私は浮気をした後の展開が難点となってくるように思うのです。
というのも、基本的に多重人格の原因である『解離性同一性障害』というのは、虐待、いじめなどの圧倒的精神的苦痛から、身を守るために生じる精神疾患です。別人格に一定の愛情を加え、障害の改善を図ろうとすると、人格は統合に向かっていきます。 (※ただし、多重人格同士の協力を目指す場合もあります。
つまり、別人格に与えた愛情が、別人格を消失させるという皮肉が生まれるわけですね。
この統合というのがミソでして、統合とはすなわち、正常な人格が戻り、別人格が消失することを意味します。よって、心の拠り所は統合後の人格だけになりますが、この統合後の人格が正常な人格であるならば、必然的に元の人格とも近い性格を有することになります。
……ここで『別人格への恋』をした人は、元の人格ではなく、別人格を愛したという後ろめたさを感じる可能性があります。
これが『別人格への恋』が背負うリスクなのです。 恋人に注いできた愛は、この頃には並々ならぬものになっているでしょう。
費やした時間、費用を鑑みたときに、安易に別れなぞ切り出せるわけがありません。 『別人格への恋』をした人は、当分の間わだかまりを抱えながら生きることになるのです。ですから、私は浮気ではなくとも、『別人格への恋』はするべきでないと考察します。
というような私の持論、これを投影したのが私の小説『初恋は四つの君を殺してしまう。』なわけですね。




