ブラックギルドを辞めたい俺が、なぜか熱血エージェントと転職面接の練習をしている件
ルルルルル……ガチャッ
サトウ「通信ありがとうございます!あなたの『次なる冒険』を創る、ギルド紹介代行のサトウです!」
タナカ「あっ、深夜にすみません。あの、王都の掲示板で見たんですけど……もう限界で。明日から、どうしてもギルドに行きたくないんです」
サトウ「なるほど!現状からのスピーディーなパーティー離脱ですね。お任せください、私どもはそういった『即断即決』の冒険者様を大歓迎しております!」
タナカ「よかった……。あの、ギルドマスターの顔も二度と見たくないんですが、僕が直接やり取りしなくても大丈夫ですか?」
サトウ「もちろんです!ギルド側との面倒な交渉や移籍手続きは、すべて私・サトウが代行いたします!」
タナカ「助かる……。本当に明日、ギルドハウスに行かなくていいんですね?」
サトウ「はい!明日はクエストに出ず、まずは私と直接お話ししましょう!」
タナカ「えっ、会う?わざわざですか?もう一歩も宿屋のベッドから出たくないんですけど……」
サトウ「大丈夫ですよ、使い魔越しの念話でも可能です!まずはあなたの『固有スキル』や『強み』を教えていただけますか?」
タナカ「強み?……えーと、三日徹夜でマンドラゴラの仕分けしても発狂しない精神力とかですかね」
サトウ「素晴らしい耐性値と圧倒的なコミットメント力!他のギルドも喉から手が出るほど欲しい逸材です!」
タナカ「他のギルドが?いや、僕はもう冒険したくないんです。しばらく宿屋で、ただスライムが分裂するのを眺めていたくて」
サトウ「なるほど、完全後方支援・マイペース志向ですね!最近は宿屋のベッドに寝転がりながら素材鑑定だけで完結するホワイトなギルド、増えてるんですよ!」
タナカ「鑑定!?違います、何もしたくないんです!とにかく今のギルドを辞める手続きだけしてほしいんです!掲示板に書いてあった『コミコミ金貨3枚』で全部やってくれるんですよね!?」
サトウ「金貨3枚?いえいえ、お客様。私どもからお客様に料金を請求することは一切ございません!完全無料です!」
タナカ「無料!?じゃああなた達のギルドの利益はどうなってるんですか!女神のボランティアですか!?」
サトウ「もちろん、受け入れ先のギルド側から『紹介料』としてたっぷり頂戴いたしますからね!」
タナカ「えっ!?僕が辞めたら、うちのギルドがあなたにお金を払うんですか!?」
サトウ「はい!優秀な方なら、白金貨単位のお金が動きますよ!」
タナカ「白金貨!?うちのギルマス、白金貨払ってでも僕を追い出したいんですか!?どんだけ僕の事ジャマだったの!?」
サトウ「ジャマどころか、めちゃくちゃ歓迎されるはずですよ!さあ、善は急げです。明日の朝イチで、さっそくギルマスとの面談を入れちゃいましょうか!」
タナカ「面談!?辞めるのに面談!?最後にギルマスから直々にボコボコにされるんですか!?最後くらい静かに辞めさせてよ!!」
サトウ「ボコボコにされるわけないじゃないですか!むしろ、あなたのこれまでの討伐実績を存分にアピールする絶好のチャンスですよ!」
タナカ「アピール!?『僕は三日間徹夜でゴブリンの耳を千切りました!だから辞めます!』ってギルマスにドヤ顔で言うんですか!?絶対大剣で斬られますよね!?」
サトウ「素晴らしい!そのガッツとバイタリティがあれば、先方の幹部も一発で惚れ込みますよ!」
タナカ「惚れ込む!?うちの幹部が!?『こいつ、辞めるくせにめちゃくちゃ生意気だ!気に入った!』ってなるんですか!?狂戦士の集まりですか!?」
サトウ「いやいや、王都でもトップクラスの優良ギルドですよ!明日はビシッと、一番いい勝負用アーマーで行きましょう!」
タナカ「辞めるのに勝負アーマー!?あの、土下座しやすいように、初期装備の『布の服』で行っちゃダメですかね……?」
サトウ「土下座!?なぜですか!これからの輝かしい冒険に向けた、前向きな話し合いの場ですよ!なんなら、希望報酬の交渉だって私がガッツリやりますからね!」
タナカ「辞めるのに報酬交渉!?『どうせ辞めるんだから退職金代わりに宝物庫の鍵よこせ』ってあなたが脅し取ってくれるんですか!?それもう辞め代行じゃなくてただの盗賊ギルドですよね!?」
サトウ「盗賊!?滅相もない!あなたのスキルに見合った正当な対価を引き出すだけです!『彼を逃したら損だ』と思わせるんです!」
タナカ「損だと思わせる!?なんで辞めるギルドに未練を残させなきゃいけないんですか!『ああ、タナカが抜けちゃって寂しい!』って泣かせたいんですか!?どんなメンヘラギルドですか!!」
サトウ「……えっ。辞めるギルド……?あの、お客様?……もしかしてですが、お客様は今、何のご用件で弊社『キャリア・リンク』に通信を……?」
タナカ「……えっ。ギルド辞め代行サービスの『キャリア・ブレイク』さんですよね……?」
サトウ「…………」
タナカ「…………」
サトウ「……お客様」
タナカ「……はい」
サトウ「いまのギルド、相当お辛いんですよね」
タナカ「……はい。昨日も毒沼を泳がされました」
サトウ「明日、ポーション飲んで動けますか」
タナカ「……はい」
サトウ「冒険者カード持って、うちにいらっしゃい。一緒にホワイトギルド、探しましょう」
タナカ「……はい、よろしくお願いします」




